薬物事件で外国人が逮捕されたとき|弁護士の選び方と相談先を確認する観点
2026/10/04
薬物事件で外国人が逮捕されたときは、有罪判決を受けると執行猶予が付いても退去強制事由に当たる(入管法24条4号チ)ため、起訴される前の段階から、刑事弁護と入管法の両面を見通して動ける弁護人を選ぶ必要がある。
- 薬物関係の罪で有罪判決を受けると、罰金や執行猶予付きの拘禁刑でも、在留資格の種類にかかわらず退去強制事由に当たる
- 不起訴や無罪であれば、この事由には当たらないため、起訴前の弁護活動が在留の帰趨を左右する
- 有罪となった場合も、退去強制の手続の中で在留特別許可を求める余地があるが、許可されるとは限らない
- 弁護人は、接見の時期、通訳、刑事と入管の両面の説明といった点を、依頼する側が確認して選ぶことができる
薬物事件で逮捕された外国人にとって、最大の問題は何か?
最大の問題は、薬物関係の罪で有罪の判決を受けること自体が退去強制事由になる点である。
入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法(国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律)又は刑法第2編第14章(あへん煙に関する罪)の規定に違反して有罪の判決を受けた者を、退去強制の対象としている。条文は、刑の種類や執行猶予の有無を区別していない。罰金でも、執行猶予付きの拘禁刑でも、有罪の判決である限り該当する。
この規定は、技能実習や留学などの別表第一の在留資格の方にも、永住者や日本人の配偶者等の別表第二の方にも適用される。窃盗や傷害などを対象とする24条4号の2が別表第一の在留資格の方に限られ、拘禁刑を要件としているのとは、構造が異なる。特別永住者の退去強制は、入管特例法22条が別に定めている。
逮捕から起訴までに、どのような流れを想定すべきか?
通常、逮捕から起訴・不起訴の判断までは最長で23日ほどであり、薬物事件では別の事実で改めて逮捕されると、身体拘束がさらに続くことがある。
警察は逮捕後48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は受け取ってから24時間以内に勾留を請求する。裁判官が勾留を認めると、原則として10日、延長されると通じて最長20日の勾留となる(刑事訴訟法203条・205条・208条)。この間に起訴か不起訴かが決まる。薬物事件では、使用、所持、譲渡など複数の事実が問題になることがあり、捜査の進み方によっては、別の事実で改めて逮捕・勾留される場合がある。見通しは、罪名と事実関係によって異なる。
起訴前に、弁護人は何を確認し、何をするのか?
起訴前の弁護人は、嫌疑の内容、押収物や尿の検査・鑑定の経過、手続の適法性、故意の有無を確認し、不起訴を目指せる事情があるかを検討する。
薬物事件では、押収された物が実際に規制薬物か、鑑定がどのように行われたか、採尿や捜索が適法な手続で行われたか、本人が薬物であると認識していたかが争点になることがある。いずれも資料と本人の話を突き合わせなければ判断できず、取調べの前の助言に意味がある。供述調書は日本語で作られるため、内容が違えば訂正を求め、納得できなければ署名押印を拒むことができる(刑事訴訟法198条4項・5項)。
当事務所は、取調べへの弁護人の立会いを積極的に求める方針である。立会いは現状ほとんど認められないが、取調べの前に警察官と協議することはある。不起訴には、嫌疑がないとき、嫌疑が十分でないとき、犯人の性格や犯罪後の情況などから訴追を必要としないとき(起訴猶予。刑事訴訟法248条)がある。どれになるかは、事案による。
有罪になった場合、執行猶予や再度の執行猶予で在留は守れるのか?
執行猶予が付いても、有罪の判決である以上、24条4号チには該当するため、執行猶予だけで在留が守られるとは限らない。
再度の執行猶予(刑法25条2項)は、前に拘禁刑の全部の執行猶予を受けた者が2年以下の拘禁刑の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときに認められ、保護観察が付される(同法25条の2第1項)。実刑を避ける意味はあるが、有罪判決であることは変わらず、退去強制事由の該当性には影響しない。
| 刑事手続の結果 | 24条4号チ(薬物関係) | 備考 |
|---|---|---|
| 不起訴・無罪 | 該当しない(有罪の判決を受けていない) | 更新・変更の審査では、事案の内容が考慮される可能性がある |
| 罰金 | 該当する | 刑の軽重を問わない |
| 執行猶予付き拘禁刑(再度の執行猶予を含む) | 該当する | 4号リは全部の執行猶予を除くが、4号チは除いていない |
| 実刑 | 該当する | 1年を超える拘禁刑は、4号リにも当たり得る |
退去強制事由に当たる場合、在留特別許可はどう検討されるのか?
