釈放された当日にすべきこと|外国人の刑事事件で在留資格を守る初動の確認事項
2026/08/13
警察署から釈放されると、事件が終わったと感じられる方が少なくありません。しかし釈放は身柄の拘束が解かれたことを意味するにとどまり、検察官の処分が決まったことを意味しません。処分保留のまま在宅で捜査が続く例は多く、その間に取調べの呼出しが続き、最終的に起訴されることもあります。さらに、外国人の方の場合には、刑事処分の行方と並行して在留資格への影響が進行します。釈放当日にどの書面を受け取り、在留カードと旅券の所在をどう確認し、勤務先や学校にどう説明するかによって、その後の見通しが変わります。ここでは、釈放されたその日に確認しておきたい事項を、刑事手続と入管手続の双方から整理します。
本記事の要点
- 釈放は処分の決定ではなく、処分保留のまま在宅捜査が続いている場合が多い点をまず確認します。
- 釈放時に交付される書面と押収品の目録、在留カードおよび旅券の返還状況をその日のうちに確かめます。
- 刑事事件の存在は在留期間更新や在留資格変更の審査に影響するため、在留期限を釈放当日に把握します。
- 最終目標は不起訴処分の獲得であり、そのための供述方針と示談の方針をこの段階で固めます。
釈放されたのに事件が終わっていないのはなぜですか
釈放は身体拘束の終了にすぎず、刑事処分の終了とは別の問題です。逮捕後の勾留は原則10日間、延長を含めて最大20日間ですが、この期間内に検察官が終局処分を決められない場合、処分を保留したまま釈放し、在宅のまま捜査を続けることがあります。勾留請求が却下された場合や勾留の取消しがあった場合も同様で、被疑者としての地位はそのまま残ります。したがって、釈放後も取調べの呼出しがあり、資料の提出を求められ、数か月後に起訴の連絡が届くこともあります。ご本人が処分の内容を誤解したまま供述を続けると、後から訂正が難しい調書が積み上がります。釈放時に検察庁から交付された書面や口頭の説明の内容を、その日のうちに正確に記録しておいてください。
釈放された日に受け取る書類と持ち物で確認すべき点は何ですか
確認すべきものは、身分関係書類と押収品の目録、そして次回の呼出しに関する連絡先です。まず在留カードと旅券が返還されているかを確かめます。押収されたままの場合、更新申請や再入国の場面で支障が生じますので、還付の見込みを弁護人を通じて早期に確認します。次に押収品目録交付書を確認し、携帯電話や預金通帳など生活に不可欠なものについては仮還付の可否を検討します。さらに、担当の警察官と検察官の所属、事件の受理番号を控えておくと、その後の連絡が円滑になります。書面の日本語が読み取れないまま署名した記憶がある場合は、その事実自体が重要ですので、記憶が新しいうちに書き留めておくことをお勧めします。
入管との関係で釈放当日に確認すべきことは何ですか
在留期限と届出義務の履行状況を、その日のうちに確認してください。身柄拘束中に在留期間が経過していた場合、入管法24条2号の2・4号ロの不法残留として退去強制事由に該当し得ます。また、住居地の変更届出を怠ったままであれば入管法22条の4による在留資格取消しの検討対象となり得ます。就労資格の方が資格外の活動をしていた事案では入管法19条の問題が併存します。なお、入管法62条2項により、公務員が退去強制事由に該当すると思われる方を職務上知ったときは通報することとされていますので、刑事事件の存在が入管に把握される可能性を前提に方針を立てる必要があります。刑事処分が確定していない段階でも、在留期間の満了日は待ってくれません。
不起訴処分を目指すために当日から始めることは何ですか
供述方針の統一と、被害者対応の準備を同時に始めます。在宅捜査に移行した事件では、追加の取調べで供述が変遷することが最も避けたい事態です。黙秘権の行使を含め、どの範囲で説明し、どの点は弁護人を通じて書面で述べるかを決めておきます。通訳を介した取調べでは、微妙な言い回しが調書に反映されにくいため、通訳人の能力に疑問を感じた場合は、その旨を早期に申し入れておくことが重要です。被害者がいる類型では、示談の申入れが早いほど成立の可能性が高まります。別表第一の在留資格の方が窃盗や傷害等で拘禁刑に処せられると、執行猶予が付いても入管法24条4号の2により退去強制事由となり得ますので、有罪判決を避けること自体に在留上の意味があります。
よくあるご質問
釈放されたら在留カードはすぐに返してもらえますか
多くの事案では釈放時に返還されますが、証拠として押収されたままとなる例もあります。返還されない場合は、弁護人を通じて還付または仮還付を求めます。在留カードは常時携帯義務の対象ですので、手元にない事情を説明できるよう、押収品目録交付書を保管しておいてください。
釈放後に会社へ報告しなければいけませんか
法律上一律の報告義務があるわけではありませんが、就労資格の方は、業務内容の変更や退職が在留資格該当性に直結します。報告の要否と伝え方は、雇用契約の内容と処分の見込みを踏まえて判断すべき事柄ですので、弁護人と相談したうえで対応することをお勧めします。
釈放されたのに再び逮捕されることはありますか
別の被疑事実については、改めて逮捕・勾留がなされることがあります。余罪の存在が想定される事案では、釈放後の行動や関係者との連絡が罪証隠滅を疑わせないよう注意が必要です。想定される余罪の範囲を弁護人に伝え、対応方針を共有しておいてください。また、再逮捕の可能性がある場合には、身の回りの整理と家族への連絡を先に済ませておくと、その後の対応が落ち着いて進みます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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