平成26年・被退去強制歴を隠して上陸許可を受け在留資格を取り消され不許可|配偶者との同居継続を求めた事例(D類型不許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
上陸の際の申告内容が後に問題となった事例です。平成26年分事例集(出入国在留管理庁が公表)のD類型(その他)不許可第3事例です。違反態様は在留資格の取消し、端緒は入国審査官からの通報、在日約2月です。在留希望の理由は、同国人配偶者(在留資格は「人文知識・国際業務」)との同居を継続したいというものでした。特記事項には、被退去強制歴が1回あること、退去強制歴を隠して上陸許可を受けたことが発覚し在留資格を取り消されたことが記されています。刑事処分はなく、違反期間の欄は該当なしとされています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例自体は改正入管法施行(令和6年6月10日)前、改定前ガイドラインの下での判断です。
- 積極要素・家族関係:第2の2(1)と(2)の対象は、日本人・特別永住者や別表第二の在留資格者との家族関係です。本事例の配偶者の在留資格は「人文知識・国際業務」で、これには含まれず、家族関係の積極要素は働きにくい構造です。
- 消極要素・第2の6:在留資格の取消しに基づく退去強制事由。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。端緒は通報であり、第2の9にも当たりません。
- 消極要素:被退去強制歴が1回あること、および上陸許可の申請の際に退去強制歴を隠したこと。退去強制を受けた者には一定期間上陸が拒否される仕組みがあり、これを隠した点は重く評価されます。
結論を分けた一線はどこか
第3は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討するとします。本事例は家族関係の積極要素が働きにくく、他方で申告の虚偽という消極要素が中心にあります。同じ平成26年D類型の許可第5事例は、在日約2月と期間は同じですが、人身取引の被害者として公的機関に保護された事案でした。同じ短い在日期間でも、保護を受ける立場にあるのか、虚偽の申告をした立場にあるのかで評価は正反対になると読めます。
弁護士のコメント
刑事処分のない事例ですので、2点を挙げます。
第1に、配偶者がいることの意味です。配偶者の在留資格が別表第一のものである場合、家族関係の積極要素はそのままでは働きません。同居の継続だけを主張しても判断を動かす力は弱く、配偶者側の在留資格の性質を確認して主張を設計する必要があります。
第2に、上陸の段階での申告です。過去に退去強制を受けた事実は必ず確認されます。申告しない選択は在留資格の取消しにつながり、その後の判断でも消極要素として残ります。過去の経緯がある場合は、隠すのではなく、上陸拒否の期間や特別な事情の主張の余地を含め事前に検討すべきでした。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にとどまり、その年の判断の全部ではありません。同じ事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
過去の退去強制歴がある場合、隠さずに主張の道筋を立てることが、その後の手続を左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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