在留カードの偽造・行使で摘発されたら|入管法の罰則と退去強制
2026/08/13
偽造された在留カードを購入して所持し、勤務先や携帯電話の契約時に提示する行為は、入管法73条の3以下の罰則の対象となり、事案によっては刑法の公文書偽造・同行使としても評価されます。在留期限が切れた後も日本で働くために偽造カードを用いる例が見られますが、その場合は不法残留や資格外活動の問題も同時に生じます。本稿では、在留カードをめぐる罰則の構造、不法残留との関係、そして退去強制と上陸拒否期間の帰結を整理します。
本記事の要点
- 在留カードの偽造・変造は入管法73条の3により1年以上10年以下の拘禁刑と重く処罰されます。
- 偽造在留カードの所持や提供も、入管法上の独立の犯罪として処罰の対象とされています。
- 在留期限を過ぎている場合は、入管法24条2号の2または4号ロの不法残留が別途問題となります。
- 退去強制を受けると入管法5条1項9号により原則5年間、2回目以降は10年間、上陸が拒否されます。
在留カードの偽造にはどのような罰則がありますか
入管法73条の3は、行使の目的で在留カードを偽造し、または変造した者を1年以上10年以下の拘禁刑に処すると定めており、法定刑の下限が1年である点で極めて重い罰則です。偽造在留カードを行使する行為、行使の目的で所持する行為、他人に提供する行為も、それぞれ処罰の対象とされています。在留カードは出入国在留管理庁が交付する公的な身分証明書であるため、その真正に対する信頼を害する行為が厳しく評価されるのです。加えて、事案によっては刑法155条の公文書偽造罪や158条の偽造公文書行使罪としての評価も問題となり得ます。購入して所持していただけであっても、行使の目的が認められれば処罰の対象となるため、単に持っていただけという弁解は通りにくい構造になっています。
偽造カードを勤務先に提示した場合の責任は
偽造在留カードを就労の際に提示すれば、行使にあたるとともに、実際には就労資格がない状態で働いていたことが明らかになります。在留期限が経過していれば入管法24条2号の2または4号ロの不法残留に該当し、資格に応じた活動の範囲を超えて働いていれば同法19条違反として24条4号イの資格外活動の問題も生じます。雇用主の側も、事情を知りながら雇用していれば不法就労助長罪に問われる可能性があります。摘発の端緒は、警察の職務質問、雇用主による在留カード読取アプリでの確認、同僚からの通報など多岐にわたります。カードの番号や有効期限は出入国在留管理庁のシステムで即時に照会されるため、偽造の事実は短時間で判明します。
刑事処分の後、入管手続はどう進みますか
刑事事件の終了後、身柄は入管に引き継がれ、違反調査、違反審査、口頭審理、異議の申出という順に退去強制手続が進みます。在留カード偽造に関する入管法上の罪により刑に処せられた場合は、入管法24条4号ヘの入管法関係の罪による退去強制事由に該当し得ますし、不法残留があれば24条2号の2または4号ロにも該当します。最終段階では入管法50条の在留特別許可の可否が判断されますが、偽造カードの使用は在留管理秩序を正面から害する行為として厳しく評価される傾向にあり、日本人配偶者や日本で育った子の存在など、強い人道的事情の主張立証が不可欠です。収容が長期化する見込みがある場合は、入管法44条の2以下の監理措置の適用を求めることを検討します。
初動でどう対応すべきですか
逮捕直後から、偽造カードの入手経路と使用目的について詳細な取調べが行われます。ここで重要なのは、購入した相手方や仲介者に関する記憶を整理しておくことと、自らの認識、すなわち偽造であることを知っていたのかを正確に述べることです。真正なカードだと信じていた場合には故意が問題となりますが、購入価格や入手方法が不自然であれば認識が推認されます。また、この類型では、刑事処分の見通しと同時に、退去強制手続を見据えた準備を並行して進める必要があります。家族関係、在留歴、稼働状況、納税実績などの資料は、後の在留特別許可の判断で重要な意味を持ちます。取調べでは、日本語の在留資格用語が中国語に正確に訳されているかを確認してください。
よくあるご質問
偽造カードを持っていただけでも処罰されますか
行使の目的での所持は入管法上の処罰対象とされています。単に保管していたにすぎないという主張は、入手の経緯や使用の予定に照らして判断されます。購入代金の支払記録ややり取りの内容が、目的の認定に用いられます。所持していた枚数や保管の態様も、目的の認定において考慮される事情です。
知らずに偽造カードを渡されていた場合はどうなりますか
偽造であるとの認識がなければ故意を欠き、犯罪は成立しません。もっとも、入手先や価格が不自然であれば認識が推認されます。なお、在留の適法性自体は別問題であり、在留資格がない状態であれば退去強制手続の対象となります。在留資格の有無は、刑事処分の結果とは別に判断される点に留意してください。
退去強制された場合、いつ日本に戻れますか
入管法5条1項9号により、退去強制を受けた方は原則として5年間、2回目以降は10年間、上陸を拒否されます。出国命令により出国した場合は1年です。薬物事犯など一部の事由では期間の定めなく上陸が拒否されます。上陸拒否期間の起算点は退去の日ですので、正確な日付の確認が必要です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
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- 不法就労助長罪に問われて退去強制の危機にある依頼者について、「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた入管実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を係属中の事例。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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