留学生のアルバイトが週28時間を超えていたら|資格外活動と在留への影響
2026/08/07
留学の在留資格で日本に滞在しながら、資格外活動許可を受けてアルバイトをしている方は多数おられます。もっとも、その許可には原則として週28時間という時間の上限があり、これを超えた就労は資格外活動として扱われます。在留期間の更新の際に給与明細や課税証明の提出を求められ、そこで初めて超過が判明する、という相談は決して少なくありません。本稿は、いま超過している方、あるいは超過を指摘された方に向けて、何が問題となり、どう対応するのが現実的かを整理するものです。
本記事の要点
- 留学生の資格外活動許可は、原則として1週について28時間以内(長期休業期間中は1日8時間以内)とされています。
- 時間超過は入管法19条違反として、更新不許可・在留資格取消し・退去強制のいずれにも接続し得ます。
- 専ら資格外活動を行っていると明らかに認められる場合、入管法24条4号ハの退去強制事由に該当し得ます。
- 刑事事件化しなくても在留は失われ得るため、刑事処分の有無だけを見て安心することはできません。
- 超過の程度、経緯、学業の継続状況をどう説明するかによって、更新審査での評価は変わり得ます。
週28時間という枠の意味
留学の在留資格は、本来、教育機関で教育を受ける活動を予定したものです。資格外活動の許可は、その本来の活動を妨げない範囲での就労を例外的に認めるものであり、時間の上限はその趣旨から導かれています。したがって、時間を超えた就労は、単なる形式違反ではなく、在留資格の本来の目的から逸脱した状態と評価されることになります。
実務上問題となりやすいのは、複数の勤務先を掛け持ちしている場合です。1店舗あたりでは上限内に収まっていても、合算すると超過するという構造は珍しくありません。勤務先はそれぞれの契約しか把握していないため、誰も止めないまま累積していきます。
超過が判明する場面
超過が表面化する典型は、在留期間の更新申請です。近時は、給与支払報告や課税証明書、住民税額から就労量が推計される運用が広く行われており、申告した内容と課税額の齟齬が指摘されることがあります。学校からの出席状況の報告と併せて検討され、出席率が低い場合には、留学の本来の活動を行っていないという評価が加わります。
もう一つの契機は、勤務先への摘発です。雇用主側が不法就労助長罪(入管法73条の2)で立件される過程で、就労していた留学生の在留状況が調査対象となる流れです。この場合、本人が積極的に違反を望んだわけでなくとも、調査の対象からは外れません。
在留への三つの経路
第一の経路は、在留期間更新の不許可です。入管法21条3項は、更新について法務大臣が適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可することができると定めており、広い裁量が認められています。時間超過は、この裁量判断において素行に関する消極的事情として評価されます。
第二の経路は、在留資格の取消しです。入管法22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合等を取消事由としており、学業が実質的に途絶して就労が中心になっている状態は、ここに接続する可能性があります。
第三の経路は、退去強制です。入管法24条4号ハは、専ら資格外活動を行っていると明らかに認められる者を退去強制事由としています。「専ら」「明らかに」という限定が付されている以上、単に一定期間上限を超えたというだけで直ちに該当するものではありませんが、就労実態が学業を完全に置き換えている場合には、この判断がなされ得ます。
刑事罰と行政処分は別の判断である
資格外活動には刑事罰の定めもあります。もっとも、実務上、時間超過の類型で本人が起訴される例は多くはなく、刑事事件にならないまま在留手続の中だけで問題が処理されることも珍しくありません。ここに落とし穴があります。刑事事件にならなかったこと、あるいは不起訴になったことは、在留が守られたことを意味しないからです。
当事務所は、刑事処分と入管処分を別個の判断として捉え、それぞれに対する主張を独立に組み立てます。刑事事件が終結した段階で「解決した」と考えて入管手続への備えを怠れば、数か月後に更新不許可という形で問題が戻ってきます。
超過が判明した場合に何をするか
まず、実際の就労時間を正確に把握することです。勤務先ごとのシフト表、給与明細、振込記録を時系列で整理し、どの時期にどの程度超過していたのかを自ら把握しないまま説明を始めると、後から数字が変わり、説明の信用性を損ないます。
次に、超過に至った経緯の説明です。学費や生活費の事情、送金の遅れ、勤務先からの依頼といった事情は、それ自体で違反を正当化するものではありませんが、悪質性の評価には影響し得ます。同時に、超過を是正した時期、現在の就労状況、学業の継続状況を、資料を伴って示す必要があります。
そのうえで、在留期間更新の申請書と併せて、理由書の形で経緯と是正の状況を説明することになります。何も説明せずに申請し、不許可となってから理由を述べる順序では、選べる手が限られます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077)は、外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。留学生の方の事案では、刑事手続と在留手続が並行し、また学校との関係も同時に問題となるため、全体を一つの戦略として設計する必要があります。
在留に関しては、観光目的で来日した相談者が在留資格を喪失し不法滞在で起訴されるに至った困難な事案において、婚姻・認知の手続を当局との交渉により実現させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで在留特別許可を獲得した事例があります(事例D-1)。また、国際刑事事件・裁判員裁判対象事件を含む重大事件への対応実績も有しており、中国籍の方の事件に数多く関与してまいりました(事例E-1)。
当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。ご本人が日本語での説明に不安をお持ちの場合でも、打合せから手続まで通訳を介して対応いたします。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携し、ワンストップで対応いたします。
おわりに
週28時間という枠は、日々の生活の中では意識しにくい数字です。気付いたときには相当期間が経過している、というのがこの類型の実情でもあります。もっとも、超過の事実があるからといって、直ちに全てが失われるわけではありません。経緯を正確に把握し、是正した状況を資料とともに示すことができれば、審査の中で説明する余地は残されています。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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