逮捕された後、学校や勤務先にはどう対応すべきか|退学・解雇と、所属機関の届出義務が在留に及ぼす影響
2026/08/03
ご家族が逮捕されたとき、多くの方が最初に思い浮かべるのは、刑事処分がどうなるかということです。しかし外国籍の方の場合、それと同じ重さで考えなければならないことがもう一つあります。学校や勤務先との関係が切れてしまうと、刑事処分の結果いかんにかかわらず、在留資格の土台そのものが崩れてしまうという問題です。本記事は、留学、技術・人文知識・国際業務、技能実習といった在留資格をお持ちの方が身柄を拘束された場合に、学校・勤務先への対応をどう組み立てるべきかを整理いたします。
本記事の要点
- 在留資格の多くは、特定の学校・企業に所属して活動することを前提としている
- 中長期在留者には、所属機関に関する届出義務がある(入管法19条の16)
- 所属機関の側にも、受入れ状況を届け出る仕組みがある
- 退学・解雇によって活動を3か月以上行わない状態が続くと、入管法22条の4の在留資格取消しの対象となり得る
- 刑事事件の解決と、所属先の維持又は次の受入れ先の確保は、同時に進める必要がある
1. 在留資格は「活動」に紐付いている
留学の在留資格は教育機関で教育を受ける活動を、技術・人文知識・国際業務の在留資格は特定の業務に従事する活動を、それぞれ前提としています。身柄を拘束されている間は、当然ながらその活動を行うことができません。短期間であれば問題となりませんが、退学処分や解雇によって所属先を失った状態が続くと、話は変わります。
入管法22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていないことを、在留資格の取消事由の一つとして定めています。ただし、正当な理由がある場合は除かれます。刑事手続による身柄拘束や、次の就職先を探している期間が正当な理由に当たるかどうかは、個別の事情によって判断されます。
2. 所属機関に関する届出義務
中長期在留者は、所属する教育機関や勤務先に変更が生じた場合、14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る義務を負います(入管法19条の16)。退学・解雇が決まった場合も、この届出の対象です。身柄を拘束されているご本人が自ら届け出ることは困難ですので、弁護人がご本人の意思を確認した上で、対応を検討することになります。届出を怠ることは、それ自体が不利益に評価される要因となります。
3. 学校・勤務先への連絡は、誰がどう行うか
ご家族が独断で学校や会社に連絡することは、慎重にご検討ください。まだ嫌疑の段階であるにもかかわらず、事実関係が固まる前に事件の内容が伝わってしまうと、退学・解雇の判断が早まることがあります。他方、無断欠席・無断欠勤が続けば、それだけで処分の理由となります。
実務上は、弁護人が代理人として、必要最小限の事実(身柄を拘束されている事実、現在の手続の段階、見通し)を伝え、処分の判断を留保していただくよう申し入れる方法を取ります。特に留学生の場合、日本語学校や専門学校は、在籍管理の観点から出入国在留管理庁への報告義務を負っており、学校側にも事情を丁寧に説明する必要があります。
4. 解雇・退学が避けられない場合
処分が避けられない場合には、次の受入れ先の確保に速やかに移ります。就労資格の場合、転職先が決まれば、所属機関の変更の届出と、必要に応じて就労資格証明書の交付申請を行います。留学の場合、別の教育機関への入学が認められれば、活動の継続が説明可能となります。ここは提携の行政書士と連携し、刑事手続と並行して進める部分です。
5. 刑事処分と在留は、別々の判断である
不起訴処分を得たとしても、それだけで在留資格が安泰になるわけではありません。逆に、罰金や執行猶予で終わったとしても、直ちに退去強制となるとは限りません。刑事処分は入管法24条4号リ(無期又は1年を超える拘禁刑)や4号チ(薬物関係等)といった号ごとの要件を通じて在留に影響し、他方で在留資格取消しや更新不許可は、活動の実態や素行という別の基準で判断されます。二つの手続を別々に見据えて手を打つことが必要です。
当事務所は、そもそも退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた入管実務そのものに疑問を投げかけ、責任主義の射程を行政処分に及ぼすべきであるとの主張を掲げた訴訟を係争中です(事例D-2)。刑事段階で残した記録が、入管手続での主張の土台になるという構造は、この類型でも変わりません。
6. 当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、刑事弁護と入管手続を一体のものとして扱う方針を採っております。
- 事例B-1:特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代女性について、主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。若い方の事件では、身分の回復と生活の立て直しまでを見据えた活動が必要になります。
- 事例D-1:在留資格を失った状態で逮捕・起訴された方について、当局との交渉を通じて身分関係の手続を実現し、過去の許可事例を分析することで、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。
- 事例F-4:過去の逮捕報道・前科報道について、削除に成功した事例がございます。社会復帰の局面では、就労・就学の障害となる情報への対応も、弁護士の仕事の一部です。
当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。在留資格の届出・更新・変更については、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご対応いたします。
7. 結語
刑事事件が終わったときに、帰る場所が残っているかどうか。これは、判決の内容と同じくらい、その後の人生を左右します。学校や会社との関係は、身柄が拘束されている間にも静かに動いています。だからこそ、刑事弁護の初日から、所属先への対応を並行して考えることに意味があるのです。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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東京を中心に刑事事件の弁護
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