実刑判決後、刑務所から入管へ|引渡し・収容・監理措置と在留特別許可の見通しを弁護士が解説
2026/10/11
実刑判決が確定して服役した外国人は、仮釈放や刑期満了で刑務所を出る時点で入管の退去強制手続に移り、そこで収容されるか監理措置に付されるかが決まるのが通常の流れで、在留特別許可もその手続の中で申請することになります。
1年を超える実刑の場合、在留特別許可には入管法50条1項ただし書の「特別の事情」が必要になり、ハードルは一段と上がります。それでも、公表事例には実刑判決を受けながら許可された例があります。服役中の時間をどう使うかが、その後を左右します。
本記事の要点
- 1年を超える実刑が確定すると入管法24条4号リの退去強制事由に当たり、在留特別許可には50条1項ただし書の「特別の事情」が必要になります。
- 1年以下の実刑でも、別表第一の在留資格の人の一定の罪(4号の2)や薬物事件(4号チ)は退去強制事由になります。
- 服役中も在留期間は進み、期限が切れると不法残留という別の退去強制事由も加わります。
- 入管の手続に移った後は、主任審査官が収容か監理措置かを審査し、収容された人は監理措置を請求できます(入管法39条2項・44条の2第4項)。
- 令和7年分の公表事例では、窃盗による懲役(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)1年2月から1年6月の実刑の3件がただし書により許可されましたが、配偶者が別表第一の在留資格の事案はありません。
実刑判決が確定すると、在留はどうなりますか。
刑の長さと本人の在留資格・罪名によって、当たる退去強制事由と、在留特別許可のハードルが変わります。
| 判決 | 当たり得る退去強制事由 | 在留特別許可の判断 |
|---|---|---|
| 1年を超える実刑 | 入管法24条4号リ | 50条1項ただし書の「特別の事情」が必要 |
| 刑の一部の執行猶予で、実刑部分が1年を超える | 同上 | 同上 |
| 1年以下の実刑(別表第一の人の一定の罪) | 同条4号の2 | ガイドラインに基づく総合判断 |
| 1年以下の実刑(薬物事件) | 同条4号チ | 同上 |
1年を超える実刑の場合について、入管法50条1項ただし書は、許可を次の場合に限っています。
「本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る。」(入管法50条1項ただし書)
服役中に在留期限が切れたら、どうなりますか。
刑事判決とは別に、不法残留という退去強制事由も加わります。公表事例にも、平成26年分・その他・不許可第6事例及び第7事例のように、特記事項に「刑務所服役中に不法残留となったもの」と記載された例があります。
服役が決まった時点で在留期間の満了日を確認し、弁護士と早めに相談しておく必要があります。
刑務所から入管へは、どのように移りますか。
服役中に入管の違反調査が進められ、仮釈放や刑期満了で刑務所を出る時に入管へ引き渡されて、収容されるのが一般的な流れです。もっとも、入管法上は、主任審査官が監理措置に付すか収容するかを審査することになっています(入管法39条2項)。
| 段階 | 主な手続 | 家族ができること |
|---|---|---|
| 服役中 | 入管の違反調査 | 配偶者の申請、資料の収集、監理人の検討 |
| 仮釈放・刑期満了 | 入管への引渡し、収容又は監理措置 | 監理措置の請求の準備 |
| 収容又は監理措置の後 | 違反審査・認定、在留特別許可の申請 | 申請書類・陳述書の提出 |
刑務所からの移行と監理措置の実際は、刑務所出所後の監理措置で詳しく説明しています。
収容された後、監理措置を求めることはできますか。
できます。収容された本人は、主任審査官に対し、自己を監理措置に付することを請求できます(入管法44条の2第4項)。本人が16歳未満の場合や、病気などで自ら請求できない場合は、同居する配偶者などが代わって請求できます(同条5項)。
「主任審査官は、第四項の請求により又は職権で、被収容容疑者が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により当該被収容容疑者が受ける不利益の程度その他の事情を考慮し、当該被収容容疑者を放免してこの章に規定する退去強制の手続を行うことが相当と認めるときは、その者を放免して監理措置に付する旨の決定をするものとする。」(入管法44条の2第6項)
監理措置には監理人が必要で、300万円を超えない範囲で保証金の納付を求められることもあります(同項)。家族の生活の状況、住居、監理人の候補を、出所前に整えておくことが大切です。
在留特別許可の申請は、いつ、どのように行いますか。
