他人のクレジットカード情報を使ったとして摘発されたら|カード犯罪の罪名の違いと、在留・再入国への影響
2026/08/04
「頼まれて買物をしただけ」「カードを預かって渡しただけ」。カード関連の事件でご相談を受けるとき、最初に伺うのはたいていこの言葉です。近年、不正に取得されたクレジットカード情報を用いた商品の購入や換金が、グループによる組織的な犯行として摘発される例が各地で報じられており、留学生や来日間もない方が末端で関与したとして立件される場面も見受けられます。この分野の難しさは、外形的には似た行為でも、成立する罪名が複数に分かれ、そのどれに落ち着くかで法定刑も在留への影響も変わってくる点にあります。個別の事件の当否ではなく、類型として何が問われるのかを整理いたします。
本記事の要点
- カード情報を不正に作出・供用する行為には、刑法163条の2(支払用カード電磁的記録不正作出等)が用意されており、法定刑は10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。
- 不正な電磁的記録を持つカードを所持していただけでも、刑法163条の3により処罰の対象となります。
- 店頭で商品を購入すれば詐欺(刑法246条)、通信販売等で機械的に決済すれば電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)、現金を引き出せば窃盗(刑法235条)と、行為の態様によって罪名が分かれます。
- 「渡されただけ」「頼まれただけ」という関与形態では、未必の故意の有無が最大の争点です。
- 1年以上の拘禁刑は、入管法5条1項の上陸拒否事由に関わり、将来の再入国にも影響します。
1. カード犯罪はどの条文で処罰されるのか
結論として、この分野は大きく二つの系統に分かれます。第一は、カードそのものに関する罪です。人の財産上の事務処理を誤らせる目的で、支払用カードを構成する電磁的記録を不正に作る行為は、刑法163条の2第1項により10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金とされ、これを人の財産上の事務処理の用に供する行為、譲り渡し・貸し渡し・輸入する行為も、同条各項で処罰されます。加えて、不正に作られた電磁的記録を持つカードを所持する行為は、刑法163条の3により5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象となります。準備段階の情報取得等についても、刑法163条の4に規定があります。
第二は、そのカードを使って財産を得る局面の罪です。店員に対してカードを提示して商品を受け取れば詐欺(刑法246条)、人を介さずシステム上で決済を完結させれば電子計算機使用詐欺(刑法246条の2)、ATMから現金を引き出せば窃盗(刑法235条)となります。いずれも法定刑の上限は10年以下の拘禁刑です。条文の詳細はe-Gov法令検索でご確認ください。
2. 罪名の切り分けが結論を左右する
一連の行為が全て成立すると評価されるのか、一部にとどまるのか。この切り分けは、単なる形式論ではありません。カードの作出に関与していたと認定されるか、既に作られたカードを使う場面から関与したにすぎないかによって、組織内での位置付けの評価が変わり、それが量刑に直結します。
また、所持の罪と使用の罪では、立証の構造も異なります。所持については、そのカードが不正な電磁的記録を持つものであるという認識が必要ですし、使用については、正当な権限がないことの認識が問われます。捜査機関が一括して「カード詐欺グループ」と構成しようとする場面でこそ、行為ごとに認識の有無を分解して検討する作業が意味を持ちます。
3. 「カードを渡されただけ」「買物を頼まれただけ」という主張
この類型では、末端の実行者が、カードの入手経路も換金先も知らされていないことが少なくありません。しかし、「知らなかった」と述べるだけでは足りないのが日本の刑事実務です。違法な仕事かもしれないと思いながら、それでも構わないと考えて行ったという程度の認識があれば、未必の故意が認められます。
したがって、争点は具体的な経過に移ります。誰から、どのような説明を受けてカードを受け取ったのか。報酬はいくらで、どのように支払われたのか。購入した商品はどこへ渡り、その指示はどのような形で行われたのか。署名を求められた際にどう振る舞ったのか。これらを、通信履歴・レシート・防犯カメラの記録といった客観資料と突き合わせて再構成する必要があります。日本語の読み書きに制約がある方の場合、示された条件の意味を理解できる状況になかったという事情が、認識の評価において実質的な意味を持つことがあります。
4. 被害回復・弁償の意義
