暗号資産をめぐる詐欺で逮捕されたら|「運用の手伝いをしただけ」という言い分は通るのか
2026/07/21
暗号資産の運用を持ちかけて多額の資金を集めたとして、中国籍の方が詐欺の疑いで逮捕・再逮捕される事案が報じられております。被害額が数千万円規模に及ぶ事案もあり、被害者が複数にわたることから、捜査が長期化し、再逮捕が繰り返される点にこの類型の特徴がございます。
暗号資産の分野では、勧誘に関与した方ご自身も一定の資金を投じており、「自分も損をした」「上の人間に言われたとおりに説明していただけだ」と考えておられることが少なくありません。この記事は、そうした立場に置かれた方と、そのご家族に向けたものです(2026年7月時点の法令に基づきます)。
詐欺罪における「欺罔の故意」という関門
詐欺罪(刑法246条1項)は、人を欺いて財物を交付させることによって成立し、法定刑は10年以下の拘禁刑とされております。ここで決定的に重要なのが、故意、すなわち「相手を欺いているという認識」の有無です。
暗号資産の勧誘に関与した方の中には、上位の者から提供された資料を信じ、その内容が虚偽であるとは認識していなかった方もおられます。反対に、途中から配当の原資が新規出資金であることに気づきながら、勧誘を続けた方もおられます。両者は、外形的には同じ「勧誘行為」であっても、刑事責任の評価は大きく異なります。
したがって、この類型の弁護活動は、いつ、何を、どこまで知ったのかという認識の時系列を、客観的資料に即して再構成する作業が中心となります。チャットの履歴、社内資料の受領時期、ご自身の出資記録などは、いずれもご本人に有利な方向に働き得る資料です。
再逮捕が繰り返される類型であること
被害者が複数にわたる事案では、被害者ごとに事件が立てられ、勾留と再逮捕が繰り返されることがございます。結果として、身体の拘束が数か月に及ぶことも珍しくありません。
この間、ご家族にとって最も辛いのは、見通しが立たないことです。しかし、再逮捕が続く事案であっても、事件ごとに不起訴処分を積み重ねていくことは可能です。当事務所には、特殊詐欺の受け子で複数回再逮捕された事案において、取調べ対応を徹底し、不当な取調べには抗議しつつ主張立証を尽くすことで、全件について不起訴処分を獲得した経験がございます。「何度も逮捕されたのだから、もう望みはない」ということでは決してございません。
在留資格への影響
詐欺罪で1年を超える拘禁刑の実刑を受けますと、入管法24条4号リにより退去強制の対象となります。同号は刑の全部の執行猶予が付された場合を除外しておりますので、執行猶予判決であれば同号には直ちに該当いたしません。
もっとも、就労資格をお持ちの方の場合、更新申請時の素行要件が別の関門となります。出入国在留管理庁が公表している不許可事例を見ますと、執行猶予付きの判決を受けた方について、在留期間の更新が認められなかった例が確認できます。すなわち、刑事手続で執行猶予を得ることと、在留資格を維持することとは、別個の関門です。
だからこそ、当事務所では、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先の目標としております。被害弁償と示談の成立は、詐欺のような個人的法益を侵害する類型において、反社会性が個別に解消されたことを示す有力な資料となります。刑事手続の段階から、後の在留手続を見据えた資料を整えていく必要がございます。
初動で押さえていただきたい三点
- 取調べに不用意に応じないこと。「うすうす怪しいとは思っていました」という一言が、未必の故意を認めた供述として調書に残ることがございます。
- 早期に弁護人を選任すること。被害弁償の原資の確保や、被害者との交渉の開始時期は、早いほど選択肢が広がります。
- 通訳の質を確認すること。暗号資産の仕組みや金融用語は、日本語と中国語のいずれにおいても専門性が高く、訳出の精度が供述の意味を左右いたします。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)では、財産犯・経済事件についても継続的に取り組んでまいりました。
被害者側の代理人として、卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案で、刑事告訴を端緒に相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得した事例がございます。被害弁償の交渉においては、被害者側の視点と相場感を理解していることが、加害者側の弁護活動においても有用に働きます。
また、海外のSNSを使用して行われた侮辱被害について、日本の警察と国際刑事警察機構の捜査により刑事告訴が受理された事例など、国境をまたぐ事案への対応経験も有しております。暗号資産事案は、資金の流れが国外にわたることが多く、こうした経験が生きる場面がございます。
当事務所では、松村大介弁護士が全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しております。刑事手続終了後の在留資格の手続についても、提携の行政書士と連携して対応が可能です。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
おわりに
暗号資産の事案は、専門用語の壁と資金の流れの複雑さから、ご本人にとっても全体像が見えにくいものです。だからこそ、記憶が新しいうちに事実関係を整理し、有利な資料を確保しておくことが後の主張を支えます。長期戦になることを恐れず、一つひとつ積み上げてまいりましょう。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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