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在留特別許可|公表事例は「裁量基準」の一種、しかし公表されていない許可もある

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在留特別許可|公表事例は「裁量基準」の一種、しかし公表されていない許可もある

在留特別許可|公表事例は「裁量基準」の一種、しかし公表されていない許可もある

2026/08/01

退去強制の手続に入っても、そこで道が閉ざされるわけではありません。法務大臣(地方出入国在留管理局長)は、一定の場合に在留を特別に認めることができます。見通しを立てるとき、実務では出入国在留管理庁が公表している事例集が手がかりになります。もっとも、公表事例に似た例が見当たらないことは、許可の見込みがないことを意味しません。本記事では、制度の骨格と、公表事例の使い方、そしてその限界を整理します。

在留特別許可の制度概要

入管法50条1項は、退去強制対象者に該当する場合であっても、法務大臣が在留を特別に許可することができると定めています。対象となるのは、①永住許可を受けているとき、②かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき、③人身取引等により他人の支配下に置かれて在留するとき、④難民又は補完的保護対象者の認定を受けているとき、⑤その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるときです。多くの事案は⑤で判断されます。

令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により、それまで職権による恩恵的措置とされてきた在留特別許可に、申請の手続が設けられました。あわせて、考慮すべき事情が条文に明示されています(50条5項)。在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間とその間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などです。書面を作るときは、この各号を一つずつたどる構成が基本になります。

もっとも、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合など一定の類型については、「在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」があるときに限って許可されます(同項ただし書)。また、退去強制令書が発付された後は申請ができません(同条3項)。申請の機会は口頭審理と異議の申出の段階にあり、早い段階でご相談いただく意味は、ここにあります。

公表事例は「裁量基準」の一種として使える

出入国在留管理庁は、許可された事例と許可されなかった事例を年度ごとに公表しています。これは、行政自身が「許可が相当だ」と判断した先例の集まりですから、条文やガイドラインの下でどこに線が引かれてきたかを示す、事実上の判断基準として機能します。

公表事例には、在日期間や婚姻期間の終期が特別審理官の判定時として記載されています。最終的に許可・不許可を決めるのは法務大臣であるにもかかわらず、期間の終期が判定時に置かれていることは、実際の判断が現場の手続の中で形づくられていることをうかがわせます。判断が現場の運用として積み重なっているのであれば、公表事例はその運用を映したものとして読むことができます。

そうであれば、ご本人の事情に近い許可事例を複数選び出し、本件と一つずつ対照する作業には意味があります。同じような事情がありながら本件だけが許可されないのであれば、合理的な理由のない異なる取扱いであり、法の下の平等(憲法14条1項)の観点からも問題があるという主張につながります。

ただし、すべての事例が公表されているわけではない

ここで注意しておきたいことがあります。公表事例は、その年に判断されたすべての事案ではありません。一部を抜き出し、個人が特定されないよう抽象化したものであり、件数も多くはありません。

したがって、公表事例から読み取れるのは「傾向」であって、「境界線」ではありません。似た許可事例が見当たらないことは、その類型で許可が出ていないことを意味しません。公表されていないところに、傾向から外れた許可が現に存在します。

実例 不法就労助長の事案で在留特別許可を得たこと

その一例が、当事務所が担当した不法就労助長の事案です。

公表事例を通覧すると、不法就労助長は、薬物事犯や売春事犯と並ぶ社会的法益の侵害類型として扱われ、不許可事例が数多く並びます。この傾向だけを見れば、許可は難しいという見立てになります。

しかし、条文に立ち返ると、不法就労助長(入管法24条3号の4)は、50条1項ただし書が挙げる原則不許可の類型に入っていません。ただし書が列挙するのは24条3号の2、3号の3、4号ハ及びオからヨまでであり、3号の4はそこにありません。法律の建て付けとしては、通常の枠組みの中で総合的に考慮される類型なのです。

当事務所が担当した事案でも、ご本人に採用の権限がなかったという業務の実態、在留カードの原本を確認していた経緯、コロナ禍による確認方法の制約といった事情を一つずつ示し、公表事例の傾向にかかわらず、在留特別許可を得ています。

なお、同じ方について、退去強制事由に該当するとした違反認定処分そのものの取消しを求める訴訟を、現在も最高裁判所で継続して担当しています(結果を予断するものではございません)。在留が認められても、退去強制事由に該当するという判断が残る限り、その後の在留資格の更新や永住許可の場面に影響が及びます。在留が確保された後も、争う実益は残ります。

諦めずに、理論を組み立てること

公表事例の傾向は、出発点であって結論ではありません。条文の文言、改正の経緯、立法時の議論、行政の内部資料や研修教材、隣接する類型との均衡、憲法上の要請。こうした材料を一つずつ積み上げて主張を組み立てれば、傾向から外れた結論を得られることがあります。

「前例が見当たらないから無理だ」と言われて手続を終えてしまうことが、最も惜しい選択です。まずは事実を整理し、使える材料を洗い出すところから始めてください。

当事務所のご案内

当事務所は、入管庁公表事例の年度横断的な分析と、刑事から入管までを一貫して見据える弁護に注力してまいりました。在留資格を喪失し不法滞在で逮捕・起訴された方について、婚姻・認知の手続を整え、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも、難関とされた在留特別許可を一度の手続で獲得した事例がございます。

松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更等につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップで対応いたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

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