刑事事件中の在留期間更新|逮捕・起訴されても在留期限を切らさないために弁護士が解説
2026/10/11
刑事事件の最中であっても、在留期間の更新申請は満了日までに必ず行い、在留を切らさないことが、本人と家族の在留を守るための前提条件です。逮捕・勾留されていても在留期限は止まらず、満了日を過ぎれば、判決の内容とは関係なく不法残留という退去強制事由が生じてしまうからです。
判決確定までの時間を使って配偶者の永住許可や帰化を進めるという方針も、在留期間がつながっていてこそ成り立ちます。
本記事の要点
- 逮捕・勾留中でも在留期限は進み、満了日を過ぎれば判決とは無関係に不法残留となります。
- 満了日までに更新を申請していれば、処分が出るまで、最長で満了日から2か月、従前の在留資格のまま在留できます(入管法20条6項、21条4項)。
- 更新は「相当の理由」があるときに限り許可されるため、刑事事件の状況を偽らず、生活や活動の実態を資料で示すことが大切です。
- 更新が許可されても、判決が確定すれば入管法24条4号の2などの退去強制事由は別に生じるため、配偶者の在留上の地位を引き上げる準備を並行させます。
刑事事件の最中でも、在留期間の更新は必要ですか。
必要です。刑事手続と在留期間はまったく別に進むため、勾留中であっても、保釈中であっても、在留期限が来れば更新の申請をしなければなりません。
「前項の規定により在留期間の更新を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続により、法務大臣に対し在留期間の更新を申請しなければならない。」(入管法21条2項)
刑事判決を理由とする退去強制事由は、判決が確定するまでは生じません。ところが、その前に在留期間が切れてしまうと、オーバーステイ(不法残留)そのものが退去強制事由になります。こうなると、入管は刑事事件の結論を待たずに退去強制の手続を進めることができ、捜査や裁判の段階で丁寧に対応して確保した時間が、一気に失われます。
満了日までに申請すれば、結果が出る前に期限が過ぎても大丈夫ですか。
満了日までに申請していれば、処分が出るまでの間、最長で満了日から2か月、従前の在留資格のまま在留できます。いわゆる特例期間です。
入管法21条4項が準用する20条6項は、在留期間の満了後も「当該処分がされる時又は従前の在留期間の満了の日から二月を経過する日が終了する時のいずれか早い時までの間」は在留できると定めています。ただし、30日以下の在留期間の人は対象外で、満了日を過ぎてから申請した場合にも特例期間はありません。仕組みの詳細は在留期間の特例期間とはで整理しています。
特例期間は、不許可の処分がされればその時点で終わります。期限を守った人に与えられる最低限の猶予と考えてください。
刑事事件を抱えていると、更新は不許可になりますか。
刑事事件があることだけで直ちに不許可と決まるわけではありませんが、更新は法務大臣が「相当の理由」を認めたときに限り許可されるため、審査が慎重になることは覚悟しておく必要があります。
「前項の規定による申請があつた場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。」(入管法21条3項)
条文が「提出した文書により」と定めているとおり、判断の材料は申請人が出す書類です。在留資格に応じた活動や生活が続いていること、家族の状況、刑事事件の進み具合などを、資料で丁寧に示すことが大切です。
一方で、事件を隠したり、事実と異なる説明をしたりすることは決してしないでください。在留特別許可のガイドラインは、在留諸申請での虚偽申告を消極要素に挙げています。
「当該外国人が、退去強制手続又は在留諸申請等において、虚偽の内容の申告を行ったことや、当該外国人と本国との結び付きが顕著なことは、消極要素として考慮されます。」(在留特別許可に係るガイドライン第2の9)
何をどう書くかは、刑事弁護の方針と合わせて弁護人と決めるのが安全です。
刑事手続の段階ごとに、在留期限で何に気をつければよいですか。
段階ごとに、本人の在留期間がいつ満了するかと、判決がいつ確定しそうかを並べて確認します。両者の前後関係によって、やるべきことが変わります。
| 刑事手続の段階 | 在留上の状況 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 逮捕・勾留中 | 在留期限は進行している | 家族と弁護人で満了日を確認し、申請に必要な書類の準備を始める |
| 起訴後・保釈中 | 判決前なので刑事判決による退去強制事由はまだない | 満了日までに更新を申請し、住居など入管法上の届出も怠らない |
| 第1審判決の後 | 控訴期間は14日(刑事訴訟法373条)。この間は確定していない | 控訴するかどうかを判断し、在留期限との関係を確認する |
