印章偽造罪で捜査を受けたら|公印と私印の違い・在留資格への影響
2026/08/13
他人の実印を模した印鑑を作成し、あるいは市区町村の公印を偽って押印する行為は、刑法第19章の印章偽造の罪にあたります。契約書や申請書の作成過程で問題となることが多く、文書偽造罪と併せて立件されるのが通例です。外国籍の方にとっては、印章偽造の罪が入管法24条4号の2の列挙章に含まれている点が重要です。本稿では、公印と私印で異なる法定刑、不正使用の処罰、そして在留資格への具体的な影響を整理します。文書偽造と併せて処理される点にも留意が必要です。
本記事の要点
- 公務所または公務員の印章を偽造すれば、刑法165条1項により3月以上5年以下の拘禁刑となります。
- 他人の印章を偽造した場合は刑法167条1項により3年以下の拘禁刑と定められています。
- 偽造した印章を実際に使用する行為も、それぞれ同条項により処罰の対象とされています。
- 印章偽造の罪は刑法第19章にあたり、入管法24条4号の2の列挙対象に含まれています。
印章偽造罪はどのように区分されていますか
刑法第19章は、偽造の対象となる印章の性質に応じて罰則を分けています。公務所または公務員の印章もしくは署名を偽造した場合は刑法165条1項により3月以上5年以下の拘禁刑、他人の印章もしくは署名を偽造した場合は刑法167条1項により3年以下の拘禁刑です。公務所の記号を偽造した場合には刑法166条が適用されます。いずれも、偽造の行為だけでなく、偽造した印章を不正に使用する行為や、真正な印章を不正に使用する行為も処罰の対象とされています。実務では、偽造した印鑑を用いて契約書を作成すれば私文書偽造罪が、役所の証明書に偽の公印を押せば公文書偽造罪が併せて成立し、通常は文書偽造罪の側でまとめて処理されます。
他人の印鑑を無断で使った場合も罪になりますか
本人の意思に反して真正な印章を使用すれば、不正使用として処罰の対象となり得ます。印章偽造の罪は、印影の同一性に対する社会の信頼を保護するものであるため、印鑑そのものを作らなくても、権限なく押印すれば処罰され得るのです。同居する家族の実印を無断で持ち出して契約書に押した場合、印章の不正使用に加え、私文書偽造罪も問題となります。名義人の承諾があったかどうかが決定的な争点となりますが、口頭の了解にとどまる事案では立証が難しく、日常的に印鑑の管理を任されていたという事情や、過去の同種の取扱いの有無が判断材料になります。押印の経緯を裏づける連絡記録は保全してください。
印章偽造は在留資格にどう響きますか
入管法24条4号の2は、刑法第16章から第19章までを列挙対象としており、印章偽造の罪が置かれた第19章はこれに含まれます。したがって、別表第一の在留資格をお持ちの方が印章偽造罪や不正使用罪で拘禁刑に処せられた場合、執行猶予付きであっても退去強制事由に該当します。実務上は文書偽造罪と併せて起訴されることが多く、いずれにしても同号の対象となる点は変わりません。永住者や日本人の配偶者等の別表第二の在留資格には同号の適用がありませんが、1年を超える実刑であれば24条4号リが問題となり、更新審査では素行要件で不利に扱われます。就労資格の方は、判決に伴う解雇によって在留資格該当性を失う危険もあります。
不起訴を目指すための弁護活動はどうなりますか
名義人および文書の提出先に生じた損害の回復と、名義人の宥恕の獲得が中心となります。印章偽造は文書偽造の準備段階として行われることが多いため、実際に文書が使用されたか、それによって誰にどのような不利益が生じたかによって、処分の重さが大きく変わります。損害が発生していない段階で発覚した事案では、起訴猶予となる余地があります。初動としては、印鑑の作成を依頼した業者とのやり取り、名義人との事前の相談の有無を整理し、承諾に関する主張の裏づけを確保することが重要です。取調べでは、実印、認印、公印といった日本特有の印章制度に関する用語が通訳で正確に伝わらないことがあるため、図や書面を用いた確認をお勧めします。
よくあるご質問
認印を勝手に作った場合も処罰されますか
他人の印章を偽造したものとして刑法167条1項の対象となり得ます。実印か認印かは印章の性質としては区別されず、処罰の可否を直ちに左右しません。もっとも、実際に文書に使用したかどうかは量刑に影響します。作成を依頼した業者の記録が残っていれば、経緯を裏づける資料となります。
文書偽造とは別に処罰されるのですか
理論上は別個の犯罪ですが、印章を偽造して文書を作成した場合には、通常は文書偽造罪に吸収されるかたちで一体的に処理されます。いずれの罪も入管法24条4号の2の列挙章に含まれる点で結論は変わりません。処分の見通しは、実際に文書が使用されたかどうかによって大きく変わります。
家族の印鑑を使った場合も在留に影響しますか
有罪となり拘禁刑に処せられれば、別表第一の在留資格では執行猶予でも退去強制事由に該当します。家族間の事案では承諾の有無が争点になりますので、事実関係を丁寧に主張し、不起訴を目指すことが重要です。家族間の事案では、名義人からの陳述書が有力な資料となることがあります。
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舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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