舟渡国際法律事務所

「一度帰国して、ほとぼりが冷めたらまた来ればよい」という誤解|上陸拒否期間の仕組み

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「一度帰国して、ほとぼりが冷めたらまた来ればよい」という誤解|上陸拒否期間の仕組み

「一度帰国して、ほとぼりが冷めたらまた来ればよい」という誤解|上陸拒否期間の仕組み

2026/07/31

刑事事件に巻き込まれた方から、「今回は一度中国に帰り、数年してからまた日本に来ればよい」というお考えを伺うことがあります。日本での生活を諦める代わりに、将来の再来日に望みをつなぐという選択です。しかし、入管法は再入国について明確な制限を定めており、その期間は、どのような形で日本を出たかによって大きく変わります。この記事は、上陸拒否期間の仕組みを整理し、出国の方法を選ぶ前に確認すべき点をお伝えするものです。

本記事の要点

  • 退去強制を受けて出国した場合、原則として5年間は日本に上陸できません(入管法5条1項9号ロ)。
  • 過去にも退去強制歴がある場合、この期間は10年になります(同号ハ)。
  • 出国命令により自ら出国した場合は、上陸拒否期間が1年に短縮されます(同号イ)。
  • 1年以上の拘禁刑に処せられた場合、期間の定めなく上陸を拒否され得ます(入管法5条1項4号)。
  • 薬物関係の法令違反で刑に処せられた場合も、期間の定めのない上陸拒否の対象となり得ます(同項5号)。

1 同じ「帰国」でも、法的な意味はまったく違います

日本を出るという事実は同じでも、その法的な位置づけには複数の類型があります。第一に、在留資格を保ったまま自らの意思で出国する場合。第二に、出国命令制度により、退去強制手続を経ずに自ら出国する場合。第三に、退去強制令書の執行により送還される場合です。

この三つは、その後の再入国の可否において決定的に異なります。ご本人にとっては「帰る」という一つの行為でも、どの手続で帰るかによって、5年後に戻れるのか、1年後に戻れるのか、あるいは期間の定めなく戻れないのかが分かれます。

2 退去強制を受けた場合の上陸拒否期間

入管法5条1項9号ロは、退去強制を受けて出国した者について、原則として出国の日から5年間、上陸を拒否する旨を定めています。さらに、過去にも退去強制を受けたことがある場合には、同号ハにより10年間となります。

この期間は、単に待てば自動的に解消されるというものではありません。期間が経過した後も、過去の退去強制歴は査証の審査において考慮されます。したがって、「5年待てば元どおり」という理解は現実的ではありません。

3 出国命令制度を選べる場合

不法残留の事案では、一定の要件を満たす場合に、出国命令制度(入管法24条の3)を利用できることがあります。要件は、速やかに出国する意思をもって自ら出頭したこと、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、過去に一定の刑に処せられたことがないこと、過去に退去強制や出国命令により出国したことがないこと、などです。

この制度を利用して出国した場合、上陸拒否期間は1年に短縮されます(入管法5条1項9号イ)。5年と1年の差は決定的です。しかし、要件のいずれか一つでも欠ければ利用できませんので、刑事事件の処分内容が要件に影響しないかを、早い段階で確認する必要があります。

4 期間の定めのない上陸拒否

ここが最も重要な点です。入管法5条1項4号は、日本または日本以外の国の法令に違反して1年以上の拘禁刑に処せられたことのある者について、期間の定めなく上陸を拒否する旨を定めています(政治犯罪による場合を除きます)。また、同項5号は、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤等に関する法令に違反して刑に処せられた者を、同じく期間の定めのない上陸拒否の対象としています。

つまり、薬物事犯で有罪となった場合、刑の重さにかかわらず、将来にわたって日本への上陸が原則として認められなくなり得るということです。「数年経てばまた来られる」という前提そのものが成り立ちません。

5 だからこそ、刑事処分の内容が決定的です

上陸拒否の要件は、いずれも刑事処分の内容と結びついています。1年以上の拘禁刑か否か、薬物関係の法令違反か否か、退去強制を受けたか出国命令によったか。これらはすべて、刑事手続と入管手続の中で決まっていきます。

したがって、将来の再来日を少しでも視野に入れるのであれば、刑事段階から不起訴処分の獲得を目標に据えることが必要です。有罪となった後に選べる道は、大きく狭まります。当事務所が執行猶予ではなく不起訴を最優先目標とするのは、この構造があるためです。

6 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。

在留特別許可については、観光目的で来日した方が在留資格を失い不法滞在で起訴された事案において、当局から一旦不受理とされた婚姻・認知の手続を憲法的観点からの交渉により実現させ、入管当局の過去の許可事例を分析することで在留特別許可を獲得した実績がございます(事例D-1)。日本を出るか残るかという選択の前に、残る道が本当にないのかを検討することには意味があります。

また、退去強制事由の判断に故意・過失を要件とすべきかという論点について、訴訟を係争中です(事例D-2)。従来の入管実務の枠組みそのものを問う取組みです。

当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。中国語専属通訳が常駐しており、出国の方法を選ぶ場面でも、内容を正確に理解した上でご判断いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともに対応いたします。

おわりに

「今は帰るしかない」と決める前に、どの手続で帰るのかを検討してください。同じ帰国でも、1年後に戻れるのか、期間の定めなく戻れないのかが分かれます。そしてその分岐点の多くは、刑事手続の中に置かれています。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年7月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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