執行猶予判決の後、入管はいつ来るのか|判決確定から違反調査・在留期限までを弁護士が解説
2026/10/11
執行猶予付き判決を受けても、入管が動くのは判決が確定した後であり、退去強制の対象になるかどうかは、本人の在留資格と罪名によって決まります。別表第一の在留資格の人が窃盗・詐欺・傷害など一定の罪で拘禁刑に処せられた場合や、薬物事件の場合は、執行猶予付きでも退去強制事由に当たります。
反対に、永住者など別表第二の在留資格の人が薬物以外の罪で刑の全部の執行猶予を受けた場合、判決そのものは退去強制事由になりません。
本記事の要点
- 判決は言渡しから14日の控訴期間が過ぎると確定し、刑事判決を理由とする退去強制事由はその時点で生じるものとして運用されています(刑事訴訟法373条)。
- 別表第一の在留資格の人が一定の罪で拘禁刑に処せられると、執行猶予付きでも入管法24条4号の2に当たります。
- 薬物事件は在留資格を問わず執行猶予でも4号チに当たり、それ以外で刑の全部の執行猶予なら4号リには当たりません。
- 該当する場合、入管の違反調査を経て、主任審査官が監理措置に付すか収容するかを審査します(入管法39条2項)。
- 公表事例で執行猶予付き判決の後に許可された10件に、配偶者が別表第一の在留資格である事案はありません。
執行猶予付き判決でも、退去強制の対象になりますか。
在留資格と罪名によっては、なります。執行猶予が付けば安心というわけではありません。
| 本人の在留資格 | 罪名 | 執行猶予付き判決の扱い |
|---|---|---|
| 別表第一(技術・人文知識・国際業務、留学、家族滞在など) | 窃盗・詐欺・傷害など4号の2に挙げられた罪 | 該当する(入管法24条4号の2) |
| 在留資格を問わない | 覚醒剤・大麻・麻薬などの薬物関係法令違反 | 該当する(同条4号チ) |
| 別表第二(永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者) | 薬物以外 | 判決自体は退去強制事由に当たらない(同条4号リは刑の全部の執行猶予を除外) |
| 在留期間が切れている、不法入国など | 罪名を問わない | 判決とは別に、すでに退去強制事由がある |
4号リは、1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象としつつ、次のように定めています。
「ただし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。」(入管法24条4号リ)
4号の2の対象となる罪の範囲は入管法24条4号の2とはで詳しく説明しています。
判決は、いつ確定しますか。
検察官も被告人も控訴しなければ、控訴期間の14日が過ぎた時点で確定します。
「控訴の提起期間は、十四日とする。」(刑事訴訟法373条)
上訴を放棄すれば、期間の経過を待たずに確定し、放棄した事件について更に上訴することはできません(刑事訴訟法359条・361条)。在留の面では、確定が早まるほど準備の時間は短くなります。
事実や量刑に争う点があれば控訴でき、その間は判決が確定しません。被告人だけが控訴した事件では、原判決より重い刑を言い渡すことはできません(刑事訴訟法402条)。
確定した後、入管はどのような手順で動きますか。
退去強制事由に当たる場合、入管の違反調査が行われ、主任審査官が監理措置に付すか収容するかを審査します。判決の確定から入管が動くまでの期間に決まった目安はなく、事案によって異なります。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 違反調査 | 入国警備官が退去強制事由の有無を調べる | 入管法39条1項 |
| 収容又は監理措置 | 主任審査官が審査して決める | 入管法39条2項・44条の2 |
| 違反審査・認定 | 入国審査官が退去強制対象者かを審査する | 入管法45条・47条 |
| 在留特別許可の申請 | 収容又は監理措置決定の後に申請できる | 入管法50条2項 |
勾留されたまま判決を受け、すでに在留期間が切れているなど別の退去強制事由がある方は、釈放と同時に入管の手続に移ることもあります。
入管から呼出しを受けたり、収容されたりしたとき、何に注意しますか。
申請の期限を逃さないことです。入国審査官の認定に服した場合、その日から3日以内に在留特別許可を申請しなければ、退去強制令書が発付されます(入管法47条5項2号)。発付された後は申請できません(入管法50条3項)。
監理措置に付された場合は、その条件を守ることが前提です。執行猶予判決と退去強制の関係は執行猶予判決と退去強制もご覧ください。
在留期限が残っている場合、更新はどうなりますか。
退去強制事由に当たる場合は、在留期限が残っていても退去強制の手続は進みます。当たらない場合でも、更新の審査で判決の内容が事情として見られる可能性はあります。
