違反調査とは|入国警備官の調査の流れと、取調べで伝えるべき家族の事情を弁護士が解説
2026/10/11
違反調査とは、入国警備官が、退去強制事由(入管法24条各号)に該当すると思われる外国人について行う入管の調査をいい、入管法27条以下に定められています。
違反調査は、退去強制手続の最初の段階です。その結果、退去強制事由に当たる疑いの相当の理由があれば、主任審査官が収容か監理措置かを審査し、そこから在留特別許可の申請ができるようになります。刑事事件を経た外国人の場合、違反調査は判決が確定した後に本格化するのが通常であり、その前後の対応が家族の将来を左右します。
本記事の要点
- 違反調査は入国警備官が行う入管の調査で、警察や検察による刑事事件の取調べとは別の手続です(入管法27条)。
- 調査の結果、退去強制事由に当たる疑いの相当の理由があれば主任審査官に通知され、収容か監理措置かが審査されます(同法39条)。
- 刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるものとして運用されており、違反調査も通常はその後に始まります。
- 違反調査では事実を正確に話すことが基本で、虚偽の申告はガイドライン上の消極要素になります(在留特別許可に係るガイドライン第2の9)。
違反調査とは何ですか。
入管の入国警備官が、外国人が退去強制事由に当たるかどうかを調べる手続です。調査の結果は主任審査官に通知され、退去強制手続が次の段階へ進みます。
「入国警備官は、第二十七条の規定による違反調査の結果、容疑者が第二十四条各号のいずれかに該当すると疑うに足りる相当の理由があると認めるときは、第四十三条第一項の規定により容疑者を収容した場合を除き、主任審査官に対し、その旨を通知するものとする。」(入管法39条1項)
入国警備官は、本人から事情を聴き、資料を確認して、入管法24条各号のどれかに当たる疑いがあるかを調べます。相当の理由があると認められると、主任審査官が、監理措置に付すか収容するかを審査します(同条2項)。
違反調査は、刑事事件の取調べとどう違いますか。
担当する機関、目的、結果のいずれも異なります。刑事事件の取調べは犯罪と刑罰を扱い、違反調査は日本に在留を続けられるかどうかに直結する退去強制事由を扱います。
| 項目 | 刑事事件の取調べ | 入管の違反調査 |
|---|---|---|
| 担当 | 警察官・検察官 | 入国警備官 |
| 調べる対象 | 犯罪の成否と情状 | 入管法24条各号の退去強制事由に当たるか |
| 根拠となる法律 | 刑事訴訟法 | 入管法27条以下 |
| その後の流れ | 起訴・不起訴、判決 | 主任審査官への通知、収容又は監理措置、違反審査 |
| 在留特別許可との関係 | 判決の内容が退去強制事由を左右する | 在留特別許可を申請できる段階への入口 |
刑事事件と入管手続を一体で見通すことの重要性は外国人の刑事事件と入管手続の一貫弁護で説明しています。
刑事事件の後、違反調査はいつ始まりますか。
刑事判決を理由とする場合は、判決が確定した後に始まるのが通常です。「処せられた」「有罪の判決を受けた」という条文の要件は、判決の確定を指すものとして運用されているからです。
たとえば、別表第一の在留資格の人が窃盗や詐欺などで拘禁刑に処せられた場合(入管法24条4号の2。執行猶予付きでも該当し、罰金のみなら該当しません)、薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた場合(同条4号チ。罰金・執行猶予でも該当)、1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた場合(同条4号リ)がこれに当たります。一方、不法残留や不法入国は、判決を待たずにその事実自体が退去強制事由になります。退去強制事由の全体像は退去強制事由とはをご覧ください。
判決確定までの時間は、捜査と公判で正当な防御を尽くす中で生まれます。この時間を違反調査の準備に充てられるかどうかが、その後の結果を大きく分けます。
違反調査の段階で、在留特別許可を意識すべきなのはなぜですか。
違反調査で話した家族関係や在留の経緯は、その後の在留特別許可の判断で考慮される事情と重なるからです。
「法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断に当たつては、当該外国人について、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなつた経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となつた事実及び人道上の配慮の必要性を考慮するほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものとする。」(入管法50条5項)
