金の密輸で逮捕された中国籍の方とご家族へ|関税法違反・消費税の脱税と在留資格
2026/07/31
金価格の高騰を背景に、金地金を申告せずに日本へ持ち込む事案の摘発が続いています。報道によれば、等身大の人形の内部に金塊を隠して航空機で運び込もうとしたとして、中国籍の会社役員らが関税法違反の疑いで逮捕された事案や、香港から持ち込んだ金を国内で溶かして金塊に加工していたとされる事案も伝えられています。ご本人は「知人から運搬を頼まれただけ」と説明していても、税関検査で発見された時点で身柄を取られ、日本語でのやり取りが続く中、ご家族は何が起きているのか分からないまま日を重ねることになります。この記事は、そうした状況に置かれた方に向けて、手続の見通しと、在留資格を守るために最初に押さえるべき点を整理したものです。
本記事の要点
- 金地金を申告せず持ち込む行為は、関税法上の無許可輸入罪のほか、消費税を免れる脱税犯としても立件され得ます。
- 法定刑は重く、組織的・反復的とみられる事案では実刑判決も現に言い渡されています。
- 1年を超える拘禁刑で全部執行猶予が付かない場合、入管法24条4号リの退去強制事由に直結します。
- 在留資格を守る最も確実な道は、起訴される前に不起訴処分を得ることです。
- 「中身を知らなかった」という運搬役の類型では、故意の有無が刑事・入管の双方で決定的な争点になります。
1 どのような罪に問われるのか
結論から申し上げますと、金の無申告持込みは、単なる申告漏れではなく、複数の罰則が同時に問題となる類型です。第一に、必要な許可を受けずに貨物を輸入する行為は関税法111条の無許可輸入罪にあたります。第二に、金地金は消費税の課税貨物であるため、申告を免れて持ち込むことは、関税等を免れる罪(関税法110条)や消費税法上の脱税として立件され得ます。関税法110条の法定刑は10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金とされ、併科もあり得ます。
実務上さらに重いのは、複数人が役割を分担していたとみられる場合です。運搬役・受取役・加工役・資金の出し手といった構図が捜査機関に描かれると、共謀共同正犯として組織全体の数量が一人の責任として評価されかねません。摘発された数量が数十キログラム、被害額(免れた税額)が数千万円規模と報じられる事案では、初犯であっても実刑が視野に入ります。
2 逮捕からの手続はどう進むか
税関での発見を端緒とする事案では、税関職員による告発と警察・検察の捜査が並行します。逮捕後48時間以内に検察官へ送致され、さらに24時間以内に勾留請求がなされます。勾留が認められると原則10日間、延長でさらに10日間、身柄拘束が続きます。この最大約20日間のうちに、起訴するか不起訴とするかが決められます。
つまり、勾留決定までのおよそ72時間と、その後の20日間が勝負どころです。ここで弁護人が付かないまま取調べが進むと、後から覆すことが難しい供述調書が積み上がってしまいます。
3 外国人にとっての本当のリスクは在留資格にあります
刑事処分だけを見て安心してはいけない、というのが外国人事件の要点です。入管法24条4号リは、無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由として定めています。同号には刑の全部の執行猶予を言い渡された場合を除く旨の定めがありますが、実刑となれば、刑期を終えた後に入管の収容へ切り替わり、退去強制手続が始まります。
退去強制に至らない場合でも、在留期間の更新(入管法21条)や在留資格の変更の審査において、素行が善良であることが求められます。前科の存在は、経営・管理や技術・人文知識・国際業務といった在留資格の更新審査で正面から問題となります。永住許可の要件にも影響します。
もう一つ、当事務所が重視している論点があります。運搬を依頼されただけで中身を知らなかったという場合、刑事事件では故意の不存在を争うことができます。ところが入管実務では、退去強制事由の判断に故意・過失は要件とされないという運用が長く踏襲されてきました。松村大介弁護士は、責任主義の射程が行政処分にも及ぶべきではないかという論点を正面から問う訴訟を現在係争中です(事例D-2)。刑事段階から故意を丁寧に争い、その記録を残しておくことが、後の入管手続における主張の土台になります。
4 なぜ不起訴処分を目標に据えるのか
執行猶予判決を得られれば安心だと説明されることがありますが、外国人事件ではそれでは足りません。判決に前科が残る以上、その後の在留資格の更新・変更の審査で不利に働きます。関税法違反のように法定刑が重い類型では、そもそも執行猶予が確実とはいえません。
したがって、弁護活動は起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先目標として組み立てる必要があります。具体的には、故意の不存在や関与の程度に関する客観的資料の収集、税額の納付・修正申告への協力、身元引受体制の整備、検察官への意見書提出といった活動を、勾留期間内に集中して行います。
5 初動で押さえておきたい三点
- 黙秘権を理解した上で対応すること。分からないまま署名した調書は、後から取り消せません。
- できるだけ早く弁護人を選任すること。当番弁護士制度もありますが、継続的な弁護活動には私選弁護人の選任が有効です。
- 通訳の質を確認すること。捜査機関が指定する通訳人は依頼者側の立場ではありません。訳出のわずかなずれが、供述調書に不利な形で固定されることがあります。
6 当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としています。
薬物・関税といった法定刑の重い類型については、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の精査と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得した実績がございます(事例A-1)。また、裁判員裁判対象事件や世界的に報道された事件への対応経験も重ねてまいりました(事例E-1)。
刑事手続の後に退去強制手続へ進んでしまった場合にも、対応が可能です。観光目的で来日した方が在留資格を失い不法滞在で起訴された事案において、婚姻・認知の手続を実現させた上で入管当局の過去の許可事例を分析し、在留特別許可を得た実績がございます(事例D-1)。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともにワンストップで対応いたします。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般にわたってご利用いただけます。
おわりに
金の密輸事案は、税関で発見された瞬間から証拠がほぼ固まっているように見えるため、諦めてしまう方が少なくありません。しかし、どこまで知っていたのか、どの程度関与していたのかは、外形的な事実だけでは決まりません。その一点を最初の数日間でどう記録に残すかによって、刑事処分も、その先の在留資格も変わり得ます。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年7月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------