舟渡国際法律事務所

偽造在留カードを作った・売った側の刑事責任|入管法73条の3と有印公文書偽造

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偽造在留カードを作った・売った側の刑事責任|入管法73条の3と有印公文書偽造

偽造在留カードを作った・売った側の刑事責任|入管法73条の3と有印公文書偽造

2026/07/31

偽造された在留カードをめぐる摘発は、これまで「使った側」に注目が集まってきました。しかし近年は、印刷機材を用いてカードを製造した者、SNSや通信アプリを通じて販売した者、注文を取り次いだ者といった供給側の摘発が進んでいます。報道によれば、在留カードを不正に使用したとされる事案で、国際的な犯罪組織の関係者が相次いで再逮捕された例も伝えられています。この記事は、供給側に立たされた方とそのご家族に向けて、罪名の構造と在留資格への影響を整理したものです。

本記事の要点

  • 偽造在留カードの製造・所持・提供は、入管法73条の3以下に独立した罰則が設けられています。
  • 在留カードは公務所が作成する文書であるため、有印公文書偽造罪(刑法155条)の問題も生じます。
  • 「印刷を頼まれただけ」「配送しただけ」であっても、共犯として評価される場合があります。
  • 使用者側より供給側の方が、組織性・反復性を理由に量刑が重くなる傾向があります。
  • 在留資格の観点では、退去強制事由に加え、在留資格取消し(入管法22条の4)も併せて検討する必要があります。

1 どの条文が問題になるか

在留カードの偽造については、入管法に独立した罰則が置かれています。偽造・変造の行為、偽造カードの提供・収受、行使の目的での所持が、それぞれ処罰の対象とされています(入管法73条の3ないし73条の6)。これらは、単なる公文書偽造罪の特別規定として、外国人の身分証明の信用性を守るために設けられたものです。

加えて、在留カードは出入国在留管理庁が交付する公文書ですから、刑法155条の有印公文書偽造罪の適用も問題となります。実務では、どの構成要件で立件するかは事案の態様によって異なりますが、いずれにせよ、単なる「アルバイト感覚」で説明できる軽い罪ではありません。

2 供給側が重く評価される理由

刑事処分の重さを決めるのは、行為の反復性と組織性です。カードを一枚使っただけの事案と、機材をそろえて継続的に製造・販売していた事案とでは、被害の広がりが異なります。捜査機関は、押収したパソコンや印刷機材のデータ、通信アプリの履歴、入金記録から、製造枚数と販売先を割り出そうとします。その結果、当初の被疑事実よりも広い範囲で追及を受け、再逮捕が繰り返されることがあります。

「知人に頼まれて印刷しただけ」「代金を受け取って発送しただけ」という説明であっても、偽造カードの用途を認識していたと評価されれば、共同正犯または幇助犯として責任を問われます。ここでも争点は、認識の範囲、すなわち故意です。

3 在留資格への影響は二方向から生じます

第一に、退去強制の問題です。実刑となれば入管法24条4号リに該当し得ます。もっとも、この類型で見落とされやすいのは第二の問題、すなわち在留資格の取消しです。入管法22条の4は、偽りその他不正の手段により在留資格を取得した場合など、複数の号を掲げて在留資格の取消しを定めています。偽造書類が在留資格の取得や更新の過程で用いられていた場合、刑事処分とは別に、在留資格そのものが取り消される可能性があります。

在留資格が取り消されれば、退去強制事由の有無とは別に、適法な在留の基盤が失われます。刑事事件の見通しだけを立てて安心することはできません。刑事弁護と入管対応を、最初から一体のものとして設計する必要があります。

4 不起訴処分を目標に据える理由

この類型では、証拠が物として残っているため、事実関係を全面的に争うことが難しい場合があります。それでも不起訴を目標に据えるのは、外国人事件においては、有罪判決を得ないことが在留資格を守る唯一の確実な方法だからです。

具体的には、関与の程度が従属的であったこと、利得が限定的であったこと、組織の全体像を知らされていなかったこと、直ちに関係を断ち更生の環境が整っていることを、客観的資料とともに検察官に示します。起訴猶予の判断は、犯情だけでなく、こうした一般情状によっても動きます。

5 初動の三つのポイント

第一に、押収された機器の中身について、記憶に基づかない推測で答えないことです。データの解析結果と食い違う説明をすると、供述全体の信用性が失われます。第二に、早期に弁護人を選任し、認める範囲と争う範囲を整理することです。第三に、通訳の質を確認することです。製造・販売の役割分担に関する説明は専門的で込み入っており、訳出のずれがそのまま不利な調書として残ることがあります。

6 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、入管法違反事案について、刑事手続と入管手続を一体として設計する弁護方針を採っています。

入管手続については、観光目的で来日した方が在留資格を失い不法滞在で起訴された事案において、当局から一旦不受理とされた婚姻・認知の手続を憲法的観点からの交渉により実現させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況下でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例の分析を通じて在留特別許可を獲得した実績がございます(事例D-1)。

また、不法就労助長罪の認定事案において、退去強制事由の判断に故意・過失を要件とすべきかという論点を正面から問う訴訟を係争中です(事例D-2)。書類の外形だけで責任を認定する運用に対しては、なお検討すべき問題が残されていると考えています。

当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。中国語専属通訳が常駐しており、依頼者ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともに対応いたします。

おわりに

偽造在留カードの事案は、押収物という動かしがたい証拠から出発します。しかし、その方が組織の中で何を知り、どこまで関わったのかは、押収物だけでは決まりません。事実を正確に切り分けて記録に残すことが、刑事処分にも、その先の在留資格にも、確かな違いを生みます。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年7月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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