罰金で済めば退去強制にならないのか|在留資格別に見る罰金と退去強制事由を弁護士が解説
2026/10/11
「罰金で済めば退去強制にならない」と言えるのは、別表第一の在留資格の人が入管法24条4号の2に挙げられた罪に問われた場合など一部に限られ、薬物事件や不法就労助長、売春関係、オーバーステイなどでは、罰金で終わっても、あるいは刑罰とは関係なく、退去強制事由に当たります。
実際、入管庁の公表事例には、罰金だけで退去強制の手続に入り、在留特別許可を求めた事例が18件あります。どの在留資格の人が、どのような事件で罰金を受けたのかによって、答えはまったく変わります。
本記事の要点
- 別表第一の在留資格の人が4号の2の対象となる罪で罰金のみを受けた場合、同号の退去強制事由には当たりません。
- 薬物関係の法令違反は、罰金でも在留資格を問わず4号チに当たります。
- 不法就労助長や売春に関係する業務、オーバーステイは、行為や事実そのものが退去強制事由となるため、罰金で終わっても問題は残ります。
- 公表事例のうち罰金のみの18件で許可されたのは5件で、いずれも配偶者が日本人・永住者・定住者でした。
罰金だけなら、退去強制事由には当たらないのですか。
どの退去強制事由が問題になるかによります。刑罰の種類を要件とする事由なら罰金は当たりませんが、有罪判決そのものや行為を要件とする事由なら、罰金でも当たります。
| 退去強制事由 | 要件の中心 | 罰金のみの場合 |
|---|---|---|
| 入管法24条4号の2 | 別表第一の在留資格の人が一定の罪で拘禁刑に処せられた | 当たらない |
| 入管法24条4号リ | 無期又は1年を超える拘禁刑(全部執行猶予を除く) | 当たらない |
| 入管法24条4号チ | 薬物関係の法令違反で有罪の判決を受けた | 当たる |
| 入管法24条3号の4 | 事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせるなどの行為 | 刑罰の有無を問わない |
| 入管法24条4号ヌ | 売春に直接に関係がある業務に従事する者 | 刑罰の有無を問わない |
| 不法残留・不法入国 | 在留期間の経過や入国の態様そのもの | 刑罰の有無を問わない |
つまり、罰金で退去強制を免れるのは、刑罰の種類が要件になっている4号の2や4号リだけが問題になる場合です。
別表第一の在留資格の人が罰金を受けた場合はどうなりますか。
4号の2の対象となる窃盗・詐欺・傷害などの事件であれば、罰金のみで終われば同号には当たりません。ただし、事件の内容が在留資格の範囲を超える活動や不法就労に関わる場合は別です。
公表事例では、平成27年分(2015年)・その他の場合・不許可第4事例が参考になります。「人文知識・国際業務」で在留していた人が、配偶者の経営する飲食店の従業員として働き、入管法違反(資格外活動)により罰金30万円の略式命令を受けた事案で、退去強制の手続に入り、在留特別許可は認められませんでした。罰金で済んだことが、退去強制を免れることを意味しなかった例です。
また、罰金は在留期間の更新でも不利に考慮されるおそれがあり、本人が将来永住許可を目指す場合にも、ガイドラインの「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。」との関係が問題になります。
永住者・定住者・日本人の配偶者等など、別表第二の人はどうですか。
別表第二の人には4号の2が適用されないため、罰金どころか執行猶予付きの拘禁刑でも同号は問題になりません。それでも、薬物事件と、行為そのものが退去強制事由となる事件では罰金でも問題が残ります。
令和5年分(2023年)・配偶者が日本人の場合・不許可第5事例は、本人が「日本人の配偶者等」で在留し、入管法違反(不法就労助長)により罰金30万円の略式命令を受けた事案です。婚姻・同居の実態が認められなかったことも重なり、在留特別許可は認められませんでした。別表第二の在留資格であっても、不法就労助長は行為自体が退去強制事由になるため、罰金で終わったことは防波堤になりません。
薬物事件は、罰金でも退去強制事由になりますか。
なります。入管法24条4号チは、覚醒剤取締法など薬物関係の法律に違反して「有罪の判決を受けた者」を対象とし、刑の種類も在留資格も限定していません。
「又は刑法第二編第十四章の規定に違反して有罪の判決を受けた者」(入管法24条4号チ。薬物関係の法律の列挙に続く部分)
