舟渡国際法律事務所

覚醒剤の密輸未遂で逮捕されたら|「中身を知らなかった」をどう立証するか

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覚醒剤の密輸未遂で逮捕されたら|「中身を知らなかった」をどう立証するか

覚醒剤の密輸未遂で逮捕されたら|「中身を知らなかった」をどう立証するか

2026/07/31

空港で預け入れ荷物やスーツケースの二重底から覚醒剤が発見され、その場で身柄を取られる事案が続いています。報道によれば、10億円相当とされる覚醒剤の密輸未遂で中国籍の男女が逮捕・起訴された事案も伝えられています。この類型のご相談で最も多いのは、「知人から荷物を届けてほしいと頼まれただけで、中身は知らなかった」という説明です。捜査機関はこの説明をまず信用しません。しかし、信用されないことと、立証できないことは別です。この記事では、故意をめぐる争い方と、在留資格への影響を整理します。

本記事の要点

  • 覚醒剤の輸入は、覚醒剤取締法違反と関税法違反の双方が同時に成立し得る重い類型です。
  • 営利目的が認定されると法定刑は著しく重くなり、裁判員裁判の対象となる場合があります。
  • 薬物犯罪は、入管法24条4号チにより、刑の重さを問わず退去強制事由となり得ます。
  • したがって、執行猶予でも在留は守れず、争うべきは有罪か無罪かという点になります。
  • 故意の立証は状況証拠の積み重ねであり、これを崩す作業は逮捕直後から始まります。

1 問われる罪名と刑の重さ

覚醒剤を国外から持ち込む行為は、覚醒剤取締法上の輸入罪にあたるとともに、関税法上の禁制品輸入罪にも該当します。営利の目的が認められる場合、覚醒剤取締法41条2項により、無期または3年以上の拘禁刑という極めて重い法定刑が定められています。数量が大きく営利目的が認定された事案は、裁判員裁判の対象となることがあり、審理の負担も大きくなります。

覚醒剤取締法違反は、単純所持や使用であっても軽い罪ではありませんが、輸入となると量刑の水準が一段と上がります。「運んだだけ」という立場であっても、量刑上は運搬役として相応の評価を受けます。

2 最大の争点は「知っていたか」

この類型の弁護活動の中心は、覚醒剤であるとの認識、すなわち故意の有無です。捜査機関は、次のような間接事実を積み上げて故意を立証しようとします。渡航費用を第三者が負担していたこと、報酬の額が運搬の労力に比して不自然に高いこと、荷物の受渡し方法が不自然であること、依頼者と面識が乏しいこと、通信履歴が削除されていること、といった事情です。

これに対して弁護人が行うのは、これらの間接事実に別の合理的な説明が成り立つことを、客観的資料によって示す作業です。渡航の目的を裏付ける予約記録、依頼者との実際のやり取り、報酬の趣旨に関する説明、荷物の外観と重量の関係、本人の生活状況といった資料を、時間をかけて集めます。これらの資料の多くは、ご本人が身柄を拘束された直後から散逸し始めます。だからこそ、初動の速さが結論を左右します。

当事務所では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の精査と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した実績がございます(事例A-1)。状況証拠のみで構成された事件は、一つひとつの前提を丁寧に検証していけば、崩せる場合があります。

3 薬物事犯における在留資格の特殊性

ここが、薬物事犯を他の罪名と決定的に分ける点です。入管法24条4号チは、薬物関係法令に違反して有罪判決を受けた者を退去強制事由として定めています。この号は、刑の重さや執行猶予の有無を要件としていません。つまり、罰金であっても、執行猶予付きの判決であっても、退去強制の対象となり得るということです。

一般の罪名であれば、4号リの「無期又は1年を超える拘禁刑」という要件があるため、量刑を軽くする弁護活動に意味があります。しかし薬物事犯では、有罪となった時点で在留の基盤が失われます。したがって、弁護方針は「刑を軽くする」ではなく、「有罪を回避する、あるいは起訴自体を回避する」ところに置かざるを得ません。

入管法24条各号は、号ごとに構造が異なります。この点を正確に踏まえずに「執行猶予が付けば大丈夫」と説明することは、依頼者にとって重大な結果をもたらしかねません。当事務所が号別の構造にこだわるのは、そのためです。

4 初動で押さえておきたいこと

  • 取調べで説明する内容は、必ず弁護人と整理してからにすること。記憶があいまいな部分を推測で答えると、後の公判で信用性を失います。
  • 通訳を介した供述には、微妙なずれが生じます。「知らなかった」と「気にしなかった」では法的評価がまったく異なります。当事務所の専属通訳をご利用いただけます。
  • 領事関係に関するウィーン条約36条1項(b)に基づく領事への通報を求める権利があります。告知を受けたかどうかを弁護人が確認します。

5 当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。

薬物事犯については、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得の実績がございます(事例A-1)。また、裁判員裁判対象事件や世界的に報道された重大事件への対応も重ねてまいりました(事例E-1)。重大事件では、公判前整理手続における証拠開示請求の設計が結論を大きく左右します。

退去強制の局面については、故意・過失なき者に対する退去強制処分の当否を正面から問う訴訟を現在係争中です(事例D-2)。従来の入管実務は、退去強制事由の判断に故意・過失を要件としないとしてきましたが、責任主義の射程が行政処分に及ぶかどうかは、なお開かれた問題です。刑事段階で故意を争った記録は、この局面で意味を持ちます。

当事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。中国語専属通訳が常駐し、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般にわたってご利用いただけます。

おわりに

空港で覚醒剤が発見された時点で、勝負は終わったと感じられるかもしれません。しかし、争点は「物があったか」ではなく「知っていたか」です。この一点をめぐる立証は、逮捕直後からの資料収集の積み重ねによって形になります。ご家族の方に最初にお願いしたいのは、記憶が新しいうちに、渡航の経緯や依頼の内容を書き留めていただくことです。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年7月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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