判決言渡し後にすること 控訴期間14日と執行猶予でも生じる在留への影響
2026/08/13
判決が言い渡されると、刑事手続は一区切りを迎えます。しかし外国籍の方にとっては、判決の内容によって在留資格の帰趨が決まるため、むしろここからが正念場になることがあります。控訴をするかどうかを決められる期間は14日と短く、その間に、量刑面の判断だけでなく、在留への影響も踏まえた検討をしなければなりません。本稿では、判決当日に確認すべき事項、控訴の判断の考え方、執行猶予でも在留を失う類型、そして判決確定後に直ちに着手すべき準備を説明します。
本記事の要点
- 控訴の申立てができる期間は判決の日の翌日から14日間で、延長はありません。
- 別表第一の在留資格の方は、執行猶予付きの拘禁刑でも入管法24条4号の2に該当し得ます。
- 薬物事犯は入管法24条4号チにより、執行猶予でも退去強制事由となります。
- 判決が確定する前から、入管手続に向けた資料の準備を始めておく必要があります。
判決の当日に確認しておくべきことは何ですか
まず主文を正確に把握します。刑名と刑期、執行猶予の有無と猶予期間、保護観察が付されたかどうか、未決勾留日数の算入、訴訟費用の負担、没収や追徴の有無を確認してください。次に、量刑の理由として何が重視されたのかを聴き取ります。被害弁償が評価されたのか、常習性が指摘されたのか、反省の程度がどう評価されたのかは、控訴するかどうかの判断材料になるだけでなく、その後の入管手続で提出する説明資料の内容にも関わります。実刑判決であった場合には、直ちに保釈が失効しますので、身柄の扱いについても確認が必要です。判決書の謄本の取得手続も、早めに進めてください。
控訴するかどうかはどう判断しますか
控訴の申立てができるのは、判決の日の翌日から14日以内です。この期間を過ぎると判決は確定し、争う手段は原則として失われます。判断にあたっては、量刑が重すぎないか、事実の認定に誤りがないかという通常の観点に加え、外国籍の方の場合には、在留への影響という観点が加わります。たとえば、刑期が1年を超えるかどうかは入管法24条4号リとの関係で意味を持ちますし、罪名や刑名の認定が変われば24条4号の2との関係も変わり得ます。他方で、控訴すれば手続が長期化し、身柄拘束が続く可能性もあります。利害を具体的に比較したうえで、期間内に結論を出す必要があります。
執行猶予が付いても在留を失うことがあるのですか
在留資格が入管法別表第一に属する方の場合、窃盗、詐欺、傷害、住居侵入、文書偽造等の罪により拘禁刑に処せられたときは、入管法24条4号の2により、執行猶予が付されていても退去強制事由に該当します。薬物事犯についても、24条4号チにより執行猶予を問わず該当します。これに対し、24条4号リが定める1年を超える拘禁刑については、全部の執行猶予が付された場合が除かれています。また、別表第二に属する永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者には、24条4号の2の適用がありません。実刑を免れたことと在留を維持できることは別の問題ですので、判決内容を条文に当てはめて確認することが不可欠です。
判決確定後に直ちに着手すべき準備
退去強制事由に該当する可能性がある場合には、判決確定を待たずに入管手続の準備を始めます。具体的には、在留特別許可を求める場合に備え、在留期間、家族関係、扶養の状況、子の就学、納税と社会保険の履行、地域社会との関わりを示す資料を集めます。あわせて、収容を避けるための監理措置に向けて、監理人となり得る方の候補を確保します。なお、退去強制により出国した場合、その後の上陸には入管法5条1項9号による上陸拒否期間が生じ、退去強制歴が1回目であれば5年、2回目以降であれば10年、薬物関係では期間の定めのない類型があります。将来の再入国の可否にも関わる問題です。
よくあるご質問
執行猶予がついたのに退去強制になるのは納得できません
刑事責任の評価と在留の可否は別の基準で判断される仕組みになっており、この点は当事者にとって理解しにくいところです。退去強制事由の該当性判断における故意や過失の要否は、実務上議論のある論点であり、当事務所でも責任主義の射程を問う訴訟を提起し、係属中です。
控訴すれば在留を維持できる可能性はありますか
控訴により判決が確定しない間は、確定判決を前提とする手続は進みません。もっとも、控訴の目的は量刑や事実認定を争うことであり、時間を稼ぐこと自体が目的にはなり得ません。在留への影響を踏まえた見通しを、期間内に弁護人と検討してください。時間を稼ぐこと自体に意味があるわけではありません。
判決書の写しはどこで取得できますか
事件を担当した裁判所に対して、判決書の謄本または抄本の交付を請求することができます。入管手続や勤務先への説明で必要になる場面がありますので、早めに取得しておくと安心です。取得の方法と手数料は、弁護人にご確認ください。判決確定証明書も併せて必要になることがあります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------