違反調査の目的は退去強制事由の有無を調べることですが、本人が日本に入国した経緯、在留期間、家族との生活などは、在留特別許可の判断材料そのものです。違反調査の段階で話した内容と、後で在留特別許可の申請書に書いた内容が食い違えば、説明に苦労することになります。
違反調査の取調べでは、何を話せばよいですか。
事実を正確に、そして家族関係や日本での生活の基盤を具体的に話すことです。分からないことは分からないと伝え、推測で答えないことも大切です。
- 婚姻の時期、同居を始めた時期、子の有無と年齢
- 配偶者の在留資格(日本人、永住者、定住者、技術・人文知識・国際業務など)
- 日本での仕事、住まい、地域や学校とのつながり
- 日本に在留を希望する理由と、帰国した場合に家族が受ける影響
反対に、事実と違う説明は避けなければなりません。ガイドラインは次のように述べています。
「当該外国人が、退去強制手続又は在留諸申請等において、虚偽の内容の申告を行ったことや、当該外国人と本国との結び付きが顕著なことは、消極要素として考慮されます。」(在留特別許可に係るガイドライン第2の9)
公表事例を見ても、平成28年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例のように「逮捕後に婚姻」と記載された事案は、ほぼ例外なく不許可となっています。婚姻がいつから続いているのかを、正確に、資料とともに示すことが重要です。
違反調査の後、手続はどう進みますか。
主任審査官が収容か監理措置かを決め、入国審査官の違反審査、認定へと進みます。在留特別許可は、収容又は監理措置決定の時点から申請できます。
- 入国警備官の違反調査と主任審査官への通知(入管法39条1項)
- 主任審査官による収容か監理措置かの審査(同条2項)
- 在留特別許可の申請が可能になる(同法50条2項)
- 入国審査官による違反審査と認定(同法45条、47条)
- 認定に服した場合は3日以内に在留特別許可を申請する(同法47条5項2号)
収容の仕組みは収容令書とは、その次の段階は違反審査と認定とはで説明しています。
違反調査が始まる前に、家族は何を準備すべきですか。
配偶者の在留上の地位を整えること、そして婚姻と生活の実体を示す資料をそろえることです。
ガイドラインが婚姻を特に考慮する積極要素とするのは、配偶者が日本人・特別永住者か、別表第二の在留資格(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者)で在留している場合です(第2の2(1)ウ、(2)ウ)。配偶者が別表第一の在留資格であれば、判決確定までの間に永住許可や帰化を目指すことが現実的な対策になります。当事務所には、刑事事件で有罪となった方について、確定までの期間に家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、許可を約束できるものではありません。
家族が逮捕された段階から、刑事弁護と入管手続の両方を見据えて相談していただくことをお勧めします。
よくある質問
Q1. 違反調査は、刑事裁判の途中でも行われますか。
刑事判決を理由とする退去強制事由は判決の確定によって生じるものとして運用されているため、その場合の違反調査は通常、判決確定後に始まります。ただし、不法残留や不法入国のように判決を待たずに退去強制事由となるものは、扱いが異なることがあります。
Q2. 違反調査で婚姻や子どものことを話さないと、不利になりますか。
在留特別許可の判断では家族関係が考慮されます(入管法50条5項)。違反調査の段階から、婚姻の時期や同居の状況、配偶者の在留資格を正確に伝えておくことが、後の申請との一貫性を保つうえで大切です。
Q3. 違反調査で事実と違うことを話してしまったら、どうなりますか。
ガイドラインは、退去強制手続での虚偽の申告を消極要素として挙げています(第2の9)。誤りに気づいたときは、そのままにせず、早めに弁護士に相談して訂正の方法を検討してください。
Q4. 違反調査を受けたら、すぐに強制送還されるのですか。
すぐに送還されるわけではありません。違反調査の後、収容又は監理措置、入国審査官の違反審査と認定、口頭審理などの手続を経て、退去強制令書の発付に至ります。その間に在留特別許可を申請できます(入管法50条2項)。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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