カード関連の事件では、最終的な損失を負担するのがカード会社や加盟店であることが多く、被害者が個人として現れにくいという特徴があります。そのため、示談の相手方をどう設定するかという実務的な問題が生じます。
もっとも、被害の回復に向けた行動が処分の判断に影響することは変わりません。利用額に相当する金員の返還、換金された商品の返還への協力、資力に応じた分割弁済の申出、贖罪寄付といった選択肢を、事案に応じて組み立てます。関与が末端にとどまり、利得が限定的であったことを裏付ける資料と併せて示すことで、起訴猶予による終局の可能性が現実的なものになります。
5. 在留資格と再入国への影響
入管法24条は退去強制事由を号ごとに書き分けています。この類型で中心となるのは4号リであり、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としています。同号は執行猶予が付された場合を除外していませんので、「拘禁刑2年、執行猶予4年」という判決であっても、退去強制事由に該当し得ます。薬物事犯を刑の重さを問わず対象とする同号チとは構造が異なりますが、カード犯罪の法定刑の水準からすれば、正式起訴に至った場合に1年を超える判決が現実的な射程に入る点は軽視できません。
さらに、退去強制を受けた場合には、その後の再入国が制限されます。入管法5条1項は上陸拒否事由を列挙しており、同項には、退去強制を受けた者について一定期間の上陸を拒否する規定のほか、1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者に関する規定が置かれています。日本での学業や就労を将来再開したいと考えておられる方にとって、この点は刑事処分そのものと同じ重みを持ちます。
なお、当事務所は、故意・過失の議論を刑事手続の中だけの問題とは考えておりません。松村大介弁護士は、退去強制事由の判断にも責任主義の射程が及ぶべきではないかという論点を、現在係争中の事案(事例D-2)で正面から問うています。刑事段階で認識の有無を丁寧に争っておくことは、その後の入管手続における主張の土台となります。
6. 初動で押さえておきたい3点
- 取調べには黙秘権があります。カードの入手経路について推測で語ることは、後に共犯者の供述と衝突し、かえって信用性を損ないます。
- 携帯電話の通信履歴、商品の受渡しに関する記録は、関与の範囲を画する資料です。削除は証拠隠滅と評価されかねません。弁護人に経緯を正確に伝えてください。
- 留学生の方の場合、身柄拘束の長期化それ自体が在籍に影響します。学校への対応を含め、刑事手続と在留手続を並行して設計する必要があります。
7. 当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に取り組んでおります。
国境をまたぐインターネット関連事案については、海外のSNSを用いて行われた侮辱被害につき、日本の警察と国際刑事警察機構(インターポール)の捜査を通じて刑事告訴が受理された事例がございます(事例F-1)。また、インターネット上の誹謗中傷被害について、解決金5,000万円で解決した事例もございます(事例F-2)。国外のサーバや事業者が関わる事案で、どのような資料をどの順序で確保すべきかという知見は、カード情報が国外から流入する類型の弁護活動にも通じます。
末端で関与したとされる方の弁護としては、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、指示役からの欺罔的・脅迫的な状況や犯意の不存在といった主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます(事例B-1)。
当事務所の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携してワンストップで対応いたします。
外国人刑事事件の弁護活動は、執行猶予の獲得を最終目標とすべきではありません。当事務所は、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護方針を組み立てます。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
8. おわりに
カードは、財布の中では小さな一枚です。しかしその一枚に記録された情報は、他人の生活と信用に直結しています。だからこそ日本の刑法は、使う場面だけでなく、作る場面、持つ場面まで細かく網をかけています。関与が末端であったのなら、その事実は、感想としてではなく、経過と資料によって語られなければなりません。ご本人にもご家族にも、それを整理する時間が必要です。早い段階でのご相談をお勧めいたします。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------