オーバーステイが関係する刑事事件で相談先を選ぶとき|刑事手続と入管手続の両方を確認する
2026/10/04
オーバーステイ(不法残留)が関係する刑事事件では、不法残留の罪(入管法70条1項5号)に関する刑事手続と、退去強制の手続(同法24条4号ロ)が並行して進み得るため、刑事弁護と入管手続の両方を説明できる相談先かどうかを確認して選ぶことが大切である。
- 不法残留は、刑罰の対象(70条1項5号)であり、退去強制事由(24条4号ロ)にも当たる
- 刑事手続が行われている間も、退去強制の手続は進められる(63条1項)
- 退去強制の手続では、収容するか監理措置に付すかが審査される(39条2項、44条の2)
- 一定の要件を満たせば、退去強制によらず出国命令による出国が認められる(24条の3、55条の85)
- 在留特別許可は、退去強制の手続の中で法務大臣が判断する(50条)
オーバーステイが関係する刑事事件では、相談先をどう選べばよいのか?
刑事手続と入管手続のどちらも、自分の場合にどう進み、互いにどう影響するかを具体的に説明してもらえるかが、選ぶときの基準になる。
不法残留は刑罰と退去強制の両方の対象になり、手続の窓口も検察庁・裁判所と入管庁に分かれる。一方の説明しか受けられないと、もう一方の見通しが分からないまま判断を迫られるおそれがある。具体的な確認点は、後に整理する。
オーバーステイは、どのような罪になるのか?
在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して残留した者は、不法残留の罪として、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処せられ、又はこれが併科される(入管法70条1項5号)。
これとは別に、在留期間を経過して残留していることは、退去強制事由にも当たる(24条4号ロ)。退去強制事由は、刑事処分を受けたかどうかにかかわらず、残留している事実があれば生じるため、罰金や起訴猶予で刑事手続が終わっても、入管の手続が続くことがある。在留期間の更新・変更の許可は在留期間内の外国人の問題であり、期間を経過した後は、退去強制の手続の中で在留特別許可を求めることが中心になる。
刑事手続と退去強制手続は、どのように関係するのか?
二つの手続は別の手続であり、刑事手続が行われている間も、収容や監理措置に付さないままで、退去強制の手続(審査・口頭審理・異議の申出など)を進めることができる(入管法63条1項)。退去強制令書が発付されても、その執行は刑事手続の終了後が原則である(同条2項)。
また、不法残留の罪(70条)の被疑者について、他に罪を犯した嫌疑がないときは、司法警察員は、収容令書が発付されたときは入国警備官に引き渡し、監理措置決定がされたときは釈放するという、通常の検察官送致とは異なる取扱いができる(65条)。退去強制の手続の流れは、次のとおりである。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 違反調査 | 入国警備官が、退去強制事由に該当すると思料する外国人を調査する | 27条 |
| 収容か監理措置かの審査 | 主任審査官が、収容するか、監理措置に付すかを審査する | 39条2項、39条の2、44条の2 |
| 入国審査官への引渡し | 収容したときは、身体を拘束した時から48時間以内に引き渡す | 44条 |
| 審査・認定 | 入国審査官が、退去強制対象者に該当するかを審査し、認定する | 45条、47条3項 |
| 口頭審理・異議の申出 | 認定に異議があれば、通知から3日以内に口頭審理を請求し、その判定にも異議があれば、さらに3日以内に異議を申し出る | 48条、49条 |
| 在留特別許可 | 法務大臣が、特別に在留を許可するかを判断する | 50条 |
| 退去強制令書 | 許可されないときなどに発付され、送還される | 47条5項、51条、52条 |
従来は原則として収容する運用(全件収容主義)が採られていたが、現在は、主任審査官が、逃亡や証拠隠滅のおそれの程度、収容による不利益の程度などを考慮して、収容か監理措置かを審査する(44条の2第1項)。監理措置とは、退去強制とはも参照してほしい。
出国命令制度とは何か。誰が使えるのか?
