舟渡国際法律事務所

取調べの通訳は誰のために訳すのか|ご家族に知っておいていただきたい供述調書の実際

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取調べの通訳は誰のために訳すのか|ご家族に知っておいていただきたい供述調書の実際

取調べの通訳は誰のために訳すのか|ご家族に知っておいていただきたい供述調書の実際

2026/07/21

外国人の刑事事件において、結果を静かに、しかし決定的に左右しているものがございます。取調べの通訳です。

ご家族から「本人は日本語が少し分かるので大丈夫だと思います」とうかがうことがございます。しかし、日常会話ができることと、取調室で法的な意味を持つ供述をすることとは、まったく別の水準の問題です。この記事では、供述調書がどのように作られるのか、そこで通訳がどのような位置を占めるのかを、ご家族の視点から整理いたします(2026年7月時点の運用に基づきます)。

供述調書は「録音のような記録」ではありません

まず押さえていただきたいのは、供述調書がやり取りの逐語記録ではないという点です。取調べを担当する捜査官が、聴取した内容を要約し、一人称の文章として書き起こします。日本語で作成された調書を、通訳人が口頭で訳して読み聞かせ、ご本人が内容を確認して署名・押印する。これが一般的な流れです。

ここには、二重の翻訳が介在いたします。第一に、ご本人が中国語で述べたことを、通訳人が日本語に訳す段階。第二に、捜査官が要約した日本語の文章を、通訳人が中国語に訳し戻す段階です。この二つの段階で、それぞれニュアンスが変わり得ます。

どのような「ズレ」が生じるのか

外国人事件の弁護に携わっておりますと、以下のような場面に繰り返し出会います。

  • **認識の程度を示す語の訳し分け。** 中国語の「知道」「了解」「察觉」「隐约觉得」といった語は、日本語では「知っていた」「分かっていた」「気づいていた」「うすうす感じていた」などに対応いたしますが、この訳し分けは共謀の認定や未必の故意の認定に直結いたします。
  • **時制と確定度の曖昧化。** 中国語は日本語ほど時制を明示しない場面がございます。「やるつもりだった」のか「やった」のかが、訳出の過程で曖昧になることがございます。
  • **法律用語の日常語化。** 「所持」「占有」「共謀」といった法的概念が、日常語に置き換えられて訳されますと、法的評価に関わる部分が失われます。
  • **方言への対応。** 捜査機関が手配する通訳人は標準中国語を前提としており、地域の言語習慣による表現の違いが十分に汲まれないことがございます。

こうしたズレは、その場では誰も気づきません。しかし、公判で調書が証拠として提出された段階になって、「私はそういう意味で言ったのではない」と述べても、署名・押印された調書の証明力を覆すことは容易ではございません。

ご家族にお伝えしたいこと

第一に、ご本人に対して「調書は必ず内容を確認してから署名すること」「納得できない箇所は訂正を申し立てられること」を伝えていただきたいと存じます。刑事訴訟法198条4項は、被疑者が調書の増減変更を申し立てることを認めております。

第二に、黙秘権の意味をお伝えいただきたいと存じます。黙秘権は憲法38条1項に由来する権利であり、行使したことをもって不利益に扱われてはならないものです。特に、通訳を介した取調べで正確な意思疎通に不安がある場合、弁護人と方針を協議するまで供述を留保することは、十分に合理的な選択です。

第三に、弁護人側で独自に通訳を確保することの意味です。捜査機関が指定する通訳人は、その手続のために選任された立場にあり、ご本人の利益のために動く立場ではございません。弁護人の接見に同行する通訳が別途いるということは、ご本人にとって、初めて自分の言葉を自分の意味のまま伝えられる場ができるということでもあります。

当事務所について

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)には、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。捜査機関側の通訳とは別に、接見・打合せ・公判の各段階で、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。

供述の正確性が結果を分けた事例として、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事例がございます。捜査段階の供述と公判での供述の関係をどう整理するかは、無罪主張を組み立てる上での中核をなす作業です。

また、特殊詐欺の受け子で複数回再逮捕された事案では、不当な取調べに対して抗議しつつ、取調べ対応を徹底することで、全件について不起訴処分を獲得いたしました。取調べの現場でどう振る舞うかが、結果に直接つながることを示す事例と考えております。

当事務所では、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。刑事手続終了後の在留資格の手続についても、提携の行政書士と連携して対応が可能です。

なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

おわりに

言葉が正確に伝わるということは、外国人の刑事事件においては、公正な手続の前提そのものです。ご家族にできることの一つは、ご本人に「焦って署名しなくてよい」と伝えることです。落ち着いて話せる環境を整えるところから、弁護活動は始まります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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