空港・駅構内での置き引きで逮捕されたら|短期滞在の中国籍の方と、日本に駆けつけたご家族へ
2026/07/21
空港の駐車場や到着ロビー、駅のコンコースで他人の手荷物を持ち去ったとして、外国籍の方が窃盗の疑いで逮捕される事案が、2026年に入ってからも繰り返し報じられております。報道によれば、複数名が役割を分担し、荷物から目を離した一瞬を狙う形の事案もあるとされております。空港や駅は防犯カメラの密度が高く、出入国記録も残るため、捜査機関が事後に人物を特定しやすい場所でもあります。
この記事は、短期滞在の在留資格で来日された中国籍の方や、知らせを受けて日本に駆けつけられたご家族に向けて、置き引き類型の刑事手続と、在留資格への影響を整理したものです(2026年7月時点の法令に基づきます)。
置き引きは「窃盗罪」として扱われます
他人が一時的に手を離した荷物を持ち去る行為は、刑法235条の窃盗罪にあたり、法定刑は10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金とされております。落とし物を拾った場合の遺失物等横領罪(刑法254条)との区別は、被害者の占有がなお及んでいたと評価できるかどうかによります。ベンチに置いたまま数メートル離れた荷物、カートに載せたままの荷物などは、なお被害者の占有が及んでいると評価されることが多く、窃盗罪として立件されます。
もっとも、この区別は事案ごとの微妙な判断を含みます。被害者との距離、離れていた時間、その場の状況、ご本人の認識のいずれもが評価の対象となりますので、初期段階で安易に「盗ったことに間違いありません」と認めてしまうことは避けるべきです。
逮捕からの72時間と、短期滞在者に特有の事情
逮捕されますと、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送り、検察官は24時間以内に勾留を請求するかを判断します。裁判官が勾留を認めますと、原則10日間、延長されればさらに10日間、身体の拘束が続きます。
短期滞在の在留資格の方の場合、この間に在留期限が到来してしまうことが少なくありません。刑事手続で身体を拘束されている間に在留期限が過ぎますと、刑事手続の終了後、そのまま入管の収容手続へ移行するという流れになりがちです。帰国の航空券を確保していたとしても、身柄が拘束されている以上、これに搭乗することはできません。したがって、置き引き類型では、刑事手続の早期終結と入管手続の見通しを、最初から一体のものとして設計する必要があります。
在留資格への影響
窃盗罪の場合、入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としており、同号は刑の全部の執行猶予が付された場合を除いております。したがって、執行猶予判決であれば同号には直ちに該当いたしません。
しかしながら、これで安心できるわけではございません。第一に、短期滞在者の場合、在留期限の経過による不法残留(入管法24条4号ロ)が別途問題となります。第二に、今後の日本への上陸に際して、上陸拒否事由(入管法5条1項各号)の審査を受けることになります。第三に、就労資格や留学の在留資格をお持ちの方であれば、更新時の素行要件(入管法21条3項及び「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」)で不利に評価される可能性があります。
「執行猶予が付いたから日本に居られる」という説明は、入管法24条各号の構造を号ごとに精査していない不正確な理解です。当事務所では、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先の目標として弁護方針を組み立てております。
初動で押さえていただきたい三点
- 取調べに不用意に応じないこと。黙秘権は憲法38条1項に由来する権利であり、行使したことをもって不利益に扱われてはならないものです。占有の有無や持ち去りの認識といった微妙な点について、通訳を介した一問一答で曖昧な調書が残ることは、後の公判で大きな不利益となります。
- 早期に弁護人を選任すること。当番弁護士制度をご利用いただくこともできますが、勾留段階以降を一貫して担当する弁護人を早期に選任されることをお勧めいたします。
- 通訳の質を確認すること。捜査機関が手配する通訳人は、必ずしも法律用語の専門家ではございません。「置いてあった」「離れていた」といった表現の訳し方ひとつで、占有の評価に関わる調書の意味が変わることがあります。
当事務所について
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。
窃盗・財産犯の類型では、被害者との示談交渉と、ご本人の主観的事情の丁寧な主張が結果を左右いたします。当事務所では、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、指示役からの働きかけの実態やご本人の犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例がございます。財産犯において、行為の外形のみからは見えない主観的事情を具体的に立証していく手法は、置き引き類型にも共通いたします。
また、在留資格を喪失された方が不法残留で起訴された事案において、公的書類の乏しい困難な状況の下で有利な資料を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することで、在留特別許可を獲得した事例もございます。刑事手続が入管手続へ接続する局面にも、一貫して対応してまいりました。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携してワンストップで対応が可能です。
なお、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
おわりに
空港や駅での一件は、ご本人にとってはほんの数分の出来事であっても、その後の在留と再来日の可否にまで及ぶ問題となり得ます。だからこそ、最初の数日をどう過ごすかが決定的に重要です。ご家族が日本語での手続に不慣れであることは、少しも不利な事情ではございません。適切な弁護人を選任することで、道は開けてまいります。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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