退去強制の手続の中で、法務大臣が在留特別許可を与えるかどうかが判断され、考慮事情は入管法50条5項に定められている。
在留特別許可は、退去強制対象者であっても、法務大臣が特別に在留を許可する制度である(入管法50条1項)。判断にあたっては、在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などが考慮される(同条5項)。永住許可を受けているときは、許可の事由の一つとして条文に挙げられている(同条1項1号)。なお、無期又は1年を超える拘禁刑(全部の執行猶予などを除く)に処せられた者には、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情を求める但書がある。
許可の見込みは、薬物の種類や量、前科、家族関係、在日期間などによって異なり、一律には言えない。制度の詳細は在留特別許可とは、退去強制とはで説明している。
弁護士を選ぶとき、依頼する側は何を確認できるのか?
次の点は、依頼を考える側が、相談の場で確認することができる。
- 薬物事件の刑事手続と、入管法上の退去強制・在留特別許可の両方について、見通しを説明できるか
- 最初の接見がいつ可能か、通訳をどう手配するか
- 在留資格の種類、在留期限、在留カードの内容を、最初に確認しているか
- 起訴前、起訴後(保釈・公判)、判決後の入管手続まで、どのように関与するか
- 取調べへの対応方針(立会いの要求、事前の助言)をどう考えているか
- 見通しについて、可能性と限界を分けて説明しているか
- 家族への連絡の方法と、報告の頻度
質問に対し、条文や手続に沿った具体的な説明が得られるかどうかが、一つの目安になる。
当事務所は、薬物事件の外国人の相談にどう対応するのか?
松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当し、最初の接見で、在留資格を失うリスクを本人に正確に理解してもらうことを重視している。
中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からの相談を受けている。取調べへの立会いの要求は、先に述べた方針で行う。連絡は微信ID matsumura1119でも受け付けている。ご相談の際は、逮捕された警察署と日時、罪名(わかる範囲)、本人の氏名・国籍、在留資格の種類と在留期限(在留カードの写し)がわかると、話が早く進む。
薬物事件の解説は薬物事件のページに、これまでの解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめている。
よくある質問
薬物事件で執行猶予が付けば、日本に残れますか?
執行猶予が付いても、薬物関係の罪で有罪の判決を受けた事実は、入管法24条4号チの退去強制事由に当たる。もっとも、退去強制の手続の中で在留特別許可を求める余地はあるが、許可されるとは限らない。そのため、起訴される前に不起訴を目指せる事情がないかを検討することが重要になる。
不起訴になった場合、在留資格に影響はありませんか?
不起訴は有罪の判決ではないため、24条4号チの退去強制事由には当たらない。ただし、在留期間の更新などの審査では、事案の内容が考慮される可能性がある。個別の事情によって異なるため、在留資格の種類と期限を弁護人に伝えて確認してほしい。
大麻を少量持っていただけでも、退去強制になりますか?
大麻草の栽培の規制に関する法律の規定に違反して有罪の判決を受けると、量にかかわらず24条4号チに該当する。量や態様は、起訴するかどうか、どのような刑になるかの判断で考慮される。起訴猶予となれば、有罪の判決を受けないため、この事由には当たらない。
永住者や日本人の配偶者がいる場合でも、薬物事件で有罪になると退去強制の対象になりますか?
24条4号チは、別表第二の在留資格(永住者・日本人の配偶者等など)の方にも適用される。ただし、退去強制の手続の中で、家族関係や在日期間などを考慮した在留特別許可が検討される。特別永住者は、入管特例法22条が退去強制の事由を別に定めている。
関連ページ
本記事は一般的な解説であり、個別の事案には当てはまらないことがある。条文は2026年10月4日時点の内容を確認している。個別の事案については、弁護士に直接ご相談いただきたい。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119