舟渡国際法律事務所

電車内でのスリ・置き引きで逮捕されたら|短期滞在中の中国籍の方とご家族へ

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電車内でのスリ・置き引きで逮捕されたら|短期滞在中の中国籍の方とご家族へ

電車内でのスリ・置き引きで逮捕されたら|短期滞在中の中国籍の方とご家族へ

2026/08/07

夏の観光シーズンに入り、都内の鉄道車内や空港ターミナルでの窃盗事件の摘発が報じられています。短期滞在(観光)の在留資格で来日して間もない中国籍の方が、車内で他人の財布を抜き取ったとして現行犯逮捕された、という趣旨の報道もありました。ご本人にとっては「出来心だった」「金額も大きくない」という感覚かもしれません。しかし、短期滞在中の窃盗は、日本に生活基盤のある方の万引き事案とは、置かれた条件がまるで違います。本稿では、短期滞在中に窃盗で身柄を取られた場合に何が起きるのか、ご家族が何を判断しなければならないのかを整理します。

本記事の要点

  • 短期滞在者の窃盗は、住居・職業がないことを理由に勾留が認められやすく、身柄拘束が長期化しやすい類型です。
  • スリ・置き引きは「たまたま」ではなく計画的な窃盗と評価されやすく、示談だけでは処分が軽くなりにくい面があります。
  • 窃盗罪は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、1年を超える拘禁刑となれば入管法24条4号リの退去強制事由に直結します。
  • 短期滞在の在留期間は短く、刑事手続の途中で在留期間が満了して不法残留の問題が重なることがあります。
  • 帰国の可否だけでなく、その後の再来日(上陸拒否)に影響するため、起訴前の不起訴処分の獲得が決定的に重要です。

逮捕された後、どのような手続が進むのか

現行犯逮捕の場合、警察署での取調べを経て、48時間以内に事件が検察官に送致されます。検察官は24時間以内に勾留を請求するかを判断し、裁判官が勾留を認めれば、原則10日間、延長されて最大20日間、身柄拘束が続きます。この間に起訴・不起訴が決まります。

短期滞在で来日された方の場合、日本国内に定まった住居がなく、勤務先もありません。刑事訴訟法60条1項が定める勾留の要件のうち「住居不定」「逃亡のおそれ」が形式的に当てはまりやすく、日本に生活基盤のある方に比べて勾留が認められやすい傾向があります。加えて、宿泊先のホテルは日単位で契約が切れるため、身元引受けの受け皿を弁護人が作り直さなければならないことも少なくありません。

スリ・置き引きが「軽い窃盗」と扱われにくい理由

窃盗罪の法定刑は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(刑法235条)。同じ窃盗でも、店舗での万引きと、混雑した車内で他人の身体に接触して財布を抜き取る行為とでは、犯行態様の評価が異なります。後者は、被害者を選び、混雑という状況を利用し、発覚を避けるために移動を重ねるという計画性が読み取られやすいためです。防犯カメラの映像により、乗降を繰り返して物色していた経過が復元されると、常習性や共犯者の存在まで疑われることがあります。

この点で、被害弁償や示談は依然として重要ではあるものの、それのみで直ちに不起訴に至るとは限りません。犯行の計画性・常習性の評価をどう争うか、あるいは偶発性・従属的関与をどう立証するかという、事案の中身に踏み込んだ主張が必要になります。

在留資格への影響|帰国できるかではなく、再び来られるか

外国人事件で最も見落とされやすいのは、刑事処分が終わった後の入管手続です。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としています。窃盗の初犯で1年を超える実刑が言い渡される例は多くありませんが、被害額が大きい場合、複数回の犯行が併合される場合、共犯組織の関与が認定される場合には、この水準に届くことがあります。

また、短期滞在の在留期間は15日・30日・90日と短いため、勾留中に在留期間が満了し、不法残留(入管法24条4号ロ)の問題が重なることがあります。刑事事件としては罰金や不起訴で終わっても、入管の収容と退去強制手続に移行し、退去強制令書の発付を受ければ、原則として5年間(過去に退去強制歴があれば10年間)日本に上陸できません(入管法5条1項9号)。仕事や親族の関係で日本と往来のある方にとって、この上陸拒否期間は刑事処分そのものより重い結果になり得ます。

不起訴処分を最優先に置く理由

当事務所は、外国人の刑事事件について、執行猶予判決の獲得を最終目標としません。起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先目標として弁護方針を組み立てます。有罪判決を受けた事実そのものが入管審査で評価対象となる以上、判決の内容で調整するより、有罪判決を作らせないことが在留の維持に直結するからです。

短期滞在中の窃盗事案では、被害者との示談交渉、被害品の返還と弁償、本国からの送金手当て、帰国後の再来日予定の説明、犯行の偶発性を示す事情の整理といった作業を、20日間の勾留期間内に並行して進める必要があります。中国本土からの送金には外貨管理上の制約があり、示談金の準備に想定外の時間を要することもあります。着手が遅れれば、それだけで選択肢が減ります。

初動で押さえておきたい3つのこと

第一に、取調べでの供述です。黙秘権は憲法38条1項に由来する権利であり、行使したこと自体が不利益に扱われてはなりません。事実関係が固まらないうちに「魔が差した」「何度かやった」といった曖昧な供述が調書に残ると、後の公判で常習性の証拠として使われます。

第二に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳人は法律用語の専門家とは限らず、方言への対応も一様ではありません。「取った」と「拾った」、「見ていた」と「探していた」の訳し分けが、事件の性質を左右します。当事務所では、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関側の通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。

第三に、弁護人の選任時期です。当番弁護士制度により初回の接見は無料で受けられますが、継続的な弁護活動には私選又は国選の選任が必要です。短期滞在事案では、勾留の当初から入管手続を見据えた活動を始めなければ、間に合いません。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、初動の接見から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。

窃盗・財産犯の類型では、特殊詐欺の出し子行為に関与したとされた20代女性について、指示役からの欺罔的な状況と犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例があります(事例B-1)。また、在留に関しては、観光目的で来日した相談者が在留資格を失い不法滞在で起訴されるに至った事案において、婚姻・認知の手続を当局との交渉により実現させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することで、在留特別許可を獲得した事例があります(事例D-1)。

刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携し、ワンストップで対応いたします。

おわりに

短期滞在中の窃盗事件は、事件そのものの重さよりも、身柄拘束の条件と在留への波及の点で厳しい類型です。逆に言えば、初動の設計次第で結果が変わる余地も大きい類型でもあります。ご家族が「軽い事件だから待っていれば帰ってくる」と考えて数日を過ごすうちに、勾留が決まり、在留期間が切れ、入管に引き継がれるという流れが現実に起きています。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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