在留期間の更新は、「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるとき」に限り許可されます(入管法21条3項)。日本人の配偶者等や定住者など更新が必要な在留資格の方は、執行猶予判決の後の更新で、事情を丁寧に説明する準備が必要です。期間満了前に申請すれば、処分がされるまで、最長で満了の日から2月を経過するまで在留を続けられます(入管法21条4項・20条6項)。判決と更新の関係は刑事判決と在留期間の更新で説明しています。
公表事例では、執行猶予付き判決を受けた人は許可されていますか。
許可された事例はありますが、配偶者の在留資格によって結論がはっきり分かれています。平成26年分から令和7年分までの、刑事処分のある公表事例153件のうち、執行猶予付き判決の事案は83件で、許可は10件でした。
| 公表事例 | 本人の刑事処分 | 配偶者 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和6年分(6月10日以降)・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第3事例 | 道路交通法違反 懲役1年2月・執行猶予3年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当) | 定住者 | 許可(定住者) |
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例 | 入管法違反(不法残留) 懲役1年・執行猶予3年 | 永住者 | 許可(永住者の配偶者等) |
| 令和6年分(6月9日まで)・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第3事例 | 詐欺・電子計算機使用詐欺等 懲役1年6月・執行猶予3年 | 技術・人文知識・国際業務 | 不許可 |
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・不許可第1事例 | 入管法違反(偽造在留カード行使) 懲役1年6月・執行猶予3年 | 技術・人文知識・国際業務 | 不許可 |
許可10件は、配偶者が日本人・永住者・定住者など別表第二の側にあるか、本人が永住者であるか、日本人の実子を監護養育している事案で、配偶者が別表第一の在留資格の事案はありません。当事務所の精査では、配偶者が別表第一で本人に刑事処分(執行猶予を含みます)がある公表事例は8件あり、すべて不許可でした。
執行猶予判決の前後で、家族は何をしておくべきですか。
判決の前から、配偶者の在留上の地位を引き上げる準備と、婚姻の実体の記録を進めておくことです。
別表第一の在留資格の方の場合、4号の2は拘禁刑に処せられたことを要件としているため、捜査段階で不起訴や罰金にとどまれば同号には当たりません(薬物事件は罰金でも4号チに当たります)。そのうえで、配偶者の永住許可や帰化の申請を早めに始め、同居・家計・子の監護の資料をそろえておきます。配偶者の審査は申請者本人の要件で行われますが、家族の状況も含めて確認されることがあるため、弁護士と相談しながら進めてください。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決確定までの期間を使って家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。ただし、結論は個別の事情によって異なり、許可をお約束できるものではありません。全体の考え方は在留特別許可と配偶者の在留資格にまとめています。
よくある質問
Q1. 控訴しなければ、判決はいつ確定しますか。
検察官も控訴しなければ、控訴期間の14日が過ぎた時点で確定します(刑事訴訟法373条)。上訴を放棄した場合は、その時点で確定に向かいます。
Q2. 永住者ですが、執行猶予付き判決を受けました。退去強制されますか。
薬物事件であれば、執行猶予付きでも入管法24条4号チに当たります。薬物以外で刑の全部の執行猶予であれば、4号リには当たらず、4号の2は別表第一の在留資格の人が対象です。ほかの退去強制事由がないかも含め、確認が必要です。
Q3. 留学生ですが、窃盗で罰金になりました。退去強制になりますか。
入管法24条4号の2は拘禁刑に処せられたことを要件としているため、罰金のみであれば同号には当たりません。ただし、在留期間の更新などでは事情として考慮される可能性があります。
Q4. 執行猶予期間中でも、在留特別許可が出ることはありますか。
あります。令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・許可第1事例は、不法残留で執行猶予付き判決を受けた方について、配偶者が永住者の事案で許可されています。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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中文版(简体):判缓刑后入管何时会来|从判决确定到违反调查及在留期限(律师解说)