出国命令とは|5つの要件と上陸拒否期間1年・退去強制との違いを弁護士が解説
2026/09/10
出国命令とは、在留期間を経過して残留した外国人が、違反調査が始まる前に速やかに出国する意思をもって自ら出頭した場合、または違反調査が始まった後でも退去強制手続の一定の段階までに出国の意思を表明した場合に、収容することなく、15日を超えない範囲で期限を定めて日本からの出国を命ずる手続をいう。(入管法24条の3、55条の85)
- 対象は在留期間を経過して残留した者(不法残留)などに限られ、不法入国・不法上陸は含まれない
- 自ら出頭したこと、または違反調査が始まった後の早い段階で出国の意思を表明したことが要件となる
- 身柄を収容されずに手続が進む
- 上陸拒否期間は1年で、退去強制より短い
- 要件を1つでも欠くと退去強制の手続になる
出国命令にはどのような要件があるのか
入管法24条の3が定める要件をすべて満たす必要がある。要件は次のとおりである。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 出頭または出国の意思の表明 | 違反調査が始まる前に、速やかに出国する意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭したこと(24条の3第1号イ)。または、違反調査が始まった後でも、47条3項の通知(退去強制事由該当の認定の通知)を受ける前に、入国審査官または入国警備官に対して速やかに出国する意思を表明したこと(同号ロ) |
| 不法残留であること | 24条2号の4、4号ロまたは6号から7号までに当たる不法残留者であり、同条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号または9号のいずれにも該当しないこと |
| 一定の前科がないこと | 入国した後に、窃盗罪その他の一定の罪により拘禁刑に処せられていないこと |
| 退去強制歴等がないこと | 過去に退去強制されたことがなく、出国命令により出国したこともないこと |
| 出国の見込み | 速やかに日本から出国することが確実と見込まれること |
2番目の要件により、不法残留以外の退去強制事由に該当する場合は対象から外れる。不法入国や不法上陸の場合、そもそも在留期間を経過した者に当たらないため、出国命令を利用することはできない。
出国命令と退去強制はどう違うのか
身柄の扱いと、その後の上陸拒否期間が大きく異なる。
| 項目 | 出国命令 | 退去強制 |
|---|---|---|
| 対象 | 自ら出頭し、または早期に出国の意思を表明した不法残留者 | 入管法24条の退去強制事由に該当する者 |
| 身柄 | 収容されない | 収容令書による収容または監理措置 |
| 手続 | 簡易な手続で終了する | 違反審査、口頭審理、裁決を経る |
| 出国の時期 | 指定された期限までに自ら出国する | 令書に基づき送還される |
| 上陸拒否期間 | 1年 | 原則5年、過去にも退去強制歴があれば10年 |
手続はどのように進むのか
出頭の申出、違反調査、入国審査官の審査を経て、主任審査官が出国命令を発する流れとなる。出頭の際には旅券や在留カードのほか、出国の準備を示す資料の提出を求められる。要件を満たすと判断されれば、出国すべき期限が指定される。この期限は15日を超えない範囲で定められ(55条の85第1項)、その間に自ら出国することになる。命令に付された住居・行動範囲などの条件に違反した場合には、主任審査官が出国命令を取り消すことがある(55条の88)。取り消された者と、期限を過ぎて残留した者は、いずれも退去強制事由に該当し(24条8号・9号)、退去強制の手続に移る。期限を過ぎて残留した場合や取消し後に残留した場合は、刑事罰の対象にもなる(70条1項8号の2・8号の3)。
薬物事件を起こした場合でも利用できるのか
利用できない。入管法24条の3の要件には、24条4号ハからヨまでのいずれにも該当しないことが含まれており、薬物関係の退去強制事由である4号チに該当する者はここから外れるからである。薬物関係の退去強制事由は有罪の判決があれば足り、罰金でも、執行猶予でも、刑が免除された場合でも該当する。さらに、薬物に関する法令に違反した者は、入管法5条1項5号により年限の定めのない上陸拒否の対象となり、再び入国するには入管法12条1項の上陸特別許可を得るほかない。
自分から出頭した方がよいのか
要件を満たす見込みがあるかを事前に確認したうえで判断するべきである。出頭すれば必ず出国命令になるわけではなく、要件を欠くと判断されれば退去強制の手続に移り、収容される可能性もある。他方で、摘発によって違反調査が始まった後でも、47条3項の通知を受ける前に出国の意思を表明すれば対象となり得るが(24条の3第1号ロ)、この経路で出国した者が短期滞在で再来日しようとする場合の上陸拒否期間は1年ではなく5年となる(5条1項9号ヘ)。出国を決めているのであれば、違反調査が始まる前に自ら出頭することの意味は小さくない。逆に、日本での在留を続けたい事情がある場合には、在留特別許可を求める道を検討することになるが、出国命令を選べばその可能性は失われる。選択は戻せないため、出頭の前に相談されることをお勧めする。
出国命令で出国した後、再び来日できるのか
上陸拒否期間は、違反調査前に自ら出頭した者については1年であり(5条1項9号ホ)、これを経過すれば上陸を拒否される事由には当たらなくなる。ただし、その事由に当たらないことと、査証が発給され上陸が許可されることは別の問題である。過去に在留期間を経過して残留した事実は記録に残り、その後の査証の審査や在留資格の認定の場面で考慮される。短期の滞在であっても、来日の目的、日本での身元を引き受ける者、帰国することの確実性を裏づける資料が求められることが多い。就労の在留資格や日本人の配偶者等の在留資格を求める場合は、過去の経緯について説明する書面を添えるなど、より丁寧な準備が必要になる。
よくある質問
出頭すれば必ず出国命令になりますか
そうとは限りません。出頭はあくまで要件の1つであり、不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと、一定の前科がないこと、過去に退去強制されたことがないことなどが併せて審査されます。要件を欠くと判断されれば退去強制の手続に移りますので、事前の確認が重要です。
出国命令を受けた後、出国するまで働けますか
働くことはできません。在留期間を経過した状態が続いていることに変わりはなく、就労が認められる地位にはありません。この間に就労すると、出国命令の取消しにつながるほか、別の問題が生じるおそれがあります。生活費の見通しも含めて、出頭の前に準備してください。
指定された出国の期限は延ばせますか
出国の期限は15日を超えない範囲で指定され、原則としてその期限までに出国することになります。船舶や航空機の運航の都合その他ご本人の責めに帰することができない事由があると認められるときに限り、主任審査官が期限を延長することができます(55条の87)。事情を示す資料を添えて、期限が迫る前に担当の官署に申し出てください。
上陸拒否期間は退去強制とどれくらい違いますか
出国命令により出国した場合は原則1年(違反調査が始まった後に出国の意思を表明して出国した方が短期滞在で来日する場合は5年)、退去強制された場合は原則5年で、過去にも退去強制されたことがある場合は10年とされています。この差は再び来日できる時期に直結します。もっとも薬物に関する法令の違反は別扱いで、年限の定めのない上陸拒否の対象となります。
日本に家族がいる場合も出国命令を選ぶべきですか
出国命令は日本を離れることを前提とする手続ですので、在留を続けたい事情がある場合は、まず在留特別許可を求める余地があるかを検討します。婚姻や子の養育の実態、在留の期間、素行などが判断の材料になります。判断は戻せませんので、選択の前にご相談ください。
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最終更新日:2026年9月19日/執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119
中文版:出国命令是什么|逾期滞留者的适用要件、上陆拒否期间与退去强制的区别(日本律师解说)
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