詐欺未遂事件 粘り強い示談交渉により、余罪責任から解放
2026/08/09
【事件類型】詐欺未遂罪 【解決方法】示談成立・余罪主張排除
■事件概要
中国籍の周さんは、詐欺未遂の被疑事実で逮捕されました。捜査機関は、複数の余罪を示唆し、より重大な事件への関与を疑わせる取り調べを行っていました。しかし、周さんは一貫として、指摘された行為には関与していないと主張していました。
■依頼前の状況 ~在留資格喪失のリスク
詐欺未遂罪で起訴されれば、有罪判決を受けた場合、入管法24条4号(前科による退去強制事由)に基づき、在留資格を喪失するリスクが生じます。中国籍で日本に在住する周さんにとって、刑事処分と同時に在留資格の剥奪という二重の危機に直面していました。
加えて、捜査段階での事態は深刻でした。逮捕直後に弁護人の接見を申し立てましたが、警察は「該当者なし」として、半日以上にわたって面会を遅延させました。その空白の時間帯に、後に有罪の証拠とされることになった供述調書が作成されていました。これは、弁護人依頼権を実質的に妨害するものであり、適正手続の観点から深刻な問題を内包していました。
■弁護方針と対応
当事務所は、以下の方針で対応しました。
(1)初犯であること、被害者との関係修復が可能であることに着目し、被害者側との粘り強い示談交渉を継続しました。
(2)余罪として指摘されていた行為については、周さんが一貫して否定していることを重視し、「自分は関与していない」という主張を貫きました。捜査機関の誘導的な取り調べに屈することなく、関係のない事件への責任を認めないという方針を厳守しました。
(3)弁護人接見の遅延と供述調書作成の経緯について、適正手続上の問題として記録に残し、将来の法廷対抗の備えとしました。
■解決結果
被害者との示談交渉は成立し、示談金の支払いが実行されました。本件の詐欺未遂罪については起訴されることになりましたが、同時に余罪とされていた行為については、周さんが関与していないことが認識され、これ以上の立件を免れることができました。
ただし、詐欺未遂罪での起訴という結果は避けられず、有罪判決により周さんは在留資格を喪失することになってしまいました。
■弁護士からのコメント ~在留資格維持には「初動」が決定的
本件で示唆されることは、外国人が刑事事件に関わった場合、「不起訴処分の獲得」が在留資格維持の決定的な要因であるということです。
周さんのように、捜査段階で複数の行為に関与を疑われる場合、弁護士の早期介入によって、以下のことが可能になります。
・本当に関与した行為と、関与していない行為を厳密に分ける
・被害者側との示談交渉を主導し、被害者の処罰感情を和らげる
・不起訴処分の獲得を積極的に狙い、在留資格喪失を防ぐ
本件で起訴に至った背景には、捜査初期段階での対応の遅れがあります。弁護人接見の遅延という事態に直面した時点で、より積極的な法的対抗が必要であった可能性があります。外国人刑事事件では、「日本にいたい」という願いの実現のためには、起訴前の段階が勝負です。
舟渡国際法律事務所
代理人弁護士 松村大介
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