舟渡国際法律事務所

退去強制手続の三段階|違反調査・違反審査・口頭審理と異議申出の構造を読み解く

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退去強制手続の三段階|違反調査・違反審査・口頭審理と異議申出の構造を読み解く

退去強制手続の三段階|違反調査・違反審査・口頭審理と異議申出の構造を読み解く

2026/07/21

刑事手続が終わった後、外国籍の方の前に現れるのが退去強制手続です。この手続は、刑事手続とは目的も構造も異なるにもかかわらず、まとまった解説に接する機会が少なく、当事者にとって全体像が見えにくいものとなっております。

本稿は、退去強制手続がどのような段階を経て進み、それぞれの段階で何を争い得るのかを、条文の構造に即して整理するものです(2026年7月時点の法令に基づきます)。

手続は三段階の審査で構成されています

退去強制手続は、性格の異なる三段階の審査によって構成されております。

**第一段階は、入国警備官による違反調査です。** 入管法27条以下に定められており、退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときに、事実の調査が行われます。この段階で収容令書が発付され、身体が収容されることがございます(入管法39条)。刑事手続の終了と同時に、そのまま収容へ移行する例も少なくありません。

**第二段階は、入国審査官による違反審査です。** 入管法45条に基づき、退去強制事由に該当するかどうかが審査されます。該当すると認定された場合、その旨が通知されます(同法47条)。

**第三段階は、特別審理官による口頭審理です。** 違反審査の認定に服さない場合、当事者は口頭審理を請求することができます(入管法48条)。ここでは、認定の当否について、証拠に基づく主張を行うことができます。

口頭審理でも判定が覆らない場合、法務大臣に対する異議の申出(入管法49条)へと進みます。そして、この異議の申出の場面において、在留特別許可の判断がなされることになります(入管法50条)。

各段階で争える内容は異なります

ここで実務上重要なのは、各段階で争える内容が異なるという点です。

違反審査・口頭審理の段階で審査されるのは、あくまで退去強制事由への該当性です。すなわち、入管法24条各号のいずれかに当たる事実があるかどうかという、事実認定と法解釈の問題です。ここで争うべきは、たとえば、当該号の要件を満たす刑が言い渡されているか、資格外活動の「専ら」の要件を満たすか、といった条文解釈上の争点です。

これに対して、在留特別許可は、退去強制事由に該当することを前提として、なお在留を認めるべき事情があるかを判断するものです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により、この判断における考慮事情が法律上明示されました。入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留の期間、法的地位、退去強制の理由となる事実、その他の人道的な配慮の必要性等を挙げております。

同改正は、申請手続を法定化し、また拘禁刑1年を超える実刑等を受けた者についても「特別の事情」があれば許可され得ることを明示した点でも、重要な意味を持っております。

在留特別許可を求めるにあたって

在留特別許可を求める場面では、出入国在留管理庁が公表している許可事例・不許可事例が重要な資料となります。同庁は平成16年以降、年度ごとに事例を公表しており、令和6年改定のガイドラインと併せて参照することができます。

これらの公表事例は、行政自身が「許可相当」と判断した先例です。したがって、本件と本質的に類似する事情を有する事案について過去に許可の実績があるにもかかわらず、本件についてのみ不許可とすることは、合理的な理由なく異なる取扱いをするものとして、憲法14条1項の定める法の下の平等に照らして問題があると主張し得ます。

対照にあたっては、違反の態様、在日期間と違反期間、家族構成、発覚の経緯が出頭申告か摘発か、素行、その他の人道的配慮を要する事情といった観点から、逐一比較していく作業が必要です。公表事例は個人情報の関係で記載が抽象化されておりますので、完全な一致を求めるのではなく、本質的な事情の類似性を基準として対照いたします。

退去強制事由の判断と責任主義

最後に、当事務所が現在正面から問うている論点に触れさせていただきます。

入管実務は長年、退去強制事由の該当性について、故意・過失を要件としないという運用を踏襲してまいりました。すなわち、行政処分としての退去強制は、刑事責任とは独立に、客観的事実のみによって判断されるという理解です。

しかしながら、これは責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという、憲法論・行政法論の根本問題を孕んでおります。当事務所の松村大介弁護士は、不法就労助長の事案において、この論点を正面から問う訴訟を係争中です。故意・過失なくして重大な不利益を課す行政処分が、憲法31条の適正手続、憲法13条の個人の尊重、憲法14条1項の平等原則に照らして許されるのか。これは、退去強制手続の構造そのものに関わる問いです。なお、当該事案は係争中であり、結論を予断するものではございません。

当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、刑事弁護と行政訴訟(特に在留関連)を主たる注力分野としております。

在留特別許可の獲得実績としては、在留資格を喪失され不法滞在で逮捕・起訴された方について、婚姻・認知の手続が未了であったため当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して手続を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することで、在留特別許可を獲得した事例がございます。

また、不法就労助長罪の認定事件において、前例のない在留特別許可を獲得した実績も有しております。

当事務所では、松村大介弁護士が刑事手続から入管手続まで一貫して直接担当し、中国語専属通訳が常駐しております。在留資格の更新・変更については、提携の行政書士と連携して対応が可能です。

なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

おわりに

退去強制手続は、段階ごとに争える内容が定まっております。だからこそ、どの段階で何を主張するのかを、最初に設計しておく必要がございます。刑事手続の段階から入管手続を見据えることが、結局のところ最も確実な備えとなります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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