傷害致死罪で起訴された場合|裁判員裁判の見通しと在留への帰結
2026/08/13
暴行を加えた結果として相手が死亡した場合、刑法205条の傷害致死罪となり、法定刑は3年以上の有期拘禁刑と定められています。殺意がなくても成立する重大犯罪であり、裁判員裁判の対象事件です。外国籍の方の事案では、通訳を介した公判の進行、遺族との示談、そして判決後の退去強制手続という三つの局面を見通した弁護が必要になります。本稿では、殺人罪との区別、量刑の考慮要素、そして在留資格への帰結を整理します。初動の対応が量刑と在留の双方に影響します。
本記事の要点
- 傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期拘禁刑であり、裁判員裁判の対象事件です。
- 殺意があれば殺人罪となるため、殺意の有無が最大の争点となることが多い類型です。
- 実刑となれば1年を超える拘禁刑として入管法24条4号リの退去強制事由に該当します。
- 傷害の罪は刑法第27章であるため、別表第一の在留資格では24条4号の2にも該当します。
傷害致死罪と殺人罪はどう区別されますか
区別の基準は殺意の有無です。殺意があれば刑法199条の殺人罪となり、なければ刑法205条の傷害致死罪となります。傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期拘禁刑で、上限は20年です。殺意の有無は、凶器の種類と用法、攻撃した部位、攻撃の回数と強度、犯行前後の言動などの客観的事情から判断されます。被告人が殺意を否認していても、頸部や胸部といった枢要部を鋭利な刃物で強く突いた事案では、殺意が認定される傾向があります。他方、素手による殴打の後に転倒して頭部を打ち死亡した事案などでは、暴行と死亡結果との因果関係が主要な争点となることもあります。いずれも裁判員に対する分かりやすい立証が求められます。
裁判員裁判ではどのような点が重視されますか
量刑の判断において重視されるのは、犯行の動機と経緯、暴行の態様の危険性、遺族の被害感情、示談の有無、反省の程度です。傷害致死罪は法定刑の下限が3年であり、酌量減軽がなければ執行猶予を付すことができません。したがって、弁護活動の中心は、量刑の幅の中でできる限り軽い刑を求めることと、酌量減軽の余地を主張することになります。外国籍の方の裁判員裁判では、通訳人を介した審理となるため、公判の時間が長くなり、被告人質問でのニュアンスの伝わり方が心証に影響します。通訳人の選任、事前の用語の統一、休廷の取り方について、弁護人が裁判所と協議しておくことが重要です。
判決後の在留資格はどうなりますか
実刑判決を受ければ、1年を超える拘禁刑として入管法24条4号リの退去強制事由に該当します。また、傷害の罪は刑法第2編第27章に属するため、別表第一の在留資格をお持ちの方は24条4号の2にも該当します。永住者や定住者などの別表第二の在留資格の方であっても、24条4号リによって退去強制の対象となる点に変わりはありません。服役後、刑務所から直接入管に身柄が引き継がれ、退去強制手続が進むのが通例です。日本で生まれ育った子がいる場合や、日本人配偶者との婚姻関係が継続している場合には、入管法50条の在留特別許可を求める余地がありますが、被害結果の重大性から容易ではなく、家族の生活実態を丹念に立証する必要があります。
初動でどのような弁護活動が必要ですか
事件直後から、死亡との因果関係、暴行の態様、殺意の有無について、客観証拠に基づく検討を始める必要があります。司法解剖の結果、現場の状況、目撃者の供述は、後に覆すことが難しいため、初期の段階から専門的な検討を要します。遺族への対応は慎重を期すべきで、謝罪の意思をどのように伝えるかは弁護人を通じて調整します。取調べでは、殺意に関する供述が判決を大きく左右するため、通訳の正確性がとりわけ重要になります。中国語には日本語の未必の故意に正確に対応する表現がなく、認識の程度が誤って記録される危険があります。取調べの録音録画の有無を確認し、弁護人と方針を定めてから供述してください。
よくあるご質問
殺すつもりがなくても重い刑になりますか
傷害致死罪の法定刑は3年以上の有期拘禁刑であり、殺意がなくても重い刑が科され得ます。もっとも、量刑では動機、暴行の態様、示談の有無が考慮されますので、事情を丁寧に主張することに意味があります。遺族への被害弁償が実現すれば、量刑上有利に考慮される余地があります。
執行猶予が付く可能性はありますか
法定刑の下限が3年であるため、酌量減軽が認められなければ執行猶予を付すことはできません。被害者側にも落ち度がある事案や、偶発性が高い事案では減軽が検討されますが、容易ではないのが実情です。偶発性や被害者側の落ち度は、具体的な証拠によって立証する必要があります。
服役後に日本に残ることはできますか
実刑であれば入管法24条4号リの退去強制事由に該当しますので、原則として退去強制の対象となります。入管法50条の在留特別許可を求める余地はありますが、被害の重大性から相当に高いハードルがあります。家族の生活実態を示す資料は、服役中から計画的に準備しておくべきです。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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