送還忌避と送還停止効の例外|難民認定申請3回目以降と退去命令の実務
2026/08/13
令和5年改正入管法により、難民認定申請中は送還が停止されるという原則(入管法61条の2の9第4項)に例外が設けられ、3回目以降の申請者などは申請中であっても送還され得ることになりました。長期の収容か送還かという二者択一を避けるために監理措置(同法44条の2以下)も新設されています。本稿では、どのような場合に送還停止効が外れるのか、退去を拒み続けた場合にどのような不利益が生じるのか、そして送還を争う余地がどこに残るのかを、条文に即して整理します。
本記事の要点
- 難民認定申請中の送還停止効は入管法61条の2の9第4項により例外が定められました。
- 3回目以降の申請で相当の理由がある資料を提出しない場合などは、申請中でも送還され得ます。
- 退去を拒み続けると、収容の長期化のほか、罰則を伴う退去の命令の対象となる場合があります。
- 送還を争う手段としては、退去強制令書発付処分の取消訴訟と執行停止の申立てが基本になります。
送還停止効の例外とは何ですか
送還停止効の例外とは、難民認定申請中は送還してはならないという原則が適用されない場合をいい、入管法61条の2の9第4項に定められています。従来は申請の回数を問わず申請中の送還が一律に停止されていましたが、令和5年改正により、3回目以降の申請者であって難民である旨を示す相当の理由がある資料を提出しない者、3年以上の拘禁刑に処せられた者、テロリスト等に該当する者については、申請中であっても送還が可能とされました。したがって、2回目までの申請の段階で主張と資料を出し切ることが決定的に重要です。回数を重ねるほど手続的な保護は薄くなります。
退去を拒み続けるとどうなりますか
退去を拒み続けると、収容が長期化するか、あるいは罰則を伴う退去の命令の対象となる可能性があります。令和5年改正では、送還を忌避する者に対して退去を命じ、これに従わない場合に刑罰を科す仕組みが設けられました。刑罰を受ければ、それ自体が新たな不利益となるうえ、将来の在留特別許可や上陸特別許可の判断における素行の評価にも影響します。帰国を前提としない場合であっても、手続の中で主張を尽くす方法と、事実上退去を拒む方法とは全く異なります。前者は法的な救済の可能性を残しますが、後者は選択肢を狭めます。
収容を避ける監理措置はどのような制度ですか
監理措置は、収容に代えて監理人の監督のもとで社会内での生活を認める制度で、入管法44条の2以下に定められています。退去強制手続の各段階で、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、生活の基盤、監理人の適格性などを考慮して判断されます。監理人には親族、雇用主、支援者などが想定され、届出義務が課されます。申立てにあたっては、住居の安定、生計の見通し、家族の在留状況、通院の必要性などを具体的に示すことが重要です。従来の仮放免(同法54条)とは要件も効果も異なりますので、どちらを求めるかは事案に応じて選択します。
送還を法的に争う方法はありますか
送還を法的に争う中心的な手段は、退去強制令書発付処分の取消訴訟と、これに伴う執行停止の申立てです。訴訟提起だけでは送還は止まりませんので、執行停止を同時に申し立てる必要があります。難民不認定処分に対しては審査請求と取消訴訟があり、補完的保護対象者の認定を求める道もあります。なお、退去強制事由の該当性判断において本人の故意や過失をどこまで要するかは入管実務上争いのあるところであり、当事務所も責任主義の射程を問う訴訟を係属させています。見通しを断定することはできませんが、争う余地があること自体は知っておいてください。
よくあるご質問
難民認定申請を何回もすれば送還は止まりますか
止まりません。入管法61条の2の9第4項により、3回目以降の申請では、難民である旨を示す相当の理由がある資料を提出しない限り送還停止効が及びません。回数を重ねる戦略は現行法では機能しませんので、初回と2回目に資料を尽くすことが重要です。
送還の直前でも弁護士に相談する意味はありますか
あります。退去強制令書発付処分の取消訴訟と執行停止の申立ては直前でも可能です。ただし準備には時間が必要ですので、航空券の手配を告げられた時点ではなく、退去強制令書が発付された時点で相談してください。時間の余裕が選択肢の幅を決めます。
監理措置と仮放免はどちらを求めるべきですか
事案によります。監理措置(入管法44条の2以下)は監理人の確保が前提で、就労の可否など条件が付されます。仮放免(同法54条)は健康上の事情などで用いられます。住居、生計、監督者の有無を整理したうえで、どちらが現実的かを検討してください。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------