令和元年・脳疾患の後遺症で寝たきり状態、在日約24年3月で定住者(5年)|不法残留約1年2月でも在留特別許可(D類型許可第7事例)
2026/08/06
事例の概要
健康上の事情が在留特別許可の判断に正面から働いた事例です。令和元年分事例集(出入国在留管理庁公表)のD類型(その他)許可第7事例で、結論は許可です。違反態様は不法残留、端緒は出頭申告で、在日約24年3月・違反約1年2月。刑事処分はありません。在留希望の理由は、本邦に生活基盤があることでした。事例集は、脳疾患による後遺症のため寝たきりの状態であることを特記しています。許可内容は定住者(5年)です。症状の詳細には立ち入りません。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
当てはめは令和6年3月改定の現行ガイドラインによります。本事例は改正入管法施行(令和6年6月10日)前の判断です。
- 積極要素・第2の7(1):難病等により本邦での治療を必要とすること、又はそうした治療を要する親族の看護は、特に考慮する積極要素です。後遺症により寝たきりの状態にあることは、本邦での治療と療養の必要性、および出国そのものの困難として、この要素に当たり得ます。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭したこと。
- 積極要素:在日約24年3月にわたり本邦に生活基盤があること。
- 消極要素・第2の5:不法在留約1年2月と短期です。消極要素・第2の6:不法残留。どの号に当たるかは条文に当たって確認する必要があります。
- 第2の3の素行不良の記載はありません。
結論を分けた一線はどこか
本件で注目されるのは、許可内容が定住者(5年)であることです。事例集の許可事例の多くは在留期間1年であり、5年が認められたことは、在留の継続が長期にわたって必要であると判断されたことを示すと読めます。療養の必要性は短期間で解消する性質のものではなく、更新の手続を繰り返すこと自体が負担となる事情も考慮されたと考えられます。同じ令和元年D類型の不許可第6事例は、在日約10年6月で経営・管理により在留していましたが、窃盗未遂の有罪判決という素行の消極要素がありました。
弁護士のコメント
刑事処分がない事例です。2点を述べます。
第1に、医学的な資料の整え方です。診断書は、病名と現在の状態だけでなく、本邦での治療と療養の必要性、移動や搬送の可否、本国での治療の見込みまで踏み込んだ記載があることが望ましいところです。介護の体制と、それを担う方の在留状況も併せて示す必要があります(内容は事案によります)。
第2に、提出の時期です。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しないとしています。健康状態は時間とともに変化しますので、違反審査の段階での記録が後の判断の土台になります。ご本人が手続に出席することが難しい場合の対応も、早い段階で入管に伝えておくべき事柄です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表される事例は各年20件前後にとどまります。医療上の事情は一件ごとに異なり、同じ病名の許可例が事例集にないことは珍しくありません。それは可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後もなお違反認定処分の取消しを争っております。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しております。担当は松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)です。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、当局から一旦受理されなかった婚姻と認知を憲法的観点からの交渉によって成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して、1度の申請で在留特別許可を獲得しております。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制に至るため、当事務所は起訴前の段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標としております。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動きます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携する行政書士とワンストップで対応いたします。
結語
療養を必要とする方の場合、診断書の記載の作り込みが判断を大きく左右いたします。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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