電子計算機使用詐欺罪とは|キャッシュレス決済の不正利用と在留資格
2026/08/13
他人のアカウントで電子マネーを送金する、決済システムに虚偽の情報を入力して残高を作出するといった行為は、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪にあたります。人をだます行為が介在しないため通常の詐欺罪では捕捉できない場面を対象とする規定で、法定刑は10年以下の拘禁刑です。本稿では、成立要件、通常の詐欺罪や窃盗罪との区別、そして本罪が刑法第37章に属することによる在留資格への影響を整理します。罪名の選択によって在留の結論が分かれる点にも注意が必要です。
本記事の要点
- 電子計算機使用詐欺罪は刑法246条の2に規定され、法定刑は10年以下の拘禁刑です。
- 人を欺くのではなく、電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与える点に特徴があります。
- 得られるのは財産上の利益であり、現金を取得すれば窃盗罪となる場合があります。
- 本罪は刑法第37章に属するため、別表第一の在留資格では入管法24条4号の2に該当します。
電子計算機使用詐欺罪はどのような場合に成立しますか
人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正な指令を与えて財産権の得喪または変更に係る不実の電磁的記録を作り、財産上不法の利益を得たときに成立します。刑法246条の2の法定刑は10年以下の拘禁刑です。他人名義のアカウントに不正にログインして電子マネーを自分の口座へ送金する行為、決済アプリの残高を不正な操作で増やす行為、他人のカード番号をインターネット決済に入力して商品を購入する行為などが典型です。人をだます行為が介在しないため通常の詐欺罪では処罰できない場面を補うために設けられた規定であり、キャッシュレス決済の普及に伴って適用場面が広がっています。未遂も250条により処罰されます。
通常の詐欺罪や窃盗罪とはどう区別しますか
区別の基準は、だまされる人が介在するか、そして得たものが財物か利益かです。店員に他人名義のカードを提示して商品を受け取れば、人を欺いているため刑法246条1項の詐欺罪となります。ATMで現金を引き出せば、金融機関が占有する現金という財物を取得しているため刑法235条の窃盗罪です。これに対し、機械に対して虚偽の情報を与え、残高の移転という財産上の利益を得た場合が本罪です。実務では、不正アクセス禁止法違反が併せて成立することも多く、その場合は牽連犯として処理されます。罪名の選択は在留への影響にも関わるため、事実関係を正確に把握することが重要です。
電子計算機使用詐欺と在留資格の関係は
電子計算機使用詐欺罪は刑法第2編第37章「詐欺及び恐喝の罪」に置かれているため、入管法24条4号の2の列挙対象に含まれます。したがって、別表第一の在留資格をお持ちの方が本罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予付きであっても退去強制事由に該当します。留学や技術・人文知識・国際業務の在留資格の方にとっては、判決の内容にかかわらず在留の継続が困難になる可能性があるということです。他方、同時に成立する不正アクセス禁止法違反は同号の対象外ですから、どの罪名で有罪となるかが在留の帰趨を分けることになります。永住者や定住者などの別表第二の在留資格には同号の適用がなく、24条4号リや更新時の素行要件が問題となります。
起訴前の弁護活動はどのように進めますか
被害者が個人か事業者かを早期に確定し、被害額の全額弁償を目指します。決済事業者が最終的な損失を負担している事案では、事業者との交渉になり、個人の被害者と異なり宥恕を得るまでに時間を要することがあります。そのため、勾留期間内に弁償の目処を立てられるよう、資金の確保を早期に進める必要があります。あわせて、犯行の動機、生活状況、再犯防止策を具体的に示します。別表第一の在留資格をお持ちであれば、執行猶予判決では在留が維持できない以上、不起訴処分の獲得が事実上唯一の解決策となります。初動では、アカウントの取得経路や指示者の有無について、記憶を整理したうえで弁護人と方針を決めてください。
よくあるご質問
送金しただけで実際に使っていない場合は
財産上の利益を得た時点で既遂となりますので、送金により残高が移転していれば犯罪は成立します。実際に費消していない事情や、直ちに返還した事情は、起訴猶予や量刑の判断において有利に考慮されます。返還の時期と方法は、被害回復の程度を示す資料として提出することになります。
不正アクセスと両方の罪になりますか
アカウントへの不正ログインと財産上の利益の取得は別個の行為ですので、両罪が成立し得ます。通常は牽連犯として一罪として処理されますが、在留への影響は電子計算機使用詐欺罪の側で判断される点に注意が必要です。各罪の成否を正確に把握することが、在留の見通しを立てる前提となります。
少額でも退去強制の対象になりますか
入管法24条4号の2は拘禁刑に処せられたことを要件としており、被害額の多寡を問いません。少額であれば起訴猶予や罰金相当と評価される可能性はありますが、本罪には罰金刑の定めがない点に留意してください。起訴された場合には、執行猶予の獲得と併せて在留手続の準備が必要です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
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- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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