出国命令は、一定の要件を満たす不法残留の外国人などについて、退去強制の手続によらず、15日を超えない範囲で定める出国期限までに出国することを命じる制度であり、対象者の要件は入管法24条の3、命令は55条の85に定められている。
出国命令を受けたときは、被監理者でない限り、直ちに放免される(47条2項)。要件は、おおむね次のとおりである。
- 違反調査の開始前に、出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭したこと。又は、違反調査の開始後、認定の通知(47条3項)を受ける前に、出国する意思を表明したこと
- 不法就労助長、人身取引、薬物事犯、1年を超える拘禁刑など、入管法24条所定の重い事由に該当しないこと
- 入国後に、窃盗・傷害・詐欺などの罪(24条4号の2と同じ罪名)で拘禁刑に処せられていないこと
- 過去に退去強制を受けたことや、出国命令により出国したことがないこと
- 速やかな出国が見込まれること
出国命令により出国したときの上陸拒否期間は、退去強制による場合より短い。
| 出国の方法 | 上陸拒否期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 出国命令により出国 | 出国した日から1年。ただし、違反調査の開始後に意思を表明した者(24条の3第1号ロ)が短期滞在の活動を行おうとする場合は5年 | 5条1項9号ホ・ヘ |
| 退去強制により送還 | 退去の日から5年(初めての退去強制の場合)、10年(過去に退去強制又は出国命令による出国がある場合など) | 5条1項9号ハ・ニ |
出頭するかどうかは、刑事事件の有無、在留の経緯、家族関係などによって判断が分かれ、出頭が有利に働くとは限らない。要件に当たるかも個別の事情による。出頭する前に、弁護士に相談してほしい。出国命令とはも参照してほしい。
在留特別許可は、どのような場合に問題になるのか?
退去強制の手続の中で、法務大臣が、退去強制対象者に該当する外国人の在留を特別に許可するかを判断する制度であり(入管法50条1項)、許可は保証されない。
判断では、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などが考慮される(50条5項)。刑事事件で処せられた刑は素行などの判断に影響し、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予を受けた者などを除く。)は、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるときに限られる(50条1項ただし書)。申請は、退去強制令書の発付後はできない(同条3項)。在留特別許可とはで、制度の概要を説明している。
刑事弁護と入管手続の両方を見られる相談先かどうかは、何で確認すればよいのか?
次の点を、相談の際に直接尋ねて確認するとよい。
- 刑事手続(不起訴・罰金・執行猶予などの見通し)と、退去強制の手続(収容・監理措置、出国命令、在留特別許可)について、どちらがどの順に進み、互いにどう影響するかを説明してもらえるか
- 刑事処分の結果が在留に及ぼす影響を、「退去強制事由に当たるか」と「在留の許可が得られるか」に分けて説明してもらえるか
- 入管の手続を誰が代理するのか(その弁護士が自ら行うのか、別の専門家に依頼するのか)
- 費用の内訳と、追加費用が生じる条件(外国人の刑事事件で弁護士費用を確認するときの観点を参照)
- 通訳を介して、本人が理解できる説明を受けられるか
- 結果を約束する説明をしていないか(弁護士職務基本規程29条2項)
当事務所は、オーバーステイが関係する刑事事件にどう対応するのか?
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、起訴前の弁護活動から、出国命令や在留特別許可の検討まで、続けて対応する。
最初の接見で、入管法上のリスクを本人に正確に理解してもらうことを重視している。取調べについては、弁護人の立会いを要求する方針であり、現状ほとんど認められないが、取調べの直前に警察官と協議することがある。中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からのご相談を受けている。微信ID:matsumura1119 からも連絡できる。オーバーステイの特集、刑事事件と入管手続を一人の弁護士に任せる場合も参照してほしい。
よくある質問
在留期間が切れていることに気づきました。自分から出頭すべきですか?
一概にはいえない。出国命令の要件(入管法24条の3)に当たるかは、出頭の時期、他の刑事事件の有無、過去の退去強制歴などによって異なり、出頭後の見通しも事案によって違う。出頭する前に、弁護士に相談してほしい。
オーバーステイで逮捕されると、そのまま収容されるのですか?
刑事手続と入管手続の関係は事案によって異なる。入管では、主任審査官が収容か監理措置かを審査し(入管法39条2項、44条の2)、刑事手続が行われている間は、収容や監理措置に付さないままでも退去強制の手続を進められる(63条1項)。
罰金や執行猶予になれば、日本に残れますか?
刑事処分と退去強制は別の手続であり、罰金や執行猶予となっても、在留期間を経過して残留している事実があれば退去強制事由に当たる(入管法24条4号ロ)。日本に残るには在留特別許可が必要であり(50条)、許可されるかどうかは個別の事情による。残れると断定することはできない。
出国命令と退去強制では、何が違いますか?
退去強制は退去強制令書により送還される手続であり、出国命令は、退去強制の手続によらず、定められた出国期限(15日を超えない範囲)までに出国する制度で、入管法24条の3の要件がある。上陸拒否期間は、出国命令では原則1年、退去強制では5年又は10年である。
関連ページ
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639