令和6年前半・不法就労助長で罰金30万円、在留特別許可されず|配偶者が「永住者の配偶者等」でも不許可となった事例(B類型不許可第2事例)
2026/08/06
事例の概要
従業員の在留資格の確認が不十分だったとして不法就労助長を問われる例があります。この類型の厳しさを示すのが、出入国在留管理庁が令和7年7月に公表した令和6年1月1日から6月9日までの事例集B類型(配偶者が正規在留外国人)不許可第2事例です。
違反態様は不法就労助長、端緒は通報です。在日期間は約16年5月で、違反期間の欄は斜線です。配偶者は「永住者の配偶者等」、婚姻期間は約2年5月、夫婦間に子はありません。刑事処分は入管法違反(不法就労助長)による罰金30万円の略式命令です。結論は不許可です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
本事例は令和5年改正入管法の施行(令和6年6月10日)前、在留特別許可が職権による恩恵的措置であった時期の判断です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 第2の2(2):配偶者の「永住者の配偶者等」は入管法別表第二の在留資格で、同号が「特に考慮する積極要素」とする家族関係に当たります。ただし婚姻期間は約2年5月で子もありません。
- 第2の3(イ):他の外国人の不法就労に関わる行為は「特に考慮する消極要素」として明示され、本事例の違反態様は正面から当たります。
- 第2の9:通報による発覚で、出頭申告の積極要素はありません。
結論を分けた一線はどこか
同じB類型の許可第2事例と並べると一線が見えます。許可された方は同じ不法就労助長・通報による発覚でしたが、婚姻期間は約29年9月、在日期間は約27年3月、成年の子2人があり、罰金は20万円でした。本事例は婚姻約2年5月、在日約16年5月、子はなく、罰金30万円です。
第2の3(イ)という強い消極要素を上回るには、それに見合う家族関係の厚みが求められると読めます。配偶者の在留資格が別表第二という有利な出発点があっても、婚姻期間と刑の重さの差が結論を分けたと読めます。
弁護士のコメント
第1に、条文の構造です。不法就労助長は入管法24条3号の4の退去強制事由(事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせる行為等を行い、唆し、又は助けた者)として扱われます。この号は行為そのものを退去強制事由とし、刑事処分や量刑を要件としていません。不起訴処分を獲得できていれば有罪の記録は避けられた余地がありますが、それだけでは退去強制事由該当性の問題が残ります。
第2に、故意・過失の要件論です。入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失は要件でないという運用が長年踏襲されてきました。在留カードを確認したが偽造を見抜けなかった場合にまで同じ扱いをするのが妥当かは、責任主義の射程を行政処分に及ぼす範囲の問題です。松村大介弁護士は不法就労助長の事案でこの論点を問う訴訟を係争中です。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
事例集は各年20件前後の抜粋にすぎません。不法就労助長では不許可事例が目につきますが、同じ年の同じ類型に許可された事例も掲載されています。当事務所が担当した不法就労助長の事案も、公表事例では不許可が並ぶ類型ながら在留特別許可を獲得し、なお違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の方を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主な注力分野としています。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案では、公表事例では不許可が並ぶ類型ながら在留特別許可を獲得し、あわせて退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を問う訴訟を係争中です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先の目標とします。松村弁護士は接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐します。刑事手続後の在留資格の更新・変更は提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
不法就労助長では、刑の軽重と退去強制事由該当性が別に判断されることを前提に、早い段階から両面の準備が必要です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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