永住者であっても例外ではありません。令和5年分・配偶者が日本人の場合・許可第4事例は、本人が「永住者」で、覚醒剤取締法違反により懲役3年、執行猶予5年(当時の刑名。現行法の拘禁刑に相当)の判決を受け、退去強制の手続に入った事案です(結論は許可)。薬物事件と在留の関係は薬物事件と在留特別許可で詳しく取り上げています。
公表事例では、罰金のみの人はどうなっていますか。
当事務所が平成26年分から令和7年分までの公表事例のうち刑事処分のある153件を整理したところ、刑事処分が罰金のみの事例は18件で、許可は5件、不許可は13件でした。罪名は、いずれも不法就労助長・資格外活動か、売春・風俗営業に関するものです。
| 類型 | 許可 | 不許可 |
|---|---|---|
| 配偶者が日本人の場合 | 3件 | 4件 |
| 配偶者が正規在留外国人の場合 | 2件(配偶者は定住者・永住者) | 1件(配偶者は永住者の配偶者等) |
| その他(配偶者による類型に当たらないもの) | 0件 | 8件 |
許可された5件は、すべて配偶者が日本人・永住者・定住者でした。配偶者が日本人で不許可とされた4件には、婚姻や同居の実態への疑義、被退去強制歴、別居といった事情が付されています。また、令和6年分(2024年・6月9日まで)・配偶者が正規在留外国人の場合では、同じ不法就労助長の略式命令でも、配偶者が「永住者」で婚姻約29年9月の許可第2事例と、配偶者が「永住者の配偶者等」で婚姻約2年5月の不許可第2事例とで結論が分かれました。罰金で退去強制の手続に入った場合も、配偶者の在留資格と婚姻の実体が帰趨を左右しています。
罰金が見込まれる事件では、何に気をつければよいですか。
まず、自分の在留資格と事件の内容から、どの退去強制事由が問題になるかを正確に確かめることです。そのうえで、不起訴の可能性を最後まで追い、略式命令に応じるかどうかも在留への影響を踏まえて判断します。
- 4号の2だけが問題になる事件なら、拘禁刑を避けて罰金以下にとどめることが最大の目標になる
- 薬物事件や不法就労助長などでは、罰金でも退去強制の手続が予想されるため、配偶者の在留上の地位と婚姻の実体の記録を早めに整える
- 将来の永住許可や帰化を考えるなら、罰金も不利な事情になることを踏まえ、不起訴を目指す
不起訴と罰金の違いは不起訴・罰金を目指す意味、略式手続については略式命令(罰金)に応じる前に考えることで取り上げています。当事務所には、刑事事件の段階から家族の在留の状況を整え、在留特別許可を得た実績があります。もっとも、結論は個別の事情によって異なり、お約束できるものではありません。
よくある質問
Q1. 道路交通法違反で罰金になった場合、退去強制になりますか。
入管法24条4号の2が挙げる法律に道路交通法は含まれておらず、罰金のみであれば4号リにも当たりません。ただし、刑罰法令違反は在留特別許可のガイドラインで消極要素とされ(第2の3)、永住許可でも「罰金刑や拘禁刑などを受けていないこと。」との関係が問題になります。
Q2. 資格外活動で罰金を受けると、退去強制になりますか。
公表事例には、資格外活動により罰金30万円の略式命令を受け、退去強制の手続に入って在留特別許可が認められなかった事例があります(平成27年分・その他の場合・不許可第4事例)。罰金で済むかどうかだけでなく、活動の内容自体が問題になる点に注意が必要です。
Q3. 永住者なら、罰金で心配することはありませんか。
永住者には4号の2が適用されませんが、薬物事件は罰金でも4号チに当たり、不法就労助長などは行為自体が退去強制事由です。永住者だから罰金なら安心、とは言い切れません。
Q4. 罰金で終わった後、在留期間の更新に影響はありますか。
在留期間の更新は、法務大臣が「相当の理由」を認めたときに限り許可されます(入管法21条3項)。罰金を受けた事実が考慮される可能性はあり、影響がないとは言い切れません。更新の申請では事実を偽らず、生活の実態を資料で示すことが大切です。
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本記事は一般的な解説であり、個別の事案の結論を保証するものではありません。具体的な見通しは、事情を伺ったうえでご説明します。
最終更新日:2026年10月11日
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