外国人の刑事事件で弁護士費用を確認するときの観点|着手金・報酬金・実費・通訳費用の見方
2026/10/04
外国人の刑事事件で弁護士費用を確認するときは、金額の大小だけでなく、着手金・報酬金・実費・日当・通訳費用がそれぞれ何を指し、どの場合に追加の費用が生じるのかを、委任契約を結ぶ前に書面で確かめておくことが大切である。(弁護士職務基本規程29条1項・30条1項)
- 費用は、弁護士に支払う報酬(着手金・報酬金・日当)と、事件の処理に実際にかかる実費に分かれる
- 弁護人と本人の接見には通訳が必要になることがあり、その手配と費用の扱いを先に確かめる
- 在留手続を別に依頼する場合は、刑事弁護の契約に含まれるのか、別の契約になるのかを確認する
- 追加費用が生じる条件(起訴後の公判、保釈の請求、控訴など)が契約書に書かれているかを見る
- 弁護士は、受任に当たって事件の見通し、処理の方法、報酬と費用を説明する義務を負う
外国人の刑事事件では、弁護士費用のどの項目を確認すればよいのか?
基本となるのは、着手金・報酬金・実費・日当の4項目であり、外国人の事件ではこれに通訳費用と翻訳費用を加えて確認する。
名称や区分は事務所ごとに異なり、同じ「着手金」でも含まれる活動の範囲が違うことがある。次の表の観点で、契約書の記載を読むとよい。
| 項目 | 一般的な考え方 | 契約書で確認すること |
|---|---|---|
| 着手金 | 事件を受任して活動を始めるときに支払う費用 | どの段階の活動(逮捕前の相談、接見、勾留への対応、起訴後の公判など)までを含むか |
| 報酬金 | 事件が終わったときに、結果に応じて支払う費用 | どの結果(不起訴、罰金、執行猶予、無罪など)に、どの区分の報酬金が定められているか |
| 実費 | 交通費、通信費、記録の謄写費用など、実際にかかった費用 | 対象の範囲、精算の時期、事前の見込みの説明があるか |
| 日当 | 接見や裁判所への出向きなど、時間を要する活動に対して定める費用 | 1回ごとか事件全体を通じてか、遠方の警察署の場合の扱い |
| 通訳・翻訳費用 | 通訳人の同席や書類の翻訳に要する費用 | 誰が手配するか、実費として別に請求されるか |
着手金と報酬金は、事件のどの段階に対応しているのか?
着手金は活動の範囲、報酬金は結果との対応を確認する。刑事事件は起訴の前か後かで活動の内容が大きく変わるため、契約がどの段階までを対象にしているかを確かめる。
起訴される前は、接見、取調べへの助言、被害者との示談、検察官への意見提出が中心になる。起訴された後は、保釈の請求(刑事訴訟法88条)や公判の準備、判決後の控訴(同法373条)が加わる。着手金が起訴前の活動だけを対象とし、起訴後は別の契約になる場合もあるため、事件が進んだときに何が必要になるかを、あらかじめ尋ねておく。
報酬金は、不起訴(嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予。同法248条)や罰金・執行猶予・無罪など、結果の種類に応じて定められるのが一般的である。どの結果が対象で、結果が得られなかったときの扱いはどうなるのかを、契約書の文言で確認する。弁護士は依頼者に有利な結果を保証してはならないとされており(弁護士職務基本規程29条2項)、結果を約束する説明には注意が必要である。
通訳費用や翻訳費用は、誰が負担するのか?
取調べで使う通訳人は捜査機関が手配するが、弁護人と本人の打合せや書類の翻訳をどう手配し、費用をどう扱うかは、弁護契約の内容による。
警察は、日本語に通じない外国人の取調べを、通訳人を介して行うものとされている(犯罪捜査規範233条1項)。一方、弁護人の接見には立会人がつかないため(刑事訴訟法39条1項)、通訳が必要な場合は弁護人の側で用意することになる。弁護人が本人の言語を話せるのか、通訳人を同席させるのか、その費用は実費なのか報酬に含まれるのかを確認する。当事務所は中国語の専属通訳が常駐している。中国語以外の言語のときは、通訳の確保の方法と費用の扱いを、相談の際に確認してほしい。通訳の確認点は通訳人の確認に関する記事でも述べている。
在留手続を別に依頼するとき、費用の扱いはどうなるのか?
