空港で現金を無申告のまま持ち出すと犯罪になるのか|100万円超の携帯輸出入申告と外為法
2026/07/29
訪日旅行や一時帰国の際、100万円相当額を超える現金や小切手等を日本から持ち出し、又は日本へ持ち込む場合には、税関への申告が必要です。近年、金地金の密輸事件と並んで、現金の無申告持出しの摘発が各地の税関から相次いで公表されています。「自分のお金をどう運ぼうと自由ではないか」という素朴な疑問を持たれる方が多い類型ですが、無申告・虚偽申告は刑事罰の対象であり、外国人の場合は在留資格への影響も無視できません。
本記事の要点
- 100万円相当額を超える現金等を携帯して出入国する際は、「支払手段等の携帯輸出・輸入申告書」を税関に提出する必要があります(外為法)
- 無申告・虚偽申告は外為法等により刑事罰の対象となり、現金が差し押さえられる場合もあります
- 申告義務の存在を知らなかったという故意の争いが中心的な争点となる類型です
- 罰金でも前科として在留審査の素行評価に影響しうるため、不起訴処分の獲得が重要です
なぜ現金の持出しに申告が必要なのか
結論から申し上げると、この申告制度はマネーロンダリングと犯罪収益の国外流出を防ぐための仕組みです。申告自体に手数料はかからず、正当な資金であれば申告さえすれば適法に持ち出せます。処罰されるのは、申告をしなかったこと、又は虚偽の申告をしたことそのものです。中国の外貨規制との関係で多額の現金を手荷物で運ぶ方が現実に存在するため、中国人旅行者・在日中国人の摘発例が目立ちますが、制度を知ってさえいれば避けられた事件も少なくありません。
摘発された場合の手続と争点
出国検査場で発見された場合、その場での取調べの後、在宅事件として捜査が進むことも、悪質と判断されて逮捕に至ることもあります。中心的な争点は、申告義務の認識、すなわち故意の有無です。案内表示を見ていない、申告制度を知らなかった、同行者に任せていたなどの事情は、故意を否定する方向の主張の基礎となります。他方、現金を分散して隠していた、過去にも同様の指摘を受けていたといった事情は故意を推認させる方向に働きます。取調べの初期段階で、事実と異なる「知っていました」という調書を作られないことが極めて重要です。ここで、刑事上の故意の議論は、退去強制事由の判断における故意・過失の取扱いという入管法上の論点にもつながります。松村大介弁護士は、故意・過失なく退去強制事由該当性を認定する入管実務に対し、責任主義の射程を問う訴訟を現在係争中であり、刑事段階からの一貫した主張立証を重視しています。
不起訴処分の重要性
この類型は、被害者のいない手続犯であり、申告義務違反の悪質性が低い場合には、検察官が起訴猶予(不起訴)とする余地が十分にあります。資金の出所の正当性を示す資料(預金通帳、事業の売上記録等)を整え、制度の不知に至った経緯を具体的に説明することで、不起訴処分の獲得を目指します。罰金であっても前科は残り、在留期間更新や永住許可申請の素行評価に影響しうるため、「罰金で済むなら」と安易に認めることは適切ではありません。
初動対応で押さえておきたい3つのポイント
- 黙秘権の行使:認識の有無という主観面が争点となるため、不正確な供述調書が決定的な不利益になります
- 早期の弁護人選任:税関段階・在宅事件の段階から弁護士が関与することで、資料の整理と主張の一貫性を確保できます
- 資金源資料の保全:現金の出所を示す客観資料を早期に集めることが、正当性の立証の柱になります
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、空港・税関で発覚する事件を含む外国人刑事事件に豊富な経験を有しています。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と尋問により無罪判決を獲得した事例があり、水際事件における客観証拠の分析力には特に自信を持っています。また、観光目的で来日後に在留資格を失った方について難関とされた在留特別許可を獲得した事例、国際刑事事件・裁判員裁判対象事件への対応実績など、刑事と入管の双方に通じた弁護活動を行っています。
松村大介弁護士は接見の初動から結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、捜査機関の指定通訳とは別に、ご本人のための通訳を手続全般でご利用いただけます。提携の行政書士による在留資格サポートにも対応しております。
結びに
現金の携帯輸出入は、制度を知っていれば適法に行えたはずの行為が刑事事件化する典型類型です。摘発された場合には、故意の争いと資金源の立証という2つの柱を早期に立てることが肝要です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年7月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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