舟渡国際法律事務所

住所を偽って届け出ると何罪になるのか|虚偽の転入届・住居地届出と在留資格取消しのリスク

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住所を偽って届け出ると何罪になるのか|虚偽の転入届・住居地届出と在留資格取消しのリスク

住所を偽って届け出ると何罪になるのか|虚偽の転入届・住居地届出と在留資格取消しのリスク

2026/08/03

実体のない住所を届け出て住民票を作成させたとして、外国籍の方が電磁的公正証書原本不実記録等の疑いで逮捕されたという報道が続いています。国際的な犯罪組織の関係者が、日本国内での活動の拠点を整えるために虚偽の転入届を提出していたとされる事案も報じられました。他方、実際にご相談を受けるのは、そうした組織性のある事案ばかりではありません。「友人の家に住民票だけ置かせてもらった」「引っ越したが届出を出し忘れた」といった、生活の延長線上での届出の不備が、思わぬ形で刑事事件や在留資格の問題に発展することがあります。

本記事の要点

  • 実体のない住所を届け出て住民票に記録させると、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)に問われ得る
  • 住民基本台帳法にも虚偽届出に対する過料・罰則の定めがある
  • 中長期在留者には、入管法上、住居地の届出義務が別に課されている
  • 住居地の届出を怠り、又は虚偽の届出をした場合、入管法22条の4の在留資格取消しの対象となり得る
  • 刑事事件と在留資格取消しは別々の手続であり、片方が終わっても他方は残る

1. 住民票と入管への届出は「別の制度」である

まず整理しておきたいのは、市区町村への住民登録(住民基本台帳法)と、出入国在留管理庁への住居地の届出(入管法19条の7以下)が、それぞれ別の制度だという点です。中長期在留者の場合、住居地を定めてから14日以内に届け出る義務があり、住民異動届の提出をもって入管への届出とみなされる仕組みが取られていますが、法的な根拠は二本立てです。したがって、届出の不備は、住民基本台帳法上の問題と、入管法上の問題の双方を生じさせます。

2. 虚偽の転入届が刑事事件になる理由

住民票は、公務員が職務上作成する電磁的記録であり、権利義務に関する公正証書の原本と同視される電磁的記録に当たります。したがって、実体のない住所を申告して不実の記録をさせた場合、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)が成立し得ます。法定刑は5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。さらに、その住民票を利用して各種の証明書を取得すれば、不実記録電磁的公正証書原本供用罪(同条2項)が問題となります。

捜査機関がこの罪名を用いるのは、多くの場合、背後にある別の目的を捉えるためです。犯罪グループの拠点確保、口座開設、携帯電話の契約、各種の給付の受給といった目的が疑われる場合、住所の虚偽記載が入口の犯罪として立件されます。

3. 「頼まれて住所を貸した」側の責任

ご相談の中で多いのが、自らが引っ越したのではなく、知人に自宅の住所を使わせたというケースです。届出をしたのは知人本人であっても、事情を知って住所の使用を承諾していた場合には、共犯としての責任が問われ得ます。もっとも、ここでも問われるのは認識の内容です。単に「短期間泊まる予定だと聞いていた」のか、「住民票を置くと分かっていた」のか、「その住民票が犯罪に使われると分かっていた」のかによって、評価は大きく変わります。この認識の範囲を証拠に基づいて丁寧に切り分けることが、弁護活動の中心となります。

4. 在留資格取消しという、もう一つの手続

刑事処分とは別に、入管法22条の4は、在留資格の取消事由を号ごとに定めています。その中には、住居地の届出をしないこと、虚偽の住居地を届け出ることが含まれています。刑事事件として不起訴となった場合でも、入管が独自に取消手続を進めることがあり得ます。取消しがなされれば、出国のための期間が指定されるか、場合によっては直ちに退去強制手続に移行します。

この点に関連して、当事務所は、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとしてきた入管実務そのものに対し、責任主義の射程を行政処分にも及ぼすべきであるとの主張を掲げた訴訟を係争中です(事例D-2)。届出の懈怠に正当な理由があった場合、あるいは虚偽の認識がなかった場合に、それが行政処分の場面でどこまで考慮されるべきかは、まさに現在進行形の論点です。

5. 不起訴を目指すことの意味

住所の届出に関する事件は、罰金で終わることも少なくありません。しかし、罰金であっても前科は残り、在留期間の更新審査において素行が問題とされる余地が残ります(入管法21条3項、在留資格の変更・更新のガイドライン第4項)。「執行猶予が付いたから」「罰金で済んだから」という説明で安心してしまうと、数か月後の更新申請で足元をすくわれます。当事務所は、この類型でも起訴前の不起訴処分獲得を第一目標とし、届出に至った経緯、生活実態、是正の状況を検察官に対して具体的に示す活動を行います。

6. 初動で押さえておきたい三点

  • 黙秘権の行使:住所と生活実態の話は、記憶があいまいなまま話すと、後から矛盾を突かれます。まず記録を確認してから話す順序を守ってください。
  • 早期の弁護人選任:刑事手続と並行して、入管手続への波及を見据えた活動が必要な類型です。
  • 通訳の質:住民票、在留カード、住居地届出といった制度用語は、中国の戸籍制度と一対一で対応しません。制度の違いを踏まえた訳出ができる通訳の関与が重要です。

7. 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)は、刑事弁護と入管手続を一体のものとして扱う方針を採っております。

  • 事例D-1:在留資格を失った状態で逮捕・起訴された方について、当局との交渉により婚姻・認知の手続を実現し、公的書類の入手が極めて困難な状況の中で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析して、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。
  • 事例D-2:不法就労助長罪に問われ、退去強制の危機に置かれた女性の救済のため、退去強制事由には故意・過失が不要とされてきた実務を覆すべく、責任主義の射程を問う訴訟を係争中です。
  • 事例H-1:虚偽の株主総会決議による代表取締役解任事件において、決議の不存在を主張し、東京地裁・東京高裁のいずれにおいても勝訴いたしました。書面の外形と実体との乖離を証明する作業は、住所の実体を争う場面にも通じます。

当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、依頼者のために動く通訳をご利用いただけます。刑事手続後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携してワンストップでご対応いたします。

8. 結語

住所の届出は、日々の生活の中では小さな手続に見えます。しかし、外国籍の方にとっては、その一枚の届出が在留資格の土台に触れています。届出に不備があると気付かれた段階でご相談いただければ、刑事事件になる前に是正できる場合もございます。すでに捜査が始まっている場合でも、経緯を正確に整理することで、結論は変わり得ます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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