舟渡国際法律事務所

天然記念物のオカヤドカリを捕獲して摘発されたら|「知らなかった」で済むのか、在留と再入国への影響

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天然記念物のオカヤドカリを捕獲して摘発されたら|「知らなかった」で済むのか、在留と再入国への影響

天然記念物のオカヤドカリを捕獲して摘発されたら|「知らなかった」で済むのか、在留と再入国への影響

2026/08/04

南西諸島の海岸でヤドカリを大量に持ち帰ったとして、中国籍の方が摘発される事案が、ここ数年繰り返し報じられています。報道によれば、2025年には約5,200匹・160キロ相当、2026年6月にも12キロを超える量が押収され、いずれも国の天然記念物であるオカヤドカリであったとされています。摘発された方が「天然記念物だとは知らなかった」と述べたとの報道もありました。旅行先での何気ない行為が刑事事件となり、さらに日本への再入国にまで影を落とす。外国人の方にとって、これほど見落とされやすい類型はそう多くありません。日本にいるご家族・ご友人から突然の連絡を受け、どう動けばよいか分からずにこの記事にたどり着かれた方に向けて、手続の流れと押さえるべき点を整理いたします。

本記事の要点

  • オカヤドカリは1970年に国の天然記念物に指定されており、無許可での捕獲・採取は文化財保護法違反となります。
  • 法定刑には罰金のほか拘禁刑も含まれます。罰金の略式命令で終わった例も報じられていますが、刑事手続が終わっても在留の問題は残ります。
  • 罰金刑であれば入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)には直ちに該当しません。もっとも、次回来日時の上陸審査や在留資格の更新・変更の審査で不利に働く可能性があります。
  • 「知らなかった」という言い分は、故意の有無という形で法的な意味を持ち得ます。しかし放置すれば単なる弁解として処理されます。証拠に基づく組立てが必要です。
  • 短期滞在の方は帰国予定との関係で時間的余裕がなく、最初の数日の対応が結果を大きく左右します。

1. 天然記念物の捕獲は、どの法律に触れるのか

オカヤドカリは、1970年に国の天然記念物として指定された生き物です。天然記念物については、その現状を変更し、又は保存に影響を及ぼす行為をしようとする場合、文化庁長官の許可を受けなければならないとされており(文化財保護法125条1項)、無許可でこれを行った者に対する罰則が定められています(同法196条1項。5年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金。条文の詳細はe-Gov法令検索でご確認ください)。

つまり、海岸で見かけた生き物を土産物として持ち帰る、あるいは販売目的で採取するという行為が、そのまま刑罰法規に触れる構造になっています。報道された事案では、中国や台湾でペットとして高値で取引される種であったことから、営利目的が疑われた点も捜査の焦点になったとみられます。加えて、生きた動物を国外へ持ち出す場面では、動物検疫や輸出に関する別個の規制が問題となることもあり、事案によっては関税法違反等が併せて検討されます。

2. 摘発後の刑事手続はどう進むのか

逮捕された場合、警察の段階で最大48時間、検察官の段階で最大24時間、その後の勾留で原則10日、延長でさらに10日という枠組みの中で身柄拘束が続き得ます。この類型では、押収された個体数・重量、採取に要した日数、販売先とのやり取りの有無といった客観的な事情から、営利性と計画性が評価されます。

実務上は、初犯で数量が限られ、反省と再発防止が明確な場合に、罰金の略式命令によって終局する例が報じられています。他方、数量が突出している場合や複数人での組織的な採取が疑われる場合には、正式起訴の可能性が高まります。いずれに転ぶかは、勾留期間中にどのような資料が捜査機関と検察官に届いているかによって変わります。ここが弁護活動の勝負どころです。

3. 「知らなかった」という言い分の扱い

報道では、摘発された方が天然記念物であることを知らなかったと述べたとされています。この点は、法的には故意の有無という論点に接続します。もっとも、日本の刑事実務では、対象物の性質についての認識は、現場の看板・注意書きの有無、採取の態様、下調べの痕跡、同行者との会話といった間接事実から推認されます。したがって、「知らなかった」と述べるだけでは足りず、なぜ知り得なかったのかを裏付ける事情を、具体的な資料とともに示す必要があります。

なお、当事務所は、この「故意・過失の有無」という視点を、刑事手続の中だけの問題とは考えておりません。松村大介弁護士は、退去強制事由の判断においても責任主義の射程が及ぶべきではないかという論点を、現在係争中の事案(後記の事例D-2)で正面から問うています。刑事段階で故意を丁寧に争っておくことは、その後の入管手続における主張の基礎にもなります。

4. 在留・再入国への影響

罰金刑にとどまる限り、入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者)には該当しません。薬物や銃刀法違反を対象とする同号チにも当たりません。この点だけを見れば、直ちに退去強制の対象となる類型ではないといえます。

しかし、影響がないわけではありません。第一に、既に在留資格をお持ちの方については、在留期間の更新・在留資格の変更の審査において、素行が善良であることが求められます(出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」)。罰金前科は、この素行要件の評価に影響し得ます。第二に、短期滞在で来日された方については、次回来日時の上陸審査が実質的な関門となります。入管法5条1項は上陸拒否事由を列挙していますが、罰金前科がその形式的要件に当たらない場合であっても、審査の過程で退去命令や再度の審査が行われることがあります。「罰金で済んだから、また来られる」と即断できる話ではないのです。

5. 初動で押さえておきたい3点

  • 取調べには黙秘権があります。言語の壁がある中で、記憶が曖昧なまま調書に署名することは避けてください。一度作成された供述調書を後から覆すのは容易ではありません。
  • 弁護人の選任は早いほど有効です。当番弁護士の制度もありますが、在留への影響まで見据えた活動を求めるのであれば、外国人事件の経験を有する私選弁護人の選任をご検討ください。
  • 通訳の質が結果を左右します。捜査機関が手配する通訳人は、必ずしも法律用語の専門家ではありません。ニュアンスの取り違えが調書に残ると、後の公判で致命傷になります。

6. 当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続に取り組んでおります。

薬物事犯の分野では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底的な分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した実績がございます(事例A-1)。営利目的の有無や対象物についての認識を争う構造は、天然記念物事案における故意・営利性の争い方とも通じるものです。また、裁判員裁判対象事件や、世界的に報道された事件を含む国際刑事事件への対応経験も重ねてまいりました(事例E-1)。

入管手続の面では、観光目的で来日された方が在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案において、婚姻と認知の手続を当局との交渉によって実現し、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況下でも、過去の許可事例の分析を踏まえて在留特別許可を獲得した事例がございます(事例D-1)。刑事手続の後に入管手続が控えている類型では、両者を一体として設計する必要があります。

当事務所の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携してワンストップで対応いたします。

なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

7. おわりに

海辺の生き物を持ち帰るという、日常の延長にある行為が、日本では刑罰法規に触れ、在留にまで影響し得る。この落差こそが、外国人事件の難しさです。だからこそ、事件が小さく見える段階でこそ、正確な見立てと迅速な対応が必要になります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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