在留特別許可の申請権者とは|申請できる人と時期、刑事事件との関係を弁護士が解説
2026/10/11
在留特別許可の申請権者とは、在留特別許可を自ら申請することができる人をいい、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人がこれに当たります(入管法50条2項)。
令和5年改正法(令和6年6月10日施行)によって本人が申請する手続が設けられましたが、誰でもいつでも申請できるわけではありません。入管の退去強制手続に入り、収容されるか監理措置に付されてはじめて申請権者になります。刑事事件を抱える外国人の場合、判決が確定するまでは通常この段階に至らないため、その期間をどう使うかが結果を左右します。
本記事の要点
- 申請できるのは、収容令書により収容されたか、監理措置決定を受けた外国人本人です(入管法50条2項)。
- 退去強制令書が発付された後は、申請することができません(同条3項)。
- 法務大臣は、申請がなくても職権で在留特別許可をすることができますが、申請すれば不許可の場合に理由を付した書面で知らされます(同条1項・10項)。
- 刑事判決を理由とする場合、判決確定前は入管の手続に入っていないため申請できず、その期間が配偶者の地位を整える準備期間になります。
在留特別許可の申請権者とは誰ですか。
入管の退去強制手続の中で、収容令書により収容された外国人と、監理措置決定を受けた外国人です。申請するのは本人であり、配偶者や親が本人に代わって申請者になる仕組みは条文上置かれていません。
「前項の規定による許可(以下この条において「在留特別許可」という。)の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。」(入管法50条2項)
収容と監理措置は、退去強制手続を進める間の本人の身柄の扱いです。主任審査官は、容疑者を収容するか、収容しないで監理措置に付すかを審査します(入管法39条2項)。どちらの扱いになっても、申請権者になる点は同じです。収容令書の仕組みは収容令書とはで、監理措置は監理措置とはで説明しています。
申請できる時期は、いつからいつまでですか。
収容又は監理措置決定の時点から、退去強制令書が発付されるまでです。認定に服した場合は、その日から3日以内という短い期限がかかります。
| 手続の段階 | 在留特別許可の申請 | 根拠 |
|---|---|---|
| 刑事事件の捜査・公判中(判決確定前) | 通常は入管の手続に入っていないため、できない | 入管法50条2項 |
| 入国警備官の違反調査中(収容・監理措置の前) | できない | 同上 |
| 収容令書による収容後・監理措置決定後 | できる | 入管法50条2項 |
| 認定・判定に服した後、異議の申出が理由なしとされた後 | 3日以内に申請しないと退去強制令書が発付される | 入管法47条5項2号、48条10項、49条7項 |
| 退去強制令書の発付後 | できない | 入管法50条3項 |
3日の期限の詳しい仕組みは在留特別許可申請の「3日」とはをご覧ください。
申請しなくても、在留特別許可がされることはありますか。
あります。法務大臣は職権でも在留特別許可をすることができます。ただし、自ら申請しておくことには、不許可の場合に理由を書面で知らされるという意味があります。
「当該外国人からの申請により又は職権で、法務省令で定めるところにより、当該外国人の在留を特別に許可することができる。」(入管法50条1項)
「法務大臣は、在留特別許可の申請があつた場合において在留特別許可をしない処分をするときは、法務省令で定める手続により、速やかに理由を付した書面をもつて、当該申請をした外国人にその旨を知らせなければならない。」(入管法50条10項)
不許可の理由が書面で示されれば、その後に取消訴訟などで争う場合の出発点になります。在留を希望する事情があるなら、職権に期待するのではなく、資料を整えて申請するのが基本です。
配偶者や家族は、申請手続に関われますか。
申請者は本人ですが、家族は資料の提出や陳述、監理人として、手続を実質的に支える立場にあります。
在留特別許可の判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間とその間の法的地位などが考慮されます(入管法50条5項)。婚姻の実体を示す資料や配偶者の陳述書は、家族でなければ用意できません。また、監理措置は監理人による監理に付する措置であり(入管法44条の2第1項)、配偶者が監理人となって本人の生活を支えることもあります。収容された本人が16歳未満であるなどの場合には、同居する配偶者や親族が監理措置を請求できる規定もあります(同条5項)。
刑事事件の途中では、なぜ申請できないのですか。
刑事判決を理由とする退去強制事由は、判決の確定によって生じるものとして運用されており、それまでは入管の収容や監理措置の前提がないからです。
たとえば、別表第一の在留資格の人が窃盗や詐欺などで拘禁刑に処せられた場合(入管法24条4号の2)、1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合(同条4号リ)は、判決が確定してから入管の違反調査が本格的に始まります。薬物事件は罰金や執行猶予でも、有罪の判決を受ければ該当します(同条4号チ)。なお、不法残留や不法入国は判決を待たずにそれ自体が退去強制事由となるため、扱いが異なります。
申請権者になるまでの期間に、何をしておくべきですか。
配偶者の在留上の地位を、永住者又は日本人(帰化)にまで引き上げることです。申請できるようになってから動いたのでは、多くの場合間に合いません。
公表事例を見ると、近い刑事処分でも配偶者の在留資格で結論が分かれています。令和7年分(2025年)・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例は、入管法違反(不法残留)で懲役1年・執行猶予3年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の判決を受けた方で、配偶者が永住者であり「永住者の配偶者等(1年)」が許可されました。これに対し、同年分・同類型の不許可第1事例は、偽造在留カード行使で懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受け、配偶者が「技術・人文知識・国際業務」でした。
判決確定までの時間は、上訴を含めて正当な防御を尽くす中で生まれます(控訴の意味は刑事事件の控訴を参照)。当事務所は、有罪判決を受けた方について、この期間に配偶者の地位と家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、結果は事案ごとに異なります。
申請権者になったら、まず何をすればよいですか。
収容又は監理措置決定を受けた時点で、速やかに申請書と資料を整え、申請の時期を決めることです。
- 申請しない旨の文書など、意味の分からない書面には署名しない(入管法47条5項1号)
- 婚姻の届出記録、住民票、配偶者の在留カード、同居や家計の共同を示す資料をそろえる
- 配偶者や子の陳述書を準備し、家族関係を具体的に示す
- 公表事例と照らし合わせ、自分の事案に近い許可例を主張の軸に据える
家族が入管に収容された、監理措置の通知が届いたという段階になったら、すぐにご相談ください。
よくある質問
Q1. 監理措置を受けて自宅で生活していても、在留特別許可を申請できますか。
できます。入管法50条2項は、収容令書により収容された外国人と並んで、監理措置決定を受けた外国人を申請権者としています。収容されていないからといって申請が遅れることのないよう注意してください。
Q2. 刑務所で服役している間に申請できますか。
刑の執行のために刑事施設にいることは、入管法50条2項にいう収容令書による収容とは別のものです。通常は、入管の手続に移り、収容令書による収容又は監理措置決定を受けてから申請することになります。服役中から家族と資料の準備を進めておくことが大切です。
Q3. 配偶者が技術・人文知識・国際業務の場合でも申請できますか。
申請できるかどうかは配偶者の在留資格とは関係なく、入管法50条2項の要件で決まります。ただし評価は異なり、配偶者が別表第一の在留資格で本人に刑事処分がある公表事例8件は、いずれも不許可でした。判決確定までに配偶者の永住許可などを検討する意味は大きいといえます。
Q4. 申請せずに職権での許可を待つことに、不利益はありますか。
法務大臣は職権でも在留特別許可をすることができますが(入管法50条1項)、申請していれば、不許可の場合に理由を付した書面で通知されます(同条10項)。その後の争い方を考えるうえでも、申請しておくのが基本です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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