略式命令の罰金に同意してよいか|外国人が正式裁判請求を検討すべき場面
2026/08/13
検察官から、罰金で終わるので略式手続に同意してほしいと説明されることがあります。身柄が解放され、公開の法廷に立たずに済むため、その場で同意したくなる場面です。しかし略式命令は罰金前科が残る有罪の裁判であり、外国人の方にとっては在留資格の審査に影響し得ます。とりわけ薬物事犯では、罰金であっても有罪判決である以上、退去強制事由に該当し得る点に注意が必要です。同意は書面によるものであり、いったん略式命令が出た後は14日以内に正式裁判を請求しなければ確定します。ここでは、同意の前に確認しておくべき事項を整理します。
本記事の要点
- 略式手続は100万円以下の罰金または科料に限られ、書面審理で行われる簡易な手続です。
- 同意は書面で行い、同意しない権利があります。同意しなければ通常の公判手続となります。
- 略式命令の告知を受けた日から14日以内であれば、正式裁判を請求できます。
- 罰金でも有罪判決ですので、薬物事犯では入管法24条4号チの適用を検討する必要があります。
略式手続とはどのような手続ですか
略式手続は、簡易裁判所が公判を開かずに書面審理で罰金または科料を科す手続です。刑事訴訟法461条以下に定めがあり、対象となるのは100万円以下の罰金または科料に相当する事件に限られます。検察官が略式命令を請求するには、あらかじめ被疑者に対して手続の内容を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げたうえで、異議がないことを書面で確認しなければなりません。同意すると、多くの場合その日のうちに罰金額が告知され、納付すれば身柄は解放されます。公開の法廷に立たずに済み、期間も短いため、被疑者にとって負担が軽い手続と説明されることが一般的です。もっとも、有罪の裁判であることに変わりはありません。
同意する前に確認すべきことは何ですか
確認すべきは、罪名と適用法条、そして事実関係に争いがないかどうかです。略式手続は書面審理ですので、事実関係を争う場面には適しません。取調べで押されて認めたが実際には身に覚えのない部分がある、共犯者との関係で自分の役割が過大に評価されている、といった事情がある場合には、同意を急ぐべきではありません。また、そもそも不起訴の余地がないのかを検討する必要があります。被害者との示談が成立していない段階で略式に同意すると、示談による起訴猶予の可能性を自ら閉ざすことになりかねません。同意しないことによる不利益として身柄拘束が続く可能性はありますが、その点も含めて弁護人と比較検討すべきです。
罰金は在留資格にどう影響しますか
罪名によって結論が大きく異なります。入管法24条4号の2は拘禁刑に処せられたことを要件としますので、窃盗や傷害で罰金にとどまった場合、同号には該当しません。同条4号リも1年を超える拘禁刑が要件です。これに対し、同条4号チは薬物に関する法令に違反して有罪の判決を受けた者を対象としており、罰金であっても該当し得ます。したがって、大麻や覚醒剤に関する事案で罰金の略式命令に同意することは、在留の観点からは重い意味を持ちます。加えて、罰金前科は在留期間更新や在留資格変更の審査における素行の評価に影響し、永住許可の審査でも考慮されます。処分の選択は刑事と入管の両面から検討してください。
略式命令に納得できないときはどうしますか
略式命令の告知を受けた日から14日以内に、書面で正式裁判を請求できます。刑事訴訟法465条が定める手続であり、請求すれば通常の公判手続に移行し、証拠調べを経て判決が言い渡されます。もっとも、正式裁判では罰金より重い刑が言い渡される可能性が理論上あり得ますので、請求の当否は慎重な検討を要します。実務上は、無罪を主張する場合、罪名や事実に重大な誤りがある場合、あるいは在留への影響が決定的で争う実益がある場合に検討されます。14日の期間は短く、通訳を介した理解に時間を要することもありますので、略式命令を受け取ったら直ちに弁護人に連絡してください。
よくあるご質問
略式手続に同意しないとどうなりますか
検察官は略式命令を請求できず、通常の公判手続または不起訴のいずれかとなります。公判となれば期間は長くなり、身柄拘束が続く可能性もあります。他方で、その間に示談を進めて不起訴や執行猶予を目指す余地も生じますので、事案ごとの比較検討が必要です。
罰金を払えば在留資格に影響はありませんか
罪名によります。窃盗や傷害で罰金にとどまれば入管法24条4号の2には該当しませんが、薬物事犯は同条4号チにより罰金でも該当し得ます。また、罰金前科は在留期間更新の審査で素行の評価に影響しますので、影響がないとは言えません。薬物事犯では、罰金であっても退去強制事由となり得る点に、特に注意が必要です。
罰金を払えないときはどうなりますか
納付できない場合は労役場留置となり、一定の日数、労役場に留置されます。分割納付や納付期限の猶予について検察庁に相談できる場合もありますので、支払が困難な事情があるときは早めに申し出てください。労役場留置となれば、その間は入管手続に充てる時間も失われることになります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
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