舟渡国際法律事務所

「地下銀行」と呼ばれる送金の何が罪になるのか|銀行法・資金決済法違反と在留資格への影響

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「地下銀行」と呼ばれる送金の何が罪になるのか|銀行法・資金決済法違反と在留資格への影響

「地下銀行」と呼ばれる送金の何が罪になるのか|銀行法・資金決済法違反と在留資格への影響

2026/08/03

中国と日本との間で、正規の金融機関を通さずに資金を移動させる仕組みは、報道では「地下銀行」と呼ばれます。日本国内で人民元又は日本円を受け取り、中国国内の口座から相当額を支払う形で、国境をまたぐ現金の移動を伴わずに送金を完結させる方法が典型です。手数料が安く、手続も速いため、留学生の学費、家族への仕送り、事業の決済など、ごく日常的な目的で利用されている実態があります。しかし、この仕組みに関与すると、日本では刑事事件になり得ます。本記事では、利用した側と関与した側の双方について、法的な位置付けを整理いたします。

本記事の要点

  • 為替取引を業として行うには、銀行免許又は資金移動業の登録が必要である
  • 無免許・無登録で送金を反復継続すると、銀行法61条、資金決済法107条により処罰され得る
  • 資金の出所が犯罪収益であれば、組織的犯罪処罰法違反が重ねて問題となる
  • 1年を超える拘禁刑となれば、入管法24条4号リの退去強制事由に直結する
  • 単なる利用者であっても、事情次第では幇助や共犯を疑われることがある

1. なぜ「送金」が免許制なのか

銀行法2条2項は、為替取引を行うことを銀行業の一部と定めています。為替取引とは、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを引き受けることをいい、最高裁も同様の理解を示しています。この業務を営むには銀行免許が必要であり、免許を受けずに業として為替取引を行った場合、銀行法61条により処罰されます。少額の送金については、資金決済法に基づく資金移動業の登録という制度が用意されていますが、これも登録なしに行えば同法107条の処罰対象です。

免許制・登録制が採られているのは、預かった資金の保全、犯罪収益の移転防止、取引の追跡可能性を確保するためです。すなわち、この規制が守ろうとしているのは、利用者個人の利益にとどまらず、金融システムと犯罪対策という社会的な法益です。この点が、後述する示談の可否に関わってきます。

2. 「一度だけ友人の送金を手伝った」場合はどうか

処罰の対象は、業として、すなわち反復継続の意思をもって行う場合です。したがって、真に一回限りの、友人間の資金の立替えであれば、直ちに銀行法違反となるわけではありません。もっとも、捜査機関は、通信アプリの履歴、手数料の授受、複数人からの依頼の有無といった事実から、反復継続性を認定しようとします。「一度だけのつもりだった」という説明が通るかどうかは、客観証拠との整合次第です。

また、利用しただけの方についても、送金業者が犯罪収益を扱っていることを知りながら資金を託した場合には、組織的犯罪処罰法違反の共犯や幇助を疑われる余地があります。他方、通常の生活資金を、慣行に従って送っただけの方については、そのような認識は通常認められません。この線引きを証拠に基づいて明確にすることが、弁護活動の要になります。

3. 示談という解決が使いにくい類型であること

この類型は、特定の被害者が存在する犯罪ではありません。金融秩序という社会的法益を保護する規定であるため、被害弁償や示談によって非難可能性を解消するという手法が使えません。したがって、弁護活動は、関与の程度、反復継続性の有無、収受した利益の実態、資金の性質についての認識の不存在といった点を、証拠に基づいて具体的に示す方向に集中します。

4. 在留資格への影響

銀行法違反や資金決済法違反で1年を超える拘禁刑が言い渡されれば、入管法24条4号リの退去強制事由に該当します。罰金にとどまった場合でも、在留期間の更新審査において素行が問題とされる余地は残ります(入管法21条3項、在留資格の変更・更新のガイドライン第4項)。とりわけ、経営・管理の在留資格をお持ちの方の場合、事業の適正性そのものが審査対象となるため、影響は大きくなります。

5. 目標は不起訴処分に置く

当事務所は、この類型でも起訴前の不起訴処分獲得を第一目標として弁護方針を立てます。反復継続性の評価、収受した手数料の実態、組織的な関与の有無について、勾留期間中に証拠を整理し、検察官に対して意見書を提出します。生活の必要から慣行的な方法を選んだにすぎない方と、システムを運営して利益を得ていた方とを、同じ枠で評価させないことが重要です。

なお、当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた入管実務に対して、責任主義の射程を行政処分にも及ぼすべきであるとの主張を掲げ、訴訟を係争中です(事例D-2)。資金の性質についての認識を刑事段階で争い、その記録を残しておくことは、入管手続における主張の基礎となります。

6. 初動対応の三点

  • 黙秘権の行使:送金の回数や金額は膨大であり、記憶に頼った供述は矛盾を生みます。記録を確認してから話す順序を守ってください。
  • 早期の弁護人選任:関係者が多数に及ぶ類型であり、他の関係者の供述が固まる前の対応が重要です。
  • 通訳の質:中国の金融慣行と日本の規制の対応関係は、専門用語を含む複雑な説明を要します。制度の違いを理解した通訳の関与が不可欠です。

7. 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、中国籍の依頼者の刑事事件と入管手続を数多く取り扱ってまいりました。

  • 事例C-1:卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案において、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得いたしました。資金の流れを追跡し、その性質を明らかにする作業は、送金事案の弁護でも中核となります。
  • 事例H-2:外資系企業の支配権紛争において、依頼者側の勝訴を獲得いたしました。事業の実態と形式との関係を精査する視点は、事業性の有無が争われる場面に通じます。
  • 事例D-2:不法就労助長罪に問われ退去強制の危機に置かれた女性の救済のため、退去強制事由には故意・過失が不要とされてきた実務を覆すべく、責任主義の射程を問う訴訟を係争中です。

当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。刑事手続後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携してご対応いたします。

8. 結語

中国と日本の間で暮らす方にとって、資金を動かすことは生活の一部です。その手段が日本の法律にどう位置付けられているかを知らないまま、長年にわたって同じ方法を使い続けてきたという方も少なくありません。捜査が始まってからでも、関与の実態を正確に描き出すことはできます。どこまでが日常の延長で、どこからが事業だったのか、その線を一緒に確かめるところから始めさせていただきます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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