「地下銀行」の送金代行はなぜ犯罪になるのか|銀行法違反と日中間の送金をめぐる刑事リスク
2026/07/29
日本と中国の間の送金を、銀行や登録を受けた資金移動業者を通さずに代行する、いわゆる「地下銀行」の摘発が続いています。2026年7月には、SNS型投資詐欺の被害金約2億円のマネーロンダリングに関与したとして、中国籍の会社役員ら7人が組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益隠匿)の疑いで逮捕されたと報じられました。微信(WeChat)のグループで「人民元と日本円の両替」や「送金代行」を気軽に引き受けた結果、刑事事件に発展する例が見られます。どこからが犯罪になるのか、解説いたします。
本記事の要点
- 免許・登録を受けずに「為替取引」(隔地者間の資金移動)を業として行うことは、銀行法・資金決済法違反として処罰の対象です
- 預かった資金が詐欺の被害金だった場合、組織的犯罪処罰法の犯罪収益の収受・隠匿の疑いに発展しえます
- 両替や送金を頼まれただけという場合でも、資金の出所についての認識(故意)が争点となり、メッセージ履歴の評価が結論を分けます
- 罰金にとどまっても前科は在留期間更新の素行評価に影響します。起訴前の対応が重要です
どのような行為が「地下銀行」に当たるのか
結論から申し上げると、日本で日本円を受け取り、中国国内の口座から人民元を支払う(又はその逆の)仕組みを反復継続して提供すれば、現金が国境を越えて運ばれていなくても「為替取引」に該当し、免許のない営業は銀行法違反となります。手数料を得て知人の送金を繰り返し引き受ける行為も、規模によっては「業として」行ったと評価されえます。中国の外貨管理規制により正規の送金に制約があることが、こうした需要の背景にありますが、日本法上は処罰対象であることに変わりはありません。
マネーロンダリングへの発展という重いリスク
地下銀行の口座には、特殊詐欺や投資詐欺の被害金が流れ込むことが少なくありません。資金が犯罪収益であることを認識しながら受け取り、移転すれば、組織的犯罪処罰法の犯罪収益収受・隠匿として、送金代行そのものより格段に重い責任を問われます。捜査機関は口座の入出金記録とチャット履歴から認識を立証しようとするため、「知らなかった」という弁解が客観資料とどう整合するかが勝負所です。認識(故意)を早期から一貫して争い、証拠に基づいて主張することが、起訴・不起訴の分水嶺となります。
外国人事件特有のリスクと不起訴の重要性
無期又は1年を超える拘禁刑の実刑は退去強制事由(入管法24条4号リ)に該当します。組織性が認定されると量刑は重くなりやすく、執行猶予の獲得も容易ではありません。また、退去強制に至らなくても、有罪の前科は在留期間更新・永住許可申請における素行評価に影響します。刑事手続と入管手続は別の制度であり、刑事で有利な結果を得ても入管で不利益が残ることがあるため、当事務所では起訴前から不起訴処分の獲得を最優先目標とし、その先の入管手続まで一体で見据えた方針を採ります。なお、退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする入管実務に対しては、松村大介弁護士が責任主義の射程を問う訴訟を現在係争中です。
初動対応で押さえておきたい3つのポイント
- 黙秘権の行使:資金の出所や依頼者との関係について、記憶が曖昧なまま供述しないことが重要です
- 早期の弁護人選任:口座記録・チャット履歴の分析は専門的な作業であり、早い段階からの防御準備が結論を左右します
- 通訳の確保:金融取引の用語を正確に訳せる通訳の存在が、調書の正確性を担保します
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)の松村大介弁護士は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護に注力しています。特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案で全件不起訴処分を獲得した事例のほか、外資系企業の支配権紛争で依頼者側の勝訴を得るなど、中国系の企業・個人をめぐる複雑な資金関係の事案にも対応してきました。また、観光目的で来日後に在留資格を失った方について難関とされた在留特別許可を1回の手続で獲得した事例、不法就労助長罪の認定事件で前例のない在留特別許可を獲得した実績など、入管手続の実務にも精通しています。
松村大介弁護士は接見の初動から結審まで全工程を直接担当し(事務員・若手弁護士による代行を行いません)、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しています。捜査機関の指定通訳とは別に、ご本人のために動く通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。提携の行政書士による在留資格サポートにも対応しております。
結びに
送金代行は、中国人コミュニティの中では身近な行為に見えても、日本法の下では重大な刑事リスクを伴います。依頼を受ける前に、そして万一捜査が始まってしまったら直ちに、専門家にご相談ください。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年7月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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