家宅捜索(ガサ入れ)を受けたら|押収品の還付・準抗告と在留への影響
2026/08/13
ある朝突然、複数の捜査員が令状を示して自宅や事務所に入ってくる。これが家宅捜索です。捜索を受けたということは、その場で逮捕されなくても、既にご自身が被疑者として捜査の対象になっているか、少なくとも事件に関係する物の所在を疑われていることを意味します。慌てて携帯電話を隠したり、データを消したりすれば、それ自体が新たな嫌疑を招きます。この記事では、令状のどこを確認すべきか、押収された物をいつ取り戻せるのか、違法な処分に対する不服申立ての方法、そして外国籍の方に特有の在留資格への波及について、刑事訴訟法の条文に沿って整理します。
本記事の要点
- 捜索差押許可状には、捜索する場所と差し押さえるべき物が記載されていますので、まず被疑事実と対象範囲を確認してください。
- 押収された物については押収品目録交付書が交付されますので、必ず保管し、弁護人に見せてください。
- 捜査機関の処分に不服があるときは、刑事訴訟法430条の準抗告により裁判所の判断を求めることができます。
- 捜索の過程で資格外活動が判明すると、入管法19条や22条の4に関わる問題が別途生じます。
令状のどこを確認すればよいですか
最初に確認すべきは、捜索差押許可状に記載された被疑事実、捜索すべき場所、差し押さえるべき物の三点です。捜索は令状に記載された場所と物の範囲でしか許されないのが原則で、刑事訴訟法219条はこれらの記載を要求しています。記載された罪名と全く無関係な物まで一律に持ち去られたのであれば、後に争う余地があります。可能であれば令状を写真に撮る、あるいは記載内容を書き写してください。捜索の最中に捜査員から質問を受けても、答える義務はありません。捜索は物を探す処分であって、その場で供述を求められる場面ではないからです。また、鍵を開ける、封を切るなどの必要な処分は法律上認められていますので、実力で妨害することは避け、抗議の内容は弁護人を通じて記録に残す方が有利です。
押収された携帯電話やパソコンはいつ返してもらえますか
返還の時期は、その物が事件の立証にとってどれだけ重要かによって変わります。押収の際には押収品目録交付書が交付されますので(刑事訴訟法120条)、まず何がいくつ持ち去られたかを確定してください。留置の必要がなくなった物は還付され、必要な間は仮に返す仮還付という扱いもあります(同法123条)。実務では、スマートフォンは内容の解析が終わるまで留置されることが多く、数か月に及ぶこともあります。仕事や生活に不可欠な機器については、弁護人が仮還付を申し立て、業務上の必要性を疎明することで返還が早まる場合があります。ここで絶対に避けるべきは、押収を免れるために機器を隠す、初期化する、他人に預けるといった行為です。証拠隠滅と評価され、在宅で済んだはずの事件で逮捕・勾留に至ることがあります。
捜索のやり方に納得できないときはどうしますか
捜査機関の押収処分に不服があるときは、裁判所に対する準抗告という手続で争うことができます。刑事訴訟法430条は、検察官や司法警察職員がした押収または押収物の還付に関する処分について、その取消しまたは変更を請求できると定めています。令状の記載範囲を超える物が押収された場合、還付の申立てに応じない場合などが典型です。また、捜索の適法性そのものは、後の公判で違法収集証拠の問題として争うこともあります。もっとも、その場で捜査員と押し問答をしても記録は残りません。誰が、いつ、どの部屋で、どのような物を持ち去ったのかを時系列でメモし、立会人が誰であったかも含めて弁護人に伝えることが、後の主張の土台になります。
捜索を受けたこと自体が在留資格に影響しますか
捜索を受けたという事実だけで在留資格を失うことはありません。影響が生じるのは、捜索を契機に別の事情が判明した場合です。たとえば、留学や家族滞在の在留資格で許可の範囲を超えて就労していた事実が資料から明らかになれば、入管法19条の資格外活動の問題となり、状況によっては同法22条の4による在留資格の取消しが検討されます。また、被疑事実が窃盗や詐欺、文書偽造などであれば、別表第一の在留資格の方は、有罪となり拘禁刑に処せられた場合、執行猶予付きであっても入管法24条4号の2に該当し得ます。薬物事犯であれば同法24条4号チにより執行猶予でも退去強制事由となります。だからこそ、捜査の初期段階から不起訴処分の獲得を目標に据える必要があります。
よくあるご質問
捜索を拒むことはできますか
令状に基づく捜索を拒むことはできません。抵抗すれば公務執行妨害に問われるおそれもあります。できるのは、令状の記載を確認し、範囲外の物の押収に異議を述べ、その経緯を記録しておくことです。異議の内容は弁護人から書面で申し入れるのが確実です。立会人となった同居人や勤務先の担当者の氏名も、後の主張のために控えておいてください。
捜索の後に逮捕されますか
必ず逮捕されるわけではありません。押収物の解析結果を踏まえて在宅のまま捜査が進む場合もあります。ただし、証拠隠滅や逃亡が疑われる行動をとると逮捕の可能性が高まりますので、押収された物に関する働きかけは控えてください。また、押収された物の一覧を家族と共有し、生活や仕事に不可欠な物があれば早めに弁護人へ伝えてください。
会社に知られてしまいますか
勤務先で捜索が行われた場合や、勤務先に照会がなされた場合には知られる可能性があります。就労資格の方は、退職が在留資格該当性の問題につながることもありますので、勤務先への説明の仕方も含めて弁護人と相談してください。勤務先には、確定していない事実を断定的に説明しないことが、後の行き違いを防ぎます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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