公文書偽造・偽造公文書行使の刑事責任|外国人の在留資格への影響
2026/08/13
住民票、運転免許証、卒業証明書、納税証明書といった官公署が作成する文書を偽って作り、あるいは改ざんして提出する行為は、刑法155条の公文書偽造罪や158条の偽造公文書行使罪にあたります。有印公文書偽造の法定刑は1年以上10年以下の拘禁刑と重く、私文書偽造よりも大幅に加重されています。本稿では、公文書偽造罪の構造、無印文書との違い、そして別表第一の在留資格における退去強制事由との関係を整理します。行政手続と刑事手続が同時に進む点にも注意が必要です。
本記事の要点
- 有印公文書偽造罪は刑法155条1項により、1年以上10年以下の拘禁刑と重く定められています。
- 印章や署名のない公文書の偽造は同条3項で3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金です。
- 偽造した公文書を提出すれば、刑法158条の偽造公文書行使罪が別に成立します。
- 文書偽造の罪は刑法第17章であり、別表第一の在留資格では入管法24条4号の2に該当します。
公文書偽造罪はどのような場合に重く処罰されますか
官公署または公務員の印章もしくは署名を使用して公文書を偽造した場合、刑法155条1項により1年以上10年以下の拘禁刑に処せられます。下限が1年と定められているため、酌量減軽がなければ執行猶予を付すことができない構造です。これに対し、印章や署名のない公文書を偽造した場合は同条3項が適用され、3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金となります。公文書が重く扱われるのは、その記載内容に対する社会の信頼が私文書よりも厚いためです。住民票や印鑑登録証明書の記載を改ざんする行為は変造として同条2項で処理され、有印文書と同様に重く評価されます。運転免許証の偽造や改ざんも、身分証明として広く用いられる性質から厳しい処分が予想されます。
偽造書類を役所や会社に提出した場合はどうなりますか
刑法158条の偽造公文書行使罪が成立し、法定刑は偽造罪と同じ刑が科されます。偽造と行使が連続する場合は牽連犯として処理されますが、行使によって金銭や地位を得ていれば詐欺罪が併せて成立することもあります。在留資格の申請や更新の際に偽造した書類を入管に提出した場合には、刑事責任のほかに、偽りその他不正の手段により許可を受けたものとして、入管法22条の4に基づく在留資格の取消しが検討されます。取消しに際しては意見聴取の手続が設けられていますので、経緯や関与の程度を主張する機会があります。行政書士や仲介者に手続を任せていた場合でも、提出者本人の責任が問われる点に注意が必要です。
在留資格への影響はどのようなものですか
別表第一の在留資格をお持ちの方は、公文書偽造罪や偽造公文書行使罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予付きであっても入管法24条4号の2の退去強制事由に該当します。文書偽造の罪は刑法第2編第17章に属し、同号の列挙対象に含まれているためです。とりわけ有印公文書偽造罪は法定刑の下限が1年であることから実刑となる可能性もあり、その場合には24条4号リにも該当します。永住者や定住者などの別表第二の在留資格には同号の適用がありませんが、24条4号リや在留資格取消し、更新審査での素行要件が問題となります。退去強制されると、入管法5条1項9号により、原則として退去の日から5年間、2回目以降は10年間、上陸が拒否されます。
不起訴に向けてどのような弁護活動が考えられますか
公文書偽造は被害者が特定の個人ではなく社会的法益に対する罪であるため、示談による解決が難しい類型です。そのため、弁護活動の中心は、関与の程度と経緯の解明、そして再犯防止の体制づくりとなります。第三者に依頼された結果として名義を貸したにすぎない場合や、偽造の事実を認識していなかった可能性がある場合には、故意の有無を丁寧に検討します。あわせて、贖罪寄付、家族による監督体制、就労先の理解などを示し、起訴猶予を求めます。初動では、偽造を依頼した相手方とのやり取りを削除しないことが重要です。自らの認識を裏づける資料になり得るためであり、削除すれば証拠隠滅と評価される危険もあります。
よくあるご質問
偽造された書類と知らずに提出した場合も罪になりますか
行使罪は偽造であることの認識を必要としますので、真正なものと信じていた場合には故意がなく罪は成立しません。もっとも、依頼した経緯や費用の支払方法などから認識が推認されることがあり、客観資料による説明が重要になります。依頼の経緯を示すやり取りの記録は、故意を否定する重要な資料となり得ます。
有印公文書偽造で執行猶予は付きますか
法定刑の下限が1年であるため、そのままでは執行猶予を付せません。酌量減軽が認められれば執行猶予の余地が生じます。もっとも別表第一の在留資格では、執行猶予でも入管法24条4号の2に該当する点に留意が必要です。酌量減軽の主張には、関与の程度と再犯防止の体制の具体的な立証が求められます。
在留資格取消しの通知が来たらどうすべきですか
入管法22条の4の手続では意見聴取が行われますので、期日に出頭して事実関係と事情を主張してください。取消しの範囲や出国準備期間の指定にも違いが生じ得ますので、通知を受けた段階で速やかに弁護士に相談することをお勧めします。出国準備期間の指定を受ける場合もありますので、期限の管理が重要になります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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