在宅事件(逮捕されない事件)はどう進むのか|処分までの流れと在留の注意点
2026/08/13
逮捕されずに捜査が進む事件を在宅事件といいます。日常生活を続けながら、呼び出しに応じて取調べを受け、やがて検察官が処分を決めます。身柄を拘束されない分だけ精神的な負担は軽く見えますが、処分が決まるまでの期間に法律上の上限がなく、半年から一年以上かかることも珍しくありません。外国籍の方にとっては、この待機期間中に在留期間の更新時期が到来することが多く、刑事事件が係属していることが更新審査に影響するという固有の悩みが生じます。この記事では、在宅事件の進み方、略式手続の意味、処分が長引く理由と対処、在留手続との調整の仕方を整理します。
本記事の要点
- 在宅事件では、書類送検の後、検察官の取調べを経て起訴・不起訴が判断されます。
- 処分までの期間に法定の上限はなく、事件によっては一年以上かかることがあります。
- 罰金で終わる略式命令であっても、在留期間更新の審査では素行の点が問われます。
- 拘禁刑の有罪判決を避けることが在留維持の要ですので、不起訴処分を目標に据えた活動が必要です。
在宅事件はどのような順番で進みますか
在宅事件は、警察の捜査、検察官への送致、検察官の取調べ、処分の決定という順で進みます。警察は捜査を遂げた後、事件を検察官に送致しなければならず(刑事訴訟法246条)、身柄を伴わない場合は書類と証拠物だけが送られます。これがいわゆる書類送検です。その後、検察官が必要に応じてご本人を呼び出して取り調べ、起訴、不起訴、または略式命令の請求を判断します。身柄事件のように48時間、24時間、10日といった時間の制約がないため、進行はゆるやかです。ご本人からすると、何も連絡がない期間が続き、忘れられたのではないかと感じることもありますが、捜査は継続しています。この期間に、示談、被害弁償、環境調整といった有利な事情を積み上げられるかどうかが、処分を分ける実質的な勝負どころになります。
略式命令とは何ですか。罰金で終われば安心ですか
略式命令は、簡易裁判所が公開の法廷を開かずに書面審理で罰金または科料を科す手続です(刑事訴訟法461条以下)。ご本人が内容を理解し、異議がない旨の書面に署名することが前提になります。手続が早く終わる利点がありますが、これは有罪の確定であり、前科として記録に残ります。在留の観点からは、入管法24条4号の2は拘禁刑に処せられた場合を対象としますので、罰金刑であれば直ちに退去強制事由になるわけではありません。しかし、在留期間の更新や在留資格の変更の審査では、素行が善良であることが考慮要素とされており、罰金前科が不利に働く場合があります。したがって、略式に同意するかどうかは、目先の早期終結ではなく、更新申請までの見通しを含めて判断すべき事柄です。
処分が決まるまで一年近くかかることもあるのですか
あります。共犯者が多い事件、押収した電子機器の解析を要する事件、被害額の確定に時間を要する事件などでは、送検から処分まで長期間を要します。この間、ご本人にできることは受け身で待つことだけではありません。弁護人は、担当検察官に対して、示談の成立、被害弁償、勤務先の監督体制、再発防止の取組みなどを整理した意見書を提出し、起訴猶予を求める活動を行うことができます。また、進捗の照会を通じて、処分の時期をある程度見通すことも可能です。長期化が在留手続と重なりそうな場合には、更新申請の時期との関係を早めに整理しておく必要があります。何も手を打たないまま漫然と時間が経過することが、最も避けるべき状態です。
捜査中に在留期間の更新時期が来たらどうしますか
捜査中であっても、在留期間の更新申請自体は行うことができます。もっとも、刑事事件が係属している事実は審査で考慮されますので、事案の性質、被害弁償の状況、勤務の継続性などを説明する資料を添えることが実務的な工夫になります。処分が出ていない段階では、在留期間が短縮して許可されることや、審査が長引くこともあります。ここで重要なのは、期限を徒過して不法残留の状態に陥らないことです。在留期間の満了後も在留を続ければ、入管法24条2号の2や4号ロの問題となり、刑事処分の結論を待たずに退去強制手続が始まってしまいます。刑事弁護と入管手続の双方を同じ弁護人が把握し、申請の時期と内容を調整することが望ましいといえます。
よくあるご質問
呼び出しに応じないとどうなりますか
正当な理由のない不出頭が続くと、逃亡のおそれがあると評価され、在宅から身柄事件へ切り替わることがあります。日程の都合がつかない場合は、無視せず、弁護人を通じて日程の再調整を申し入れてください。日程の再調整を申し入れる際は、勤務のシフト表など、出頭できない理由を裏づける資料を添えると理解が得やすくなります。
不起訴になったことはどうすれば証明できますか
検察庁に対して不起訴処分告知書の交付を請求することができます。在留期間の更新や資格変更の申請の際に、処分の内容を客観的に示す資料として役立ちますので、処分後に取得しておくことをお勧めします。交付までに一定の期間を要することがありますので、更新申請の予定が決まっているときは早めに請求してください。
在宅事件でも弁護人は必要ですか
必要性は高いといえます。在宅事件は国選弁護の対象とならない段階があり、示談交渉や検察官への意見書提出といった処分を左右する活動は、私選の弁護人がいて初めて動きます。処分が出てからでは取り返しがつきません。費用の負担が難しい場合でも、初回の相談で見通しだけを確認しておくことには意味があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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