売春防止法違反と犯罪収益の隠匿で逮捕されたら|場所の提供・あっせんと、在留資格への影響
2026/08/04
報道によれば、県警が、マンションの一室を売春の場所として提供したとして中国籍の男女3人を売春防止法違反の疑いで逮捕し、その後、売上金を郵便で発送させて犯罪収益を隠匿したとして、組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)の疑いで再逮捕したとされています。また、短期滞在の在留資格で入国した女性らに売春をあっせんしたとして、中国籍の男女6人が逮捕されたとの報道もありました。この類型の特徴は、最初の逮捕で終わらないことにあります。売上金の流れが解明されるにつれて別罪が積み上がり、当初「店の手伝いをしていただけ」と考えていた方が、組織犯罪の一員として扱われていく。日本で働く中国籍の方や、その勤務先の関係者に向けて、法律の構造と在留への影響を整理いたします。
本記事の要点
- 売春防止法は、売春そのものを処罰するのではなく、勧誘・周旋(あっせん)・場所の提供・売春をさせる業といった周辺行為を段階的に処罰する構造をとっています。
- 場所の提供を業として行った場合や、売春をさせる業を営んだ場合は、法定刑が格段に重くなります。
- 売上金の発送・分散・名義の付替えは、組織的犯罪処罰法10条の犯罪収益等隠匿として別罪を構成し、本罪より重く扱われる場面があります。
- 従業員・管理担当・部屋の名義人など末端で関与した方についても、認識の程度によって共犯として立件され得ます。
- 在留資格をお持ちの方は、資格外活動(入管法19条)と、1年を超える拘禁刑に関する入管法24条4号リの双方が問題になります。
1. 売春防止法は何を処罰しているのか
結論として、同法は売春した本人を処罰の対象とせず、その周辺で利益を得る行為を段階的に処罰しています。具体的には、公衆の目に触れる方法での勧誘(5条)、売春の周旋すなわちあっせん(6条)、困惑等による売春の強制(7条)、対償の収受(8条)、場所の提供(11条)、売春をさせる業を営む行為(12条)といった規定が置かれています。
このうち実務上重いのは、11条2項の業としての場所提供と、12条の売春をさせる業です。前者は7年以下の拘禁刑及び罰金、後者は10年以下の拘禁刑及び罰金と定められており、単発の周旋(6条1項)とは法定刑の水準が大きく異なります。したがって、部屋を一度貸したにとどまるのか、反復継続する営業の一部であったのかという評価が、量刑を左右する分岐点になります。条文の詳細はe-Gov法令検索でご確認ください。
2. なぜ犯罪収益の隠匿が別に立件されるのか
報道された事案では、売上金を郵便で発送させていた点が、犯罪収益等隠匿として再逮捕の理由になったとされています。組織的犯罪処罰法10条は、犯罪収益等の取得・処分につき事実を仮装し、又は犯罪収益等を隠匿する行為を、5年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金又はその併科によって処罰しています。
ここで注意すべきは、この罪が本体の犯罪とは独立に成立するという点です。金銭を小分けにして送る、他人名義の口座を経由させる、帳簿上は別の売上として計上する。こうした行為は、実行者の意識としては「上に届けただけ」であっても、資金の出所を分からなくする行為として評価され得ます。しかも、隠匿の態様が組織性を示す事情として扱われ、本体の売春防止法違反についての量刑判断にも波及します。
3. 末端で関与した方の立場
店舗の受付、送迎、清掃、スケジュールの管理、部屋の賃貸借契約の名義人。これらの立場で関与した方から、「自分は雇われていただけで、経営の中身は知らない」というご説明を受けることがあります。
法的には、当該業務が売春の営業を成り立たせる上でどのような機能を果たしていたか、そしてそれを認識していたかが問われます。報酬の体系が売上に連動していたか、指示系統のどこに位置していたか、客とのやり取りに関与していたか、といった事情が判断材料になります。逆に、業務の内容が形式的な事務に限られ、営業の実態を知る立場になかったことを裏付ける資料があれば、共犯性を争う余地は残ります。この点も、捜査の早い段階で整理しなければ、供述の積み重ねによって構図が固まってしまいます。
4. 在留資格への影響