| 控訴審・上告審 | 判決は確定していない | 審理が長引く間に満了日が来ないか確認し、更新を重ねる |
| 判決確定後 | 入管法24条4号の2などに当たれば退去強制事由が生じる | 入管の手続に備え、在留特別許可の主張と資料を準備する |
保釈中は、更新の準備をする絶好の時間でもあります。その間にやっておくべきことは保釈中にやっておくべき在留の準備にまとめました。
更新が許可されても、判決が確定したらどうなりますか。
在留期間が残っていても、退去強制事由に当たる判決が確定すれば、退去強制の手続の対象になり得ます。更新は在留期間を延ばすだけで、退去強制事由を消すものではありません。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」や「留学」など別表第一の在留資格で在留する人が、窃盗・詐欺・傷害など入管法24条4号の2に挙げられた罪で拘禁刑に処せられた場合は、執行猶予が付いても同号に当たります。薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた場合は、罰金でも在留資格を問わず4号チに当たります。条文の「処せられた」「有罪の判決を受けた」は、判決の確定を指すものとして運用されています。
更新で在留をつないでいる間に、判決確定後を見すえて配偶者の在留上の地位を整えておく必要があります。
配偶者の在留期限にも注意が必要ですか。
必要です。在留特別許可で婚姻を有利に評価してもらうには、配偶者自身が適法に在留し続けていることが前提であり、配偶者の永住許可や帰化を目指すうえでも、在留の空白は致命的です。
ガイドラインが婚姻を「特に考慮する積極要素」とするのは、配偶者が日本人・特別永住者の場合(第2の2(1)ウ)と、永住者・定住者など別表第二の在留資格で在留する場合(第2の2(2)ウ)です。配偶者が別表第一の在留資格にとどまる場合は、判決確定までの時間を使って永住許可や帰化を進めることが現実的な目標になります。永住許可のガイドラインは、納税や公的年金・公的医療保険料の納付、入管法上の届出などの公的義務を適正に果たしていることも求めています。事件で家の中が混乱している時期こそ、配偶者の更新や届出に注意してください。全体の考え方は在留特別許可と配偶者の在留資格をご覧ください。
在留期限について、弁護士は何をしますか。
最初の接見で本人と配偶者の在留期限を確認し、刑事事件の見通しと一緒に管理します。
- 本人と配偶者の在留カードの満了日を確認し、更新申請の時期を決める
- 身柄を拘束されている場合の申請の進め方と必要書類を確認し、家族と分担する
- 刑事事件の状況をどう説明するかを、弁護方針と合わせて決める
- 判決確定までの見通しを立て、配偶者の永住許可・帰化の準備を並行させる
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、判決が確定するまでの期間に家族の在留の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、結論は事案ごとに異なり、許可をお約束できるものではありません。早めにご相談ください。刑事事件と更新の一般的な関係は刑事事件と在留期間の更新でも取り上げています。
よくある質問
Q1. 勾留されていて本人が入管に行けません。更新はできないのですか。
身柄を拘束されていても、在留期限が来る以上、更新の手当てをしなければなりません。申請の進め方や必要書類は事案によって異なるため、早めに弁護人に相談し、家族と分担して準備してください。満了日を過ぎてからの申請には特例期間がない点にも注意が必要です(入管法20条6項、21条4項)。
Q2. 更新を申請する際、刑事事件のことは説明しなければなりませんか。
事実と異なる申告は決してしてはいけません。在留諸申請での虚偽申告は、在留特別許可のガイドラインでも消極要素とされています(第2の9)。どの資料で何を説明するかは、刑事弁護の方針と関わるため、弁護人と相談して決めてください。
Q3. 更新が不許可になったら、すぐに不法残留になりますか。
特例期間は、申請に対する処分がされた時に終わります(入管法20条6項、21条4項)。不許可の後は在留の根拠が問題になるため、通知を受けたら直ちに弁護士に相談してください。
Q4. 在留期間をつないでおくことは、在留特別許可にも役立ちますか。
役立ちます。ガイドラインは、適法に在留し、別表第一の一の表・二の表や別表第二の在留資格に基づく活動を行っていた期間が長いことを積極要素としています(第2の5)。在留を切らさないことは、それ自体が将来の主張の土台になります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
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