刑事弁護と、在留資格や退去強制に関する手続は別の手続であり、費用が一つの契約に含まれるのか、別の契約になるのかを、依頼する前に確認する。
刑事事件の結果は在留に影響するが、在留期間の更新・変更の申請や、退去強制の手続の中での在留特別許可の申請は、入管庁や法務大臣に対する手続である。刑事弁護人が入管の手続も代理するのか、別の専門家に依頼するのかで、窓口や契約の数が変わる。この点は刑事事件と入管手続を一人の弁護士に任せる場合で整理している。当事務所では、松村大介弁護士が刑事事件と入管事件の両方を担当している。
追加の費用は、どのような場合に発生するのか?
追加費用が生じる条件は、事件の段階が進む場合と、活動の量が増える場合に分けて確認するとよい。
- 起訴された場合の公判の弁護、保釈の請求、控訴や上告を、どの契約で扱うか
- 勾留が延長されたとき(刑事訴訟法208条2項)や、接見の回数が増えたときに、日当や実費がどう変わるか
- 遠方の警察署や拘置所への出張、通訳人の追加が必要になったときの扱い
- 被害者との示談交渉が長引いたときの扱い
保釈が許されるときは、裁判所が定める保釈保証金(同法93条)を納付する必要がある。これは弁護士費用とは別のものであり、費用の説明を受けるときに混同しないようにする。
委任契約書では、何を確認すればよいのか?
弁護士は、受任に当たって事件の見通し、処理の方法、弁護士報酬と費用を説明しなければならず(弁護士職務基本規程29条1項)、原則として報酬を含む委任契約書を作成する(同規程30条1項)。契約書では、次の点を読む。
- 受任する範囲(どの段階の活動までか)
- 費用の項目、算定の方法、支払の時期
- 結果に応じた報酬金の区分
- 実費・日当・通訳費用の扱いと、精算の方法
- 追加費用が生じる条件
- 途中で契約を終了するときの精算
契約書の内容が分かりにくいときは、通訳を介して説明を受け、納得してから署名する。弁護人を変更したい場合は弁護士を変更するときの確認点を参照してほしい。
費用の面で不安があるとき、確認できる制度はあるのか?
勾留状が発せられた被疑者は、貧困その他の事由により弁護人を選任できないときに、国選弁護人の選任を請求できる場合がある(刑事訴訟法37条の2)。
請求には資力申告書の提出が必要であり、資力が基準額以上の被疑者は、あらかじめ弁護士会に弁護人の選任の申出をしておく必要がある(同法37条の3)。国選弁護人は勾留を請求された後が対象であり、逮捕の直後や逮捕前の段階は対象とならない。
当事務所に相談するときは、費用についてどう尋ねればよいのか?
本人の状況に加えて、費用についての疑問も遠慮なく質問してほしい。上に挙げた観点が、そのまま質問事項になる。
中国語での相談に対応しており、専属の通訳が常駐している。全国からのご相談を受けている。微信ID:matsumura1119 からも連絡できる。解決事例は外国人・中国人の刑事事件 解決事例の罪名別一覧にまとめている。
よくある質問
着手金と報酬金は、何が違うのですか?
着手金は事件を受任して活動を始めるときに支払う費用、報酬金は事件の終了時に結果に応じて支払う費用として定められるのが一般的である。どの活動や結果が対象になるかは契約ごとに異なるため、契約書の記載で確認してほしい。
逮捕された家族のために急いで依頼するとき、契約の前に最低限確認することは何ですか?
受任の範囲、費用の項目と支払の時期、追加費用が生じる条件、通訳の手配の4点である。急ぐ事情があっても、弁護士には費用の説明義務があり(弁護士職務基本規程29条1項)、委任契約書も作成されるため(同規程30条1項)、説明を受けてから決められる。
通訳が必要な場合、弁護士費用とは別に通訳費用がかかりますか?
契約による。弁護士自身が本人の言語を話せる場合、事務所の通訳が対応する場合、外部の通訳人を手配する場合で、費用の扱いが異なる。通訳を誰が手配し、費用がどう扱われるかを、依頼の前に確認してほしい。
刑事事件の弁護士に、在留の手続も頼めますか?
刑事弁護とは別の手続として、費用や契約が分けられることがある。入管の手続も同じ弁護士が担当するのか、別の専門家に頼むのかを、依頼の前に確認してほしい。
国選弁護人から、私選弁護人に変えることはできますか?
被疑者は、いつでも私選の弁護人を選任できる(刑事訴訟法30条1項)。私選弁護人が選任されたときは、国選弁護人が解任されることがある(同法38条の3第1項1号)。変更の手順は個別の事情によるため、弁護士に相談してほしい。
関連ページ
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではありません。
最終更新 2026年10月4日 / 執筆 弁護士 松村大介(第一東京弁護士会・登録番号59077)
舟渡国際法律事務所 https://matsumura-lawoffice.jp/ 微信ID:matsumura1119 電話:050-7587-4639