収容されたか監理措置決定を受けた後に申請でき(入管法50条2項)、入国審査官の認定に服した場合は3日以内に申請しなければ退去強制令書が発付されます(同法47条5項2号)。1年を超える実刑の場合は、ただし書の「特別の事情」を正面から主張する必要があります。
ガイドラインは、「特別の事情」を次のように説明しています。
「「特別の事情」とは、このような者であっても、例えば、当該外国人が、本邦で疾病の治療を受けている者で、相当期間本邦で治療を受けなければ生命に危険が及ぶ具体的なおそれがあることなど、在留を許可しないことが人道的見地から酷に過ぎると認められる事情をいいます。」(在留特別許可に係るガイドライン第1の1(注1))
考え方の詳細は在特の特別の事情とはをご覧ください。
公表事例では、実刑判決を受けた人は許可されていますか。
許可された例はありますが、量刑と家族関係の両方に限りがあります。平成26年分から令和7年分までの刑事処分のある公表事例153件のうち、実刑判決の事案は52件で、ただし書により許可されたのは6件です。
| 公表事例 | 本人の刑事処分 | 家族関係など | 結論 |
|---|---|---|---|
| 令和7年分・配偶者が日本人の場合・ただし書該当許可第1事例 | 窃盗 懲役1年2月の実刑 | 日本人配偶者、婚姻約33年4月 | 許可(日本人の配偶者等) |
| 令和7年分・配偶者が正規在留外国人の場合・ただし書該当許可第1事例 | 窃盗 懲役1年2月の実刑 | 配偶者「定住者」、未成年の子3人 | 許可(定住者) |
| 令和7年分・その他・ただし書該当許可第1事例 | 窃盗 懲役1年6月の実刑 | 日系人として本邦で出生し、本邦で教育を受けた | 許可(定住者) |
| 令和7年分・その他・不許可第2事例 | 詐欺等 懲役2年6月の実刑 | 日本人実子の監護養育を主張、在留特別許可歴あり | 不許可 |
| 令和7年分・配偶者が日本人の場合・不許可第3事例 | 傷害 懲役5年の実刑 | 配偶者に婚姻継続の意思なし | 不許可 |
令和7年分のただし書許可3件は、いずれも窃盗による懲役1年2月から1年6月の実刑で、配偶者が日本人・定住者であるか、日本で生まれ育った人の事案です。別表第一の在留資格の配偶者を持つ事案はありません。犯罪別の傾向は犯罪別の在留特別許可事例の分析で整理しています。
服役中、家族は何を準備しておくべきですか。
配偶者の在留上の地位を引き上げること、婚姻を続ける意思と実体を示すこと、監理人と住居を確保することです。
配偶者が別表第一の在留資格のままでは、公表事例上の見通しは非常に厳しくなります。永住許可(ガイドライン上、原則10年以上の在留が目安)や帰化(2026年4月1日から運用上原則10年以上の在留)の要件を確認し、早めに申請を検討してください。配偶者の審査は申請者本人の要件で行われますが、家族の状況も含めて確認されることがあるため、弁護士と相談しながら進めます。
令和7年分・配偶者が日本人の場合・不許可第3事例のように、配偶者に婚姻継続の意思がないことは、婚姻を積極要素として主張する前提を失わせます。面会や手紙のやり取り、出所後の同居の予定など、家族のつながりを記録に残しておくことが大切です。
当事務所には、刑事事件で有罪判決を受けた方について、家族の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。ただし、結論は個別の事情によって異なり、許可をお約束できるものではありません。
よくある質問
Q1. 仮釈放になれば、そのまま家に帰れますか。
退去強制事由に当たる場合、仮釈放の時点で入管の手続に移るのが通常です。主任審査官が監理措置に付す決定をすれば、家族と暮らしながら手続を進めることができます(入管法39条2項・44条の2)。
Q2. 1年以下の実刑なら、退去強制にはなりませんか。
4号リには当たりませんが、別表第一の在留資格の人が一定の罪で拘禁刑に処せられた場合は4号の2に、薬物事件は4号チに当たります。在留資格と罪名を確認する必要があります。
Q3. 1年を超える実刑でも、在留特別許可が出ることはありますか。
入管法50条1項ただし書の「特別の事情」が認められれば、許可される余地があります。令和7年分には懲役1年2月から1年6月の実刑で許可された例が3件ありますが、懲役2年6月の実刑で日本人実子の監護養育を主張しながら不許可となった例もあります。
Q4. 入管に収容されたら、家族が監理措置を請求できますか。
請求するのは原則として本人です。本人が16歳未満の場合や病気などで自ら請求できない場合に限り、同居する配偶者などが代わって請求できます(入管法44条の2第5項)。主任審査官が職権で監理措置に付すこともあります。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
舟渡国際法律事務所
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