中国にいるご家族が日本での逮捕を知ったとき、最初にすべきこと(刑事手続と在留への影響)
2026/08/13
中国国内のご家族にとって、日本で身内が逮捕されたという知らせは、情報が極端に少ないまま届きます。日本の刑事手続では、逮捕から最大72時間、弁護人以外は原則として本人と会うことができません。この最初の数日間にご家族が何をするかで、その後の処分と在留資格の行方が大きく変わります。本稿では、中国にいるご家族が取るべき行動を、刑事手続の時間軸と、入管法上の在留への影響という二つの側面から整理します。あわせて、善意から行われがちであるものの、かえって不利益を招く行動についても具体的に述べます。
本記事の要点
- 逮捕から最大72時間は弁護人以外の面会ができないため、弁護人の選任が最優先です。
- 中国にいるご家族でも、電話とオンラインで弁護人を選任し、委任の手続を整えることができます。
- 罪名によっては、執行猶予付きの拘禁刑でも入管法24条4号の2により退去強制事由に該当します。
- 被害者やその関係者にご家族が直接連絡することは、罪証隠滅を疑われるため避けてください。
中国にいる家族は、逮捕された本人と面会できますか
結論から申し上げますと、逮捕直後の段階ではご家族は本人と面会できません。刑事訴訟法上、逮捕から検察官への送致までが最大48時間、送致から勾留請求に対する裁判官の判断までがさらに最大24時間とされ、この合計72時間は弁護人および弁護人となろうとする者だけが接見できます。勾留が決定した後は一般面会が可能になりますが、平日の日中に限られ、一回15分程度で、留置施設の職員が立ち会います。さらに、共犯者がいる事件や否認事件では、刑事訴訟法81条に基づく接見等禁止の決定が付され、ご家族の面会も手紙のやり取りも禁じられることが少なくありません。中国から渡航しても会えないという事態は実際に生じますので、航空券を手配する前に、弁護人を通じて接見禁止の有無を確認することをお勧めします。
最初の72時間で、家族が整えるべき具体的な情報と資料
最初に確認していただきたいのは、本人の氏名、生年月日、国籍、在留資格の種別と在留期限、そして逮捕された警察署の名称です。これらが分かれば、弁護人は当日中に接見に向かうことができます。次に、在留カードとパスポートの写し、勤務先または在学先の名称、日本国内の住居の契約状況、家族構成が分かる資料を集めてください。これらは勾留を回避するための意見書に用いるほか、後日の在留特別許可の資料にも直結します。費用の送金方法も早めに確認しておくと、選任が遅れません。逆に、本人の携帯電話やパソコンを日本の知人に処分させる、勤務先に説明を合わせるよう依頼するといった行為は、それ自体が証拠隠滅や犯人隠避と評価されかねず、本人の勾留を長引かせる原因になります。
刑事事件の結果は在留資格にどう影響しますか
有罪となった場合の在留への影響は、在留資格が入管法別表第一(技術・人文知識・国際業務、留学、技能実習、経営・管理等)に属するか、別表第二(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)に属するかで大きく異なります。別表第一の在留資格の方が、窃盗、詐欺、傷害、住居侵入、文書偽造等の罪により拘禁刑に処せられた場合には、入管法24条4号の2により、執行猶予が付いていても退去強制事由に該当します。薬物事犯は24条4号チにより、やはり執行猶予でも該当します。これに対して別表第二の在留資格には24条4号の2の適用がなく、24条4号リの定める1年を超える拘禁刑(全部の執行猶予が付された場合を除く)等が問題となります。まず本人の在留資格の種別を確認することが出発点です。
なぜ不起訴処分の獲得を最優先の目標に置くのか
在留の観点からは、執行猶予付き判決を得ることではなく、不起訴処分を得ることが目標になります。前述のとおり、別表第一の在留資格の方については、執行猶予付きの拘禁刑であっても退去強制事由に当たる類型があるため、実刑を免れたから安心だとは言えないからです。不起訴処分であれば有罪判決が存在しませんので、これらの退去強制事由に該当せず、在留期間更新の審査においても説明の余地が大きく残ります。したがって、弁護活動は起訴後ではなく、起訴前の勾留期間に集中させる必要があります。被害弁償や示談、生活環境の調整、身元引受の準備を、勾留の最初の10日間のうちに動かせるかどうかが、実務上の分かれ目になります。
よくあるご質問
日本語ができない家族でも、日本の弁護士に依頼できますか
依頼できます。中国語で事情をお聴きし、委任契約の内容も中国語でご説明したうえで進めることが可能です。委任状は郵送のほか、状況に応じて電子的な方法で整えることもできます。まず本人の氏名と留置先の警察署名をお伝えいただければ、その日のうちに接見の手配を検討します。
逮捕されたことは、中国にいる家族に自動的に連絡されますか
自動的に連絡されるとは限りません。捜査機関から家族へ通知する運用は一律ではなく、実務上は本人の意思や事案の内容によります。他方、領事関係に関するウィーン条約36条に基づき、本人が希望すれば領事機関への通報を求めることができます。通報するかどうかは本人の意思を確認して判断します。
保釈金を中国から送金することはできますか
送金自体は可能ですが、保釈は起訴後の制度であり、起訴前の勾留中には利用できません。また海外からの送金には時間を要しますので、金額の見込みと着金の時期を早めに弁護人と共有してください。資金の出所を説明できる資料も準備しておくと、手続が円滑に進みます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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