舟渡国際法律事務所

執行猶予でも強制送還される?入管法24条の退去強制事由を号別に解説

お問い合わせはこちら

執行猶予でも強制送還される?入管法24条の退去強制事由を号別に解説

執行猶予でも強制送還される?入管法24条の退去強制事由を号別に解説

2026/08/06

「執行猶予が付いたのだから、日本に残れるはずだ」――外国人刑事事件で最も危険な誤解が、これです。罪名によっては、執行猶予付きの判決であっても退去強制(強制送還)の対象となります。逆に、執行猶予が付いたからこそ退去強制を免れる類型もあります。分かれ目は、入管法24条のどの号に該当するかという、号ごとの構造の違いにあります。本記事では、この構造を号別に解説いたします。

本記事の要点

  • 執行猶予は刑の執行を猶予する制度にすぎず、有罪判決であることに変わりはありません。
  • 入管法24条4号リ(1年を超える拘禁刑)には、刑の全部の執行猶予の場合を除く旨の除外規定があります。
  • 他方、薬物犯罪(同条4号チ)は刑の重さや執行猶予の有無を問わず退去強制事由に該当し得ます。
  • 「どの号に該当し得るか」を罪名ごとに特定することが、外国人刑事弁護の出発点です。
  • だからこそ、判決の内容を争う前に、そもそも起訴させない(不起訴処分の獲得)ことが最重要になります。

執行猶予とは何か――「無罪」でも「帳消し」でもない

執行猶予は、有罪判決で言い渡された刑について、一定期間その執行を猶予する制度です。猶予期間を無事に経過すれば刑の言渡しは効力を失いますが、判決時点で「拘禁刑に処せられた」という事実は生じています。入管法の退去強制事由の多くは、この「刑に処せられた」ことに着目するため、執行猶予の有無が意味を持つかどうかは、号ごとの規定ぶりによって決まります。

入管法24条4号リ――執行猶予に除外規定がある類型

24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除外しています。したがって、例えば窃盗罪や詐欺罪で1年6月の拘禁刑・全部執行猶予付き判決を受けた場合、この号との関係では直ちに退去強制事由に該当しません。この除外規定の存在が「執行猶予なら大丈夫」という誤解の源ですが、それはあくまで4号リの構造にすぎません。

入管法24条4号チ――執行猶予でも該当する薬物犯罪

24条4号チは、覚醒剤取締法・大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法等の薬物関係法令に違反して有罪の刑に処せられた者を退去強制事由としており、刑の重さを問わず、執行猶予が付いていても該当し得ます。すなわち薬物事犯では、執行猶予付き判決の獲得は在留を守る意味では防御になっておらず、無罪または不起訴のみが実効的な防御線となります。この構造は、大麻を「軽い犯罪」と考えがちな留学生・技能実習生の事案で、特に深刻な結果をもたらします。

そのほか注意すべき号

資格外活動に関連して刑に処せられた場合(4号ロ)、不法残留(4号ロ関係)や不法入国・不法上陸(1号・2号)、他の外国人に不法就労活動をさせた者(4号ヌ)など、24条には構造の異なる事由が並んでいます。同じ「有罪判決」でも、在留資格・罪名・刑の内容の組み合わせによって結論が変わるため、自分の事件がどの号との関係で問題になるのかを、早期に特定する必要があります。

弁護方針――不起訴目標主義と三重の防御線

以上の構造から、外国人刑事事件では、執行猶予判決を最終目標とする弁護活動は不十分であり、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することが最優先目標となります(不起訴目標主義)。当事務所では、①刑事事件で故意・過失を含む構成要件該当性を徹底して争う、②有罪となった場合に備えて入管手続での主張の基礎を刑事段階から築く、③入管手続では在留特別許可の獲得を目指す、という三重の防御線を意識した活動を行っています。退去強制事由の判断に故意・過失を要件とすべきではないかという論点についても、現在係争中の訴訟で正面から問うています。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決、特殊詐欺事案での全件不起訴処分、難関とされた在留特別許可の一回での獲得、不法就労助長罪認定事件での前例のない在留特別許可の獲得など、刑事と入管の双方にまたがる解決実績を有します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、接見初動から松村弁護士が全工程を直接担当いたします。

結びに

執行猶予をめぐる誤解は、弁護方針の設計を誤らせ、取り返しのつかない結果につながります。外国籍の方の刑事事件では、入管法24条の号別の構造を踏まえた戦略を、捜査の初期段階から立ててください。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。