入管法24条は退去強制事由を号ごとに書き分けており、どの号に接続するかで結論が変わります。この類型で問題となるのは、まず4号リです。同号は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、執行猶予が付された場合を除外していません。売春をさせる業や業としての場所提供は法定刑が重く、正式起訴に至れば1年を超える判決が現実的な射程に入りますので、執行猶予が付いても在留を維持できない事態が生じ得ます。
次に、資格外活動の問題があります。技術・人文知識・国際業務や経営・管理といった在留資格は、許可された活動の範囲でのみ収入活動を認めるものです(入管法19条)。届け出た事業内容と実際の活動が乖離していた場合には、資格外活動として同法73条の対象となり、また24条4号ハの退去強制事由や、在留資格の取消し(同法22条の4)が問題となります。経営・管理の在留資格をお持ちの方の場合、事業の実体そのものが審査対象となる点にも注意が必要です。
なお、当事務所は、故意・過失の議論を刑事手続の内部にとどめて考えておりません。松村大介弁護士は、退去強制事由の判断にも責任主義の射程が及ぶべきではないかという論点を、現在係争中の事案(事例D-2)で正面から問うています。名義を貸したにすぎない方、事業の実態を知らされていなかった方にとって、この論点は将来の入管手続における主張の基礎となり得ます。
5. 不起訴処分を最優先とする理由
外国人の方の弁護活動においては、執行猶予の獲得を最終目標に据えるべきではありません。前記のとおり、1年を超える拘禁刑は執行猶予付きでも退去強制事由に該当し得るからです。当事務所は、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標とし、関与の実態と認識の限界を客観資料によって示すこと、営業への寄与の程度を具体的に切り分けること、再発防止の体制を整えることに、勾留期間中の活動を集中させます。
6. 初動で押さえておきたい3点
- 取調べには黙秘権があります。組織の全体像を尋ねられた際、推測を交えて答えることは避けてください。伝聞と推測の混じった供述は、後に共犯者の供述と衝突し、信用性を損ないます。
- 事業に関する契約書・賃貸借契約・給与明細・業務日報は、関与の範囲を画する重要な資料になります。廃棄せず、弁護人に提示してください。
- 勤務先の関係者が多数関与する事案では、供述の順序が結論を左右します。誰がどのような立場で語るかを見誤らないため、早期に独立した弁護人を選任することが重要です。
7. 当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に取り組んでおります。
複数名が関与し、組織性が争点となる事案については、裁判員裁判対象事件や、世界的に報道された事件を含む国際刑事事件への対応経験を重ねてまいりました(事例E-1)。組織の内部でどの立場にあったかを、証拠に即して腑分けする作業は、この類型の弁護活動の中核をなします。
事業体の内部関係が背景にある事案については、外資系企業の支配権紛争において依頼者側の勝訴を得た経験もございます(事例H-2)。誰が実質的に事業を支配していたのかという問題は、刑事事件においても、関与の程度を評価する上で意味を持ちます。
入管手続の面では、在留資格を失って不法滞在で逮捕・起訴された方について、婚姻と認知の手続を当局との交渉によって実現し、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況下でも、過去の許可事例の分析を踏まえて在留特別許可を獲得した事例がございます(事例D-1)。
当事務所の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携してワンストップで対応いたします。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
8. おわりに
この類型で最も多い誤解は、「自分が直接手を出したわけではないから軽い」というものです。しかし法律は、周辺で利益を得る行為と、その利益の流れを覆い隠す行為を、正面から処罰の対象にしています。関与が末端であるという主張が意味を持つのは、それが具体的な事実によって裏付けられたときだけです。事件の全体像が固まる前に、自分の位置を正確に説明する準備を始めてください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------