執行猶予でも退去強制になる場合がある|入管法24条4号の2の構造と「別表第一・別表第二」の違い
2026/07/29
「執行猶予が付けば日本に残れる」という説明は、半分しか正しくありません。ご自身の在留資格が入管法の「別表第一」(留学、技術・人文知識・国際業務、経営管理、技能実習など)か「別表第二」(永住者、日本人の配偶者等、定住者など)かによって、同じ判決でも在留への影響は全く異なるからです。本記事では、実務家でも見落としやすい入管法24条4号の2の構造を、当事者の方にも分かるように整理いたします。
本記事の要点
- 24条4号リ:無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者が対象です。ただし刑の全部の執行猶予が付いた場合は除かれます
- 24条4号の2:別表第一の在留資格の方に限り、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、傷害、暴行、住居侵入など法律が列挙する罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予が付いても退去強制事由に該当します
- 24条4号チ:薬物犯罪は刑の軽重を問わず退去強制事由です
- 退去強制に該当しなくても、在留期間更新時の素行評価という別のハードルが残ります
別表第一と別表第二とは何か
入管法の在留資格は、就労や留学など活動に着目した「別表第一」(技術・人文知識・国際業務、経営管理、技能、留学、家族滞在など)と、日本との身分関係に着目した「別表第二」(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)に大別されます。刑事処分が在留に与える影響を検討する際は、まず、ご自身がどちらの別表の在留資格かを確認することが出発点になります。同じ執行猶予付き判決でも、別表第一か別表第二かで、退去強制事由への該当性が分かれる場面があるからです。
4号リ・4号の2・4号チの構造
結論から申し上げると、検討の枠組みは次の3段階です。第1に、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑であれば、在留資格を問わず4号リに該当します(刑の全部の執行猶予が付けば除外されます)。第2に、別表第一の在留資格の方は、窃盗・強盗・詐欺・恐喝・傷害・暴行・住居侵入等の列挙罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予の有無を問わず4号の2に該当しえます。ここが「執行猶予なら大丈夫」という理解の最大の落とし穴です。第3に、覚醒剤・大麻・麻薬等の薬物犯罪は、罰金であっても4号チに該当し、刑の軽重を問いません。この3段階を、①別表第一か第二か、②刑の種類(実刑か執行猶予か罰金か)、③罪名(列挙罪か薬物犯罪か)の順に確認するのが、当事務所の標準的な検討手順です。
退去強制を免れても残る「素行」のハードル
退去強制事由に該当しない場合でも、在留期間更新・在留資格変更の許可は法務大臣の裁量に係り、更新ガイドラインは素行が不良でないことを考慮要素としています。罰金前科や執行猶予付き判決は、この場面で不利益に評価されえます。つまり外国人の刑事事件では、退去強制事由該当性と更新不許可リスクという2つの関門を分けて検討する必要があり、いずれの関門との関係でも、そもそも前科を作らない不起訴処分の獲得が最も確実な防御となります。
故意・過失の争いと入管手続(当事務所の取組)
入管実務では、退去強制事由の判断にあたり故意・過失は要件とされないという運用が長く続いてきました。当事務所の松村大介弁護士は、不法就労助長を理由とする退去強制の事案で、この実務に対し責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を現在係争中であり、同種事案では認定手続の段階から故意・過失の不存在を争う証拠を積み上げる方針を採っています。また、不法就労助長罪の認定事件において前例のない在留特別許可を獲得した実績があり、条文構造の分析と個別事情の立証を組み合わせることで、形式的には不利に見える事案にも活路がありうると考えています。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、入管法の条文構造を踏まえた外国人刑事弁護を注力分野としています。難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案での全件不起訴処分の獲得など、刑事と入管の双方にまたがる実績があります。刑事事件のご相談の際には、必ず在留資格の別表・刑の種類・罪名の3点を確認し、判決後の在留への影響までを見通した弁護方針をご提案いたします。
松村大介弁護士は接見の初動から結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。中国語専属通訳が常駐し、提携の行政書士による在留資格サポートまでワンストップで対応しております。
結びに
「執行猶予なら残れる」という一般論は、別表第一の在留資格の方には通用しない場面があります。ご自身の在留資格と罪名の組合せがどの号に触れうるのかを、早い段階で正確に把握することが、弁護方針のすべての出発点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年7月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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