勾留中の在留期間更新申請|代理人・取次者による申請と釈放後の対応
2026/08/13
前の記事で述べたとおり、身柄拘束中に在留期間の満了日が到来することは、刑事事件と入管手続が交差する最も難しい場面の一つです。ここでは、実際にどのように申請を試みるのか、誰が窓口に行くのか、どのような資料を準備するのか、そして申請が受理されなかった場合にどう備えるのかという、実務の具体に踏み込みます。刑事の弁護人が入管手続に不慣れであると、この場面で手が止まりがちです。逆に、期限を意識した動きができれば、釈放後の立て直しが格段に容易になります。この記事では、申請の担い手、準備すべき資料、審査で問われる点、釈放後の手順を順に説明します。
本記事の要点
- 在留期間更新の申請は本人出頭が原則ですが、代理人や承認を受けた取次者による申請が認められる場合があります。
- 刑事事件が係属している事実は審査で考慮されますので、事案の説明資料を添えることが実務的です。
- 在留期間の満了後も申請中である場合の特例期間の扱いは、申請が受理されていることが前提となります。
- 受理されなかった場合に備え、釈放後直ちに出頭できる準備を並行して整えてください。
誰が申請の窓口に行けますか
原則は本人の出頭ですが、例外的な取扱いがあります。入管法施行規則は、申請人が16歳未満である場合や疾病その他の事由により自ら出頭することができない場合に、一定の親族等が代わって申請できる旨を定めており、また、地方出入国在留管理局長の承認を受けた取次者による申請も認められています。身柄拘束中の方について、これらの規定をどのように適用するかは、事案と管轄の運用により異なりますので、弁護人が事前に窓口へ相談し、必要書類と可否を確認する手順を踏むことになります。実務では、勾留の事実を示す資料、たとえば勾留状の写しや弁護人の報告書を添えて事情を説明します。門前払いを避けるためにも、事前相談を省略しないことが肝要です。
どのような資料を準備しますか
準備の中心は、在留資格該当性と生活基盤の継続を示す資料です。就労資格であれば、勤務先が雇用を継続する意向を示す書面、在職証明、給与の支払状況が分かる資料が重要になります。身分系の在留資格であれば、家族の同居状況、生計の維持、子どもの就学状況を示す資料が中心です。あわせて、身柄拘束の事実と刑事事件の見通しについて、弁護人が作成する報告書を添えることが考えられます。処分が確定していない段階では、事実関係を誇張せず、確定していないことを確定していないと明記することが重要です。不確かな見通しを断定的に述べれば、後に事実と異なる結果となったときに信用を損ないます。
審査ではどのような点が問われますか
問われるのは、在留資格に該当する活動を継続できるか、そして在留を認めることが相当かという二点です。就労資格であれば、身柄拘束により職務に従事していない期間があること、退職に至っていないかが確認されます。素行についても、刑事事件が係属している事実が考慮されます。ここで重要なのは、処分が未確定である場合と、既に有罪判決を受けた場合とを区別して説明することです。別表第一の在留資格の方は、窃盗や傷害などで拘禁刑に処せられれば、執行猶予であっても入管法24条4号の2に該当し得ますので、刑事の帰趨が定まっていない段階での説明は、事実に即して慎重に行う必要があります。審査に時間を要する場合や、在留期間が短く許可される場合もあります。
受理されなかった場合はどうしますか
釈放後の速やかな出頭に切り替えます。申請が受理されないまま在留期間が満了した場合、形式的には在留の根拠を欠く状態となりますが、身柄拘束により出頭できなかった経緯は、その後の手続で説明すべき重要な事実です。釈放されたその日のうちに、あるいは翌開庁日に地方出入国在留管理局へ出頭し、経緯と今後の予定を説明してください。事案によっては、入管法50条による在留特別許可を求める枠組みで検討されることになり、その判断では在留を希望する理由、家族関係、素行、在留の期間などが考慮されます。刑事事件が不起訴となっていれば、不起訴処分告知書を取得して提出することが有益です。準備は身柄拘束中から始めてください。
よくあるご質問
申請中に在留期間が満了したらどうなりますか
適法に申請が受理されている場合には、審査の結果が出るまでの一定期間について、引き続き在留できる特例の扱いがあります。ただし、これは申請が受理されていることが前提ですので、受理の有無を必ず確認してください。特例の期間中も、在留カードの記載や指示された条件を守ることが前提となります。
弁護士が入管の窓口に行けますか
弁護士は、所定の届出を行うことにより取次者として申請の取次ぎを行うことができます。刑事と入管を一体で扱える弁護人であれば、勾留の状況を説明しながら手続を進めることができます。取次ぎの可否は事案によりますので、事前に窓口へ相談したうえで判断してください。
会社が退職扱いにしてしまいました
就労資格の場合、在留資格該当性に影響します。復職の可否、転職先の確保、資格変更の要否を検討する必要がありますので、早い段階で弁護人に伝え、勤務先との調整を進めてください。退職の経緯を示す書面があれば、事情を説明する資料として活用できる場合があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 不法就労助長罪に問われて退去強制の危機にある依頼者について、「退去強制事由には故意・過失を要しない」とされてきた入管実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を係属中の事例。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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