舟渡国際法律事務所

職場でのトラブルから傷害事件になってしまったら|技能実習生・就労資格の方と示談、そして在留への影響

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職場でのトラブルから傷害事件になってしまったら|技能実習生・就労資格の方と示談、そして在留への影響

職場でのトラブルから傷害事件になってしまったら|技能実習生・就労資格の方と示談、そして在留への影響

2026/08/03

職場での人間関係のもつれから、外国籍の従業員が同僚に暴行を加え、傷害の疑いで逮捕されたという報道は、残念ながら各地で繰り返し伝えられています。特に技能実習生の方の場合、住居と職場が一体となっており、逃げ場のない環境で緊張が蓄積しやすいという構造的な事情が指摘されています。本記事は、個別の事件を論評するものではなく、職場で起きた暴行・傷害事件について、刑事手続の見通しと、在留資格への影響を整理するものです。事件の重大性にかかわらず、被害に遭われた方の心情に配慮し、事案の詳細には立ち入りません。

本記事の要点

  • 傷害罪は15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金であり、幅の広い法定刑が定められている
  • 個人的法益に対する罪であるため、示談の成立が処分に与える影響が相対的に大きい
  • 他方、被害が重い場合や凶器が用いられた場合は、示談だけでは起訴を避けられないことがある
  • 1年を超える拘禁刑となれば入管法24条4号リの退去強制事由に直結する
  • 技能実習生の場合、事件により実習が中断すると、在留資格の基礎自体が失われる

1. 傷害事件の刑事手続の流れ

逮捕後、48時間以内に検察官へ送致され、そこから24時間以内に勾留請求の可否が判断されます。この72時間は、弁護人以外との面会が事実上できない時間帯であり、ご家族が最も不安を感じる期間です。勾留が決まると、原則10日間、延長されて最大20日間、身柄の拘束が続き、その満了時に起訴か不起訴かが判断されます。傷害事件では、この20日間のうちに被害者との示談が成立するかどうかが、結論を大きく左右します。

2. 示談交渉は、なぜ弁護人を通じて行うのか

被害者の連絡先は、通常、加害者側には知らされません。捜査機関は、弁護人に対してのみ、被害者の同意を得た上で連絡先を伝えます。したがって、ご家族が直接被害者に接触しようとすると、かえって罪証隠滅のおそれがあると評価され、勾留や接見禁止の判断に悪影響を与えかねません。示談は、必ず弁護人を通じて行ってください。

また、職場内の事件では、被害者と加害者が同じ会社に属しているため、会社の対応が示談の成否に強く影響します。受入れ機関や監理団体との関係を整理し、雇用契約の帰趨を見通した上で交渉を組み立てる必要があります。

3. 保護法益の違いを踏まえた見通し

傷害罪は、被害者個人の身体という個人的法益を侵害する罪です。この類型では、被害弁償と宥恕(被害者が加害者を許す意思を示すこと)によって、可罰的な違法性・非難可能性が個別的に解消される余地が広く認められています。これに対し、薬物事犯や入管法違反のように社会的法益・行政上の秩序を保護法益とする罪では、示談という概念がそもそも成立せず、別の弁護活動が必要になります。ご自身の事件がどちらの性質を持つのかを見極めることが、方針決定の出発点です。

4. 在留資格への影響|二つの経路

第一の経路は、退去強制です。入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由と定めています。傷害事件で1年を超える宣告刑となる場合は、被害の程度や凶器の使用の有無によっては十分にあり得ます。

第二の経路は、在留資格そのものの基礎の喪失です。技能実習の在留資格は、特定の実習実施者の下で実習を行うことを前提としています。事件によって実習が継続できなくなれば、たとえ刑事処分が軽く終わったとしても、在留資格の活動を行っていない状態が生じ、入管法22条の4の在留資格取消しの検討対象となり得ます。刑事事件の解決と、実習・就労の受け皿の確保は、同時に進めなければなりません。

5. 目標は不起訴処分に置く

当事務所は、この類型でも起訴前の不起訴処分の獲得を第一目標とします。傷害事件では、示談の成立、被害弁償、事件に至る経緯(職場での孤立、言語の壁、長時間労働等の背景事情)、再発防止の環境整備を検察官に対して具体的に示すことで、起訴猶予の判断を求めます。不起訴となれば有罪判決が存在しないため、24条4号リの適用の前提を欠きます。

なお、当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとされてきた入管実務に対し、責任主義の射程を行政処分にも及ぼすべきであるとの主張を掲げた訴訟を係争中です(事例D-2)。正当防衛や過剰防衛が問題となる職場内の事件では、刑事段階で行為の性質を丁寧に争っておくことが、後の入管手続でも意味を持ちます。

6. 初動対応の三点

  • 黙秘権の行使:職場内の事件では、双方に言い分があるのが通常です。相手方の供述が先に固まる前に、こちらの言い分を整理する必要があります。弁護人と方針を決めるまでは、慎重に対応してください。
  • 早期の弁護人選任:示談交渉には時間が必要です。勾留の満了間際に着手しても間に合いません。
  • 通訳の質:暴行の態様、傷害の程度、当時の心理状態は、いずれも微妙な表現を伴います。捜査機関の通訳を介した調書の表現が、後の量刑判断に残ります。

7. 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。

  • 事例E-1:裁判員裁判対象事件や世界的に報道された重大事件を含め、国際刑事事件に多数対応してまいりました。身体犯の弁護では、事件に至る経緯の丁寧な再構成が量刑を左右します。
  • 事例G-3:長期にわたるストーカー行為の被害者代理人として、1,000万円の解決金を獲得いたしました。被害者側の立場を数多く経験してきたことは、加害者側の示談交渉において、被害感情の在り処を正確に理解する上で役立っております。
  • 事例D-1:在留資格を失った状態で逮捕・起訴された方について、困難な立証環境の中で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析して、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。

当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関側の通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。刑事手続後の在留資格の更新・変更、転職に伴う手続については、提携の行政書士と連携してご対応いたします。

8. 結語

職場での事件は、その日その場の出来事だけを切り取れば、弁解の余地がないように見えることがあります。しかし、その日に至るまでに何が積み重なっていたのかを示すことは、量刑の場面でも、示談の場面でも、確かに意味を持ちます。ご家族が最初にすべきことは、被害者に謝罪の電話をかけることではなく、弁護人を立てて、正しい手順で謝罪と賠償を届けることです。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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