背任罪で捜査を受けたら|任務違背の判断基準と在留資格への影響
2026/08/13
他人のために事務を処理する者が、その任務に背いて本人に財産上の損害を与える行為は、刑法247条の背任罪にあたります。会社の役員や融資担当者、共同事業の資金管理者などが対象となりやすく、経営判断との境界が争われる点に特徴があります。本稿では、背任罪の成立要件と特別背任罪との違い、横領罪との区別、そして背任罪が刑法第37章に属することから在留資格に及ぼす効果を、条文の構造に沿って説明します。罪名の選択が在留の帰趨を左右する点に、この類型の難しさがあります。
本記事の要点
- 背任罪は刑法247条により、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金と定められています。
- 成立には、任務違背行為、図利加害目的、本人の財産上の損害という要件がそろう必要があります。
- 背任罪は刑法第37章に属するため、別表第一の在留資格では入管法24条4号の2の対象となります。
- 会社の取締役等による場合は会社法960条の特別背任罪となり、10年以下の拘禁刑と重くなります。
背任罪はどのような要件で成立しますか
背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときに成立します。法定刑は5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。要件のうち実務上最も争われるのは、任務違背行為の有無と図利加害目的です。回収見込みのない相手に十分な担保を取らず融資した、取引先に不当に有利な条件で契約した、といった事案では、それが許容される経営判断の範囲内かどうかが問題となります。損害についても、現実の財産の減少だけでなく、経済的にみて財産的価値が減少したと評価できれば足りると解されています。本人の承諾があった場合には任務違背が否定される余地があります。
横領罪とはどう区別されますか
区別の基準は、財物に対する占有が行為者にあり、それを自己のものとして処分したかどうかです。自己が占有する他人の財物を領得すれば横領罪、財物の占有はないが権限を濫用して本人に損害を与えれば背任罪となります。両者が競合するようにみえる事案では、権限の範囲内で行われた処分であるかどうかが手がかりとなります。この区別は外国籍の方にとって単なる理論上の問題ではありません。横領の罪が置かれた刑法第38章は入管法24条4号の2の列挙対象外である一方、背任罪が属する第37章は列挙されているため、同じ経済事犯でも罪名によって在留への効果が正反対になり得ます。捜査段階から罪名の当てはめを注視する意義はここにあります。
背任罪の有罪判決は在留にどう影響しますか
別表第一の在留資格をお持ちの方は、背任罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予付きであっても入管法24条4号の2の退去強制事由に該当します。背任罪は刑法第2編第37章「詐欺及び恐喝の罪」の章に置かれているためです。経営・管理や技術・人文知識・国際業務の在留資格で会社の運営に関与している方は、この点を十分に理解しておく必要があります。他方、罰金刑にとどまれば同号には該当しません。永住者や定住者などの別表第二の在留資格には同号の適用がなく、1年を超える実刑を対象とする24条4号リが問題となります。退去強制手続に進んだ場合は、入管法50条の在留特別許可の申立てを行うとともに、収容を回避するために44条の2以下の監理措置を求めることになります。
不起訴・罰金を目指す弁護方針はどうなりますか
背任罪は罰金刑が選択できるため、別表第一の在留資格の方にとっては、罰金にとどめること自体が在留維持の現実的な目標になり得ます。もっとも第一の目標は不起訴であり、そのためには任務違背性を否定する事実、すなわち意思決定手続の適正さ、社内での了承、当時入手可能であった情報に基づく判断の合理性を、契約書、議事録、往復のメッセージなどで具体的に立証することが必要です。損害額の算定に争いがある場合には、専門家の意見も活用します。初動では、会社の内部資料を無断で持ち出すと別罪に問われかねないため、証拠の収集方法を弁護人と確認してください。取調べでは、経営判断の背景事情が通訳を通じて正確に伝わるよう、資料に基づいた説明を心がけることが重要です。
よくあるご質問
結果的に会社に損失が出ただけでも背任になりますか
損失の発生だけでは足りず、任務に背く行為と図利加害目的が必要です。合理的な情報に基づく経営判断であれば、結果的に損失が生じても背任罪は成立しないと解されています。判断過程を裏づける資料の保存が重要になります。取締役会議事録や稟議書は、判断の合理性を裏づける中核的な資料となります。
背任と横領で在留への影響は違いますか
異なります。背任罪は刑法第37章に属し入管法24条4号の2の対象ですが、横領の罪は第38章であり列挙されていません。別表第一の在留資格の方にとって、どちらの罪名で処理されるかは在留の可否に直結します。捜査段階から罪名の当てはめを注視し、必要に応じて意見書を提出する意義があります。
罰金判決なら退去強制にはなりませんか
入管法24条4号の2は拘禁刑に処せられた場合を対象としているため、罰金であれば同号には該当しません。ただし、在留期間更新の審査では素行要件で不利に考慮されますので、更新時の疎明資料を整えておく必要があります。更新申請では、会社の体制の是正や再発防止策を具体的に説